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中谷美紀さん【インタビュー】ネガティブな体験も、書くことでポジティブに変換できる

中谷美紀さん【インタビュー】ネガティブな体験も、書くことでポジティブに変換できる

ネガティブな体験も、書くことでポジティブに変換できる

日ごとに緑が深まり、初夏の気配が近づく頃。

そんな季節の輝きを、中谷美紀さんはオーストリアの静かな農村で迎えています。
現在の拠点は2年前に移り住んだ、築130年ほどの農家を改装した家。庭には桃やりんご、ブルーベリーの木が点在し、さながら、大草原の小さな家を思わせる、自然豊かな環境です。

「まだまだ手を入れている最中で、予定通りには進みませんが、整うまでの時間も楽しんでいます。最近は日陰にヤマアジサイを植えたので、それがうまく根付いてくれるかな、と見守っているところ。これからの季節は水やりや草刈りも大変ですが、植物と会話しながら、そうした手間も愛おしんでいます」

季節ごとに実る果実や豊かな庭は、代々その地に暮らしてきた人々が育んできたもの。
だからこそ、「自分が所有する」という感覚はあまりないのだそう。

「次の世代に手渡すために、一時的にこの場所を預かっている〝管理人〟という感覚です。庭で採れる果物もすべてを収穫せず、落ちたままに。そうすれば、そのまま肥料になるか、野鳥や鹿の糧にもなるので。
食べるものがない季節はひまわりの種を置いて、鳥たちが去ってしまわないように見守る。これは私たちだけでなく、地域の皆さんも同じようにしているんです。そうして運ばれてきた種がまた芽吹いて、鳥たちの落とし物で土壌が豊かになる。
せっかく植えた球根が掘り起こされたり、大事な木にキツツキが穴を開けていたり……といったこともありますが(笑)。そうした様子を眺めているのが楽しい。ささやかですが、生物多様性に貢献できればと思っています」


とはいえ、自然との共生には、ときに不自由も伴います。

「冷房がないので、夏はとにかく暑くて。水を浴びるくらいしか対処法はないですね(笑)。今、夏の対策としてご近所で流行っているのはビオトープ。庭に泳げるくらいの大きさの池を、重機で掘るんです。そうするとトンボが来てボウフラを食べてくれるので、蚊がわかなくなる。わが家もいつかトライしたいですね」

そうした庭仕事をはじめ、ヨーロッパでのオペラ鑑賞、俳優としての新しい挑戦……といった日々を綴った最新エッセイが、6月に刊行される『大草原の小さな農家』。

中谷さん自身がスマホで撮影した、日常の断片も収められています。

「今の時代に、紙で印刷していただけるのはありがたいこと。とはいえ、田舎暮らしでは毎日同じような出来事ばかりで、わざわざ書くようなことが起こらなくて。
幸田文さんのように日常を美しく書く才能があれば……と願いつつ、毎回、無理やりテーマをひねり出しています。ただ、凄惨なニュースも多い世の中ですから、せめて自分の書くものは、つたないながらも、人に不快感を与えないものにしたいと思っています」


日々の気づきや感情を、言葉にして綴っていくことは、自分の内面と向き合う大切なひとときにもなっています。

「一番の利点は、ネガティブな体験でも、題材にすることで、ポジティブに変換できること。それはありがたいことですし、たとえ表に出なかったとしても、自分自身の心を整理するのに役立ちます。書くことで、自分の人生を俯瞰し、整理できる。そうすると、案外、深く悩まずに済むものなんですよね」

memo

― 日本に来たときに必ず買うものは?
ヒカリのオイスターソースに緒方こうじ屋の味噌、京の九条の葱の油、原了郭の黒七味。昆布も必ず買って帰ります。

― いまのお気に入りレシピは?
人参のローストにハマっています。皮ごと半分に切って、オリーブオイルをかけて焼いて、塩で味付け。ヨーグルトとチリ、ガーリックパウダー、塩こしょう、ディルを混ぜたソースを付けても美味。

― 最近、刺激を受けたインプットは?
モリエールの『病は気から』の舞台。ドイツ語で演劇を観るのは初めて。台詞が分からないかも…と避けてきましたが、意外と大丈夫、と自信がつきました。

MIKI NAKATANI
1976 年、東京都生まれ。1993年に俳優デビュー。2006 年、映画『嫌われ松子の一生』で数々の映画賞を受賞。近年の出演作にドラマ『連続ドラマW ギバーテイカー』『ONE DAY~聖夜のから騒ぎ~』、映画『レジェンド&バタフライ』など。

6月11日(木)発売
『大草原の小さな農家』

中谷美紀
¥825(幻冬舎)

photograph: Akinori Ito[aosora] styling: Masami Tanaka hair & make-up: Eri Shimoda
nail: Michiko Kawamura[NAILHOUSE AKIKO] text: Hanae Kudo

大人のおしゃれ手帖2026年7月号より抜粋
※画像・文章の無断転載はご遠慮ください

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