就職氷河期世代はこれまでの人生においてさまざまな困難を乗り越えてきたわけだが、40〜50代になって改めて向き合う難問が「AI」だ。将来不安から必要以上に貯蓄を追い求めてしまう彼らに、同世代のひろゆき氏がシンプルな指針を示す。
◆AI時代にこそ「経験知を持つおじさん」が最強の存在になれるワケ

その理由はシンプルで、プログラムのコードや、それを書くための仕様書がネット上に無数にあるからです。つまり「こういう機能を作るなら、こういうコードを書く」というQ&Aが簡単に入手できる状態なので、AIはそれを入手して組み合わせて答えを出せるからです。
一方で、「平成元年に北区立北中学校1年生で一番多かった名字は?」みたいな問いは、AIには答えられません。なぜなら、ネット上にその答えがないからです。つまり、AIは「学習できる材料があるかどうか」に依存して、入手できる情報が完結している分野は強いし、そうでない分野は弱いのです。
プログラマーの仕事は、仕様書が決まったあとはアルゴリズムを組み合わせてコードを書く作業なので、AIにやらせると人間より速く、それなりに動くものを作ってきます。ただ、AIは既存の情報を継ぎはぎしているだけなので、細かいエラーや仕様の読み違い、優先順位のミスは普通に起きます。見た目はそれっぽいけど、実際には動かない、ということもあります。
なので「どこが間違っているか」を判断して直せる人が必要になります。ここで経験の差が出るのです。全体の設計ができる人は、AIがどこをどう間違えたかまで含めて修正できますが、経験が少ない人だとわからずにそのまま使ってしまいます。結果として、同じAIを使っていてもアウトプットの質に大きな差が出るわけです。
◆評価できる人の価値は、どんどん高まっている
これは他の仕事でも同じです。例えば文章でも、書き慣れている人は「ここは冗長だな」「論点がズレてるな」と違和感に気づけますが、そうでない人は“それっぽい文章”として受け入れてしまう。企画でも同じで、過去に似た事例が多いとAIはそれなりに面白そうな案を出してきますが、「それが成立するか」を判断できるかは別の話です。例えば、「マンゴーを使った誰も思いつかなかった料理」を考えさせると、「マンゴーを炭火で焼く」とか、おかしなことを言いだします。
つまり、「AIが仕事を奪うかどうか」というより、「AIのアウトプットを評価してちゃんと使いこなせるか」が大事だし、何が正解かを判断できて、最初と最後を担える人の価値はむしろ上がります。そして、そこは年齢よりも経験に依存する部分が大きいと思うのですね。
逆に、経験がない状態でAIに頼り切ってしまうと、「それっぽいもの」を量産するだけになり、自分の判断基準が育たないままAIにのまれてしまう可能性もあるわけです。
そういう意味では、これまで経験を積んできたおっさんこそAIを使いこなせばチャンスもあったりするわけです。実際にエンジニアの世界では、全体設計のできるおっさんの需要がどんどん高くなって、経験不足な若手はAIに置き換えられる、なんて話がありますから。
構成・撮影/杉原光徳(ミドルマン)
―[ひろゆきの兵法~われら氷河期は[人生後半]をどう生きるか?~]―
【ひろゆき】
西村博之(にしむらひろゆき)1976年、神奈川県生まれ。東京都・赤羽に移り住み、中央大学に進学後、在学中に米国・アーカンソー州に留学。1999年に開設した「2ちゃんねる」、2005年に就任した「ニコニコ動画」の元管理人。現在は英語圏最大の掲示板サイト「4chan」の管理人を務め、フランスに在住。たまに日本にいる。週刊SPA!で10年以上連載を担当。新刊『賢い人が自然とやっている ズルい言いまわし』

