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医療機関の7割で看護職員が不足…「ナースコールに対応できない」「トイレに連れていけない」患者サービスの低下懸念

医療機関の7割で看護職員が不足…「ナースコールに対応できない」「トイレに連れていけない」患者サービスの低下懸念

日本医療労働組合連合会(日本医労連)は6月3日、都内で会見を開き、実施した「看護職員の入退職に関する実態調査」の結果を公表した。

調査に回答した医療機関の7割以上で看護職員が不足していること、約5割で退職者数が採用者数を上回っていることなどを明らかにした。

人手不足は患者へのサービス低下や医療安全にも深刻な影響を及ぼしており、日本医労連は抜本的な処遇改善が急務であると訴えている。(ライター・榎園哲哉)

数値が厳しい実態を“可視化”

調査は4月1日から5月14日にかけて実施され、日本医労連に加入する34都道府県の134医療機関(平均稼働病床数335.6床、平均看護職員数352.8人)から回答が寄せられた。

「看護職員は現在、不足していますか」との問いには、75.4%にあたる101施設が「不足している」と回答。

2025年の入退職状況を見ると、年間退職者数が採用者数を上回った施設は52.9%(64施設)に上った。この傾向は年々悪化しており、同様の施設は2023年度の48.0%、24年度の50.0%から増加を続けている。

新規採用も厳しい状況が続く。2026年4月の採用では、45.0%(50施設)で、採用予定者数を満たせなかった。

コールに間に合わず転倒、骨折した事例も

看護職員の不足が、患者に対する看護、ケアの質の低下に直接的な影響を与えている。

看護職員不足による影響を複数回答で尋ねたところ、「患者サービスの低下」が83.0%と最も多く、次いで「インシデント・アクシデントの発生」(58.0%)、「病棟・稼働病床の休止・削減」(33%)と続いた。

患者サービスの低下の具体的な内容としては、「患者・家族との関わりの減少」(65.4%)、「ナースコール対応の遅れ」(64.2%)、「入浴・清潔ケアの減少」(55.6%)などが上位を占めた。

自由記述では、「夜勤時にトイレに連れていくことができず、『おむつでベッドでして』と言っている」「同時に(ナース、センサー)コールが鳴ると対応が間に合わない。転倒し、骨折につながった」といった事例や、「夜勤時に人員不足で胃ろう対応ができず、3食から2食に減らし日勤時に対応」といった切実な声も寄せられた。

また、看護職員不足を理由に病棟や稼働病床を削減した施設もあり、削減数は平均31.4床だった。法人単位の回答では、最大で422床を休止・削減したケースも報告された。

会見では、各地の医療現場で働く委員らからも実態が報告された。

全日本国立医療労働組合(全医労)の岩谷香寿美氏は、国立病院の状況について「2人夜勤で約40人の患者を見ている」と説明。「ケアの回数を減らす、たとえば週3回の入浴を2回にしてもらうなど、患者さんに一番影響がくる。私たち(看護師)はそれを望んでいない」と訴えた。

「目で見て、手で触れることが看護の基本」

調査では「看護職員不足を解消するための対策」(自由回答)についても聞いた。

回答では、入院患者数に対する看護師数を定めた「配置基準」の見直しや電子カルテなどのデジタル技術を活用する「医療DX」の推進、業務の一部を他業種に移管する「タスクシフト」を求める声も寄せられた。

日本医労連の松田加寿美書記次長は「配置基準を見直したとしても、実際に働く看護師が確保できなければ、人手不足の解消は難しい」と指摘。

DX推進やタスクシフトについても、「患者さんを自分の目で見て、手で触れることが看護の基本」とした上で、「そうしたことを重々分かっていても、提案せざるを得ない苦しい状況だ」と、第一線で働く看護師の心情をおもんぱかった。

同・佐々木悦子委員長も「最後に患者さんにかかわり、ケアをするのは看護師しかいない」と述べ、手厚い人員配置こそが求められていると強調した。

看護師減少の歯止めには処遇改善が必須

看護職員の人手不足の原因には、診療報酬等の公定価格による低い賃金体系がある。

患者の健康と命を預かる責任の重さ、夜勤・土日勤務もある業務の過酷さにもかかわらず、年収は全産業の平均以下にある。

佐々木委員長は、「看護師免許を持ちながら勤務をしていない『潜在看護師』が70万人以上いる。看護師養成校に入学しても、看護師にならない学生も少なくない。そもそも養成校への入学者数も減っている。処遇を改善しなければ、退職に歯止めがかからず、看護師へのなり手も減るばかりだ」と改めて危機感を示した。

日本医労連は引き続き、「診療報酬・介護報酬・障害福祉サービス等報酬の10%以上の引き上げ」をはじめとする処遇改善を国に求めていく方針だ。

■榎園哲哉
1965年鹿児島県鹿児島市生まれ。私立大学を中退後、中央大学法学部通信教育課程を6年かけ卒業。東京タイムズ社、鹿児島新報社東京支社などでの勤務を経てフリーランスの編集記者・ライターとして独立。防衛ホーム新聞社(自衛隊専門紙発行)などで執筆、武道経験を生かし士道をテーマにした著書刊行も進めている。

配信元: 弁護士JP

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