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BLACKPINKジスやBTS ジミンらが来場 ジョナサン・アンダーソンによるディオール初のウィメンズコレクションを徹底考察

BLACKPINKジスやBTS ジミンらが来場 ジョナサン・アンダーソンによるディオール初のウィメンズコレクションを徹底考察

ジョナサン・アンダーソンによる新たなディオールのルックをまとった主人公たちは、筋書き以上のものを物語っている

ディオール、ジョナサン・アンダーソン、2026SS
Dior

リボン付きヒールサンダルからそびえ立つハットまで、このデザイナーのデビューとなるウィメンズウェアのショーは、美というものとメゾンの歴史に真剣に向き合っている。

ジョナサン・アンダーソンは、ディオールでの初のウィメンズコレクションとなる2026年春夏コレクションを発表する前に、過去に立ち返るようゲストに呼びかけた。バイロン卿の1814年の詩「She Walks in Beauty」の朗読とともに、このクリエイティブ・ディレクターは、さまざまなデザイナーの時代で彩られた、数十年にわたるディオールのウィメンズコレクションにまつわるモンタージュ映像を上映した。

マリア・グラツィア・キウリ、ラフ・シモンズ、ジョン・ガリアーノといった先人たちのランウェイが取り上げられ、「レディ・ディオール」バッグの名前の由来となったダイアナ元妃のようなポップカルチャーのアイコンも登場した。

この映像は、ディオールのあらゆる章をひとつの旗印の下にまとめ上げるアンダーソン流のやり方だった。それはバイロン卿の言葉を借りれば、「柔らかく、穏やかで、雄弁な」美であり、誰が指揮を執っているかは関係ないものである。詩と映像は、ショーの観客(そしてライブストリームをスマートフォンで観ているファン)に、このフランスのラグジュアリーブランドが創業時に掲げた理念を思い出させる舞台となった。

それは、1947年の「ニュールック」のウエストを絞ったジャケットから、2016年の「We Should All Be Feminists」のスローガンTシャツまで、ファッションが呼び起こすファンタジーを犠牲にすることなく、ファッションを通じて女性を解放するという理念だ。

そして照明が明るくなり、最初のモデルが歩み出ると、もう一人の文豪が思い起こされた。

ディオール、ジョナサン・アンダーソン、2026SS、ランウェイ
1947 年に発表されたディオールの「バー」ジャケットは、クロップドシルエットとフリル付きのボウタイブラウスを合わせた、ややオーバーサイズで復活した Photo: Dior

アンダーソンは、ディオールでの初のウィメンズのコレクションを、シェークスピア的なスケールで考えていた。ショーノートでは、74ルックのラインナップを「人生という舞台で登場人物になるための一つの方法としての装い」と位置づけており、これはウィリアム・シェークスピアの喜劇『お気に召すまま』の有名なモノローグを引用したものだ(この戯曲を読んだことがなくても、その冒頭はご存じだろう。「この世は舞台、人は皆、役者」)。

2026年春夏の登場人物たちは、文字通り、そして比喩的に、過去の各時代の“ミス・ディオール”たちに敬意を表している。ピオニーピンクやベビーブルーの色合いのサテンリボン、D-i-o-rとハードウェアでつづられたバッグのストラップ、ウエストを絞ったジャケット、そして大きく広がるケープなどが目を引いた。

ディオール、ジョナサン・アンダーソン、2026SS、ランウェイ
ディオールのもうひとつのモチーフであるリボンが、3着のストラップレスドレスのネックラインから裾へと斜めに配置され、エレガントなドレープのラインが生まれている Photo: Dior

オープニングに登場したドレスは、ストラップレスのネックラインの左端にあしらわれたリボンが特徴だった。ドレープ加工された生地がスカートの周りで曲線を描き、裾の右端のリボンへと斜めにつながっている。

アニャ・テイラー=ジョイ、ジェニファー・ローレンス、ディオール、ジョナサン・アンダーソン
写真右、アニャ・テイラー=ジョイ、左、ジェニファー・ローレンス Photo: Dior

これはムッシュー・クリスチャン・ディオールへのオマージュであり、最前列に座るジェニファー・ローレンスやアニャ・テイラー=ジョイといったレッドカーペットの主役たちにぴったりだった。遠くから見れば、小柄でとびきり可愛らしい、まるでナタリー・ポートマンが香水の広告で着ているようなルックだ。しかし近くで見ると、そのラインとシルエットは驚異的な美しさである。

ディオール、ジョナサン・アンダーソン、ジス、BLACKPINK、JISOO、ブラックピンク、2026春夏
BLACKPINK ジス Photo: Dior

ショーの幕開けを飾ったバイロン卿の作品は、女性の美の繊細さについて、外見はその装いに隠された心をほのめかすものにすぎないと詠んだ詩だ。それゆえに次々と登場するアンダーソンのディオールのルックも、じっくり読み解きたくなるようなものばかりだった。

より日常的な装いのなかには、通りで着ているのを見たら二度見してしまうような、奇抜な要素があった(オープンネックのジャケットと彫刻のようなハットに、リアリティ番組『ラグナ・ビーチ』(2004〜2006)に出てくるようなデニムミニスカートを合わせたスタイルなど)。元祖「ニュールック」の定番である「バー」ジャケットは肋骨あたりまで丈が縮められ、しっかりとしたプリーツミニスカートと組み合わせられていた。

これらを見ると、この女性が朝起きてクローゼットに向かったとき、どんなことを考えていたのか、あるいは、アンダーソン時代の「ブックトート」バッグに、彼女がプリントしてほしいと思うのは何の小説だろうかと、考えてしまうほどだ。美とは、単に美しいということではなく、フィルタリングされていない、ありのままの広い心の表現なのだ。

アンダーソンにとって、ディオールのシグネチャーは、彼のファーストコレクションで熱心に引用しなければならないドレスコードではない。ショーノートによれば、むしろ彼はそれを「大きな夢を見るための招待状、人生という舞台を受け入れ、日常を壮大な幻想の世界へと再構築するようなファッションの力を楽しむこと」だと捉えていた。ギャザーの入った白のトップスに、冒険心あふれる三角帽を合わせたり、バブルヘムの花柄ドレスの背面に驚くようなリボンをあしらったりと、ドラマチックな要素が備わっている。

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そして、主役願望はありつつも、使える予算は控えめなエントリーレベルの顧客にとっては、大ぶりの花をあしらったヒールのあるミュールや、つややかなシュリンク加工の生地で作られたチェーンストラップのバッグが、新しいディオールの世界へと続く夢の入り口となっている。

ジョナサン・アンダーソン、ロエベ、2026SS、ランウェイ
透けるハイネックのブラウスと、フリルでピオニーを表現したミュールに、ロエベ時代のジョナサン・アンダーソンが垣間見えた。(加えて、魅力的なレザーバッグも) Photo: Dior

「女性たちはその直感的な本能で、私が彼女たちをより美しくするだけでなく、より幸せにしたいと夢見ていることを理解していたのだ」というブランド創設者の言葉がプロフィールにつづられたインスタグラムのディオールの公式アカウントでは、今回のコレクションのサテンリボン付きのヒールパンプスや宝石が埋め込まれたバングルが予告されていた。

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この過去へのオマージュこそが、アンダーソンのデビューがなぜそれほどまでに注目を集めたのか、そしてなぜファッション関連のSNSが何週間も前からこのショーに熱狂していたのかを要約している(このコレクションがついにランウェイに登場したとき、『マリ・クレール』編集部のSlackは編集者たちの涙目の絵文字のリアクションであふれかえった)。

全体的に2026年春夏シーズンは、ボッテガ・ヴェネタからグッチに至るまで、各ブランドが新しいデザイナーのストーリーを詰め込みすぎているように感じられ、最終的な製品よりも人物像に重点を置かれていることもあった。(米紙『The New York Times』の「Do Shoppers Care About Who Designs the Collections? 〈誰がコレクションをデザインしているのかを買い物客は気にしているか?〉」という記事は、ファッション業界ではデザイナーの交代が話題になっているものの、ミラノの買い物客のほとんどは、お気に入りのブランドの舞台裏で何が起こっているかを実際には知らないと指摘している)

こうした騒ぎの中で、ディオールの今回のコレクションは、クリエイティブ・ディレクターの交代が、単にブランドのストーリー展開を追求するためだけのものではないことを証明した。それは、このブランドをまとう女性を純粋なヒロインとして再構築するためであり、この場合、真剣になることがいかに重要かをその女性に思い起こさせるものなのだ。

※(  )内編集部注

translation & adaptation: Akiko Eguchi

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配信元: marie claire

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