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「ボクの話し相手になってよ」新幹線で“猥談”…避難して「指定席代」ムダに 加害者へ“賠償請求”できるのか【弁護士解説】

「ボクの話し相手になってよ」新幹線で“猥談”…避難して「指定席代」ムダに 加害者へ“賠償請求”できるのか【弁護士解説】

5月、新幹線の車内で隣り合わせた男性から「ボクの話し相手になってよ」と声を掛けられ、性的な話を聞かされたというSNSへの投稿が、1000万件以上表示されるなど大きな注目を集めた。

投稿者はその後男性から逃げ、「指定席代を捨ててトイレの前に立っています」と綴っており、その苦痛がうかがえる。

身体的な接触を伴う「痴漢」が性犯罪であることは広く知られている。しかし、公共の場で一方的に性的な発言をしたり、望まれていないのに性体験を聞かせたりする行為は、単なるマナー違反で済まされるのだろうか。

このような被害に遭った場合、被害者はどう対応すべきなのか。弁護士とJR東海に取材した。

「卑わいな言動」は迷惑防止条例違反の可能性

まず、電車内という公共空間で、他人に対して性的な発言をしたり、求められていないのに自身の性体験を語ったりする行為は、犯罪に当たり得るのか。

『鉄道好きのための法律入門』の著作がある小島好己弁護士(あさぎり法律事務所)は、「いわゆる迷惑防止条例違反に該当する可能性がある」として、こう説明する。

「たとえば、東京都の迷惑防止条例(公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例)では、『人に対し、公共の場所または公共の乗物において、卑わいな言動をすること』を罰則の対象にしています(5条1項3号)。

これに違反した場合は、6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科される可能性があります」

この条例のいう「卑わいな言動」とは、「社会通念上、性的道義観念に反する下品でみだらな言語または動作と解されている」という。

「今回の事例のように、列車内で一方的に性的な発言をしたり、自身の性体験を語ったりする行為は、これに該当し得ると思います」(小島弁護士)

また、鉄道営業法においても、列車内で秩序を乱す「風俗を害する行為」や「他人に危害を及ぼす恐れのある行為」があったとき、係員がその者を退去させることができると定められているという(鉄道営業法42条1項4号および鉄道運輸規程21条1号・4号)。

ただし、「隣席の客に卑わいな言動をすることが、法の言う『秩序を乱す行為』に当てはまるかどうかは議論があると思う」と小島弁護士は指摘する。

「たとえば車内で全裸になって踊るなどの行為であれば『風俗を害する行為』に当たるでしょうが、個別の客を対象とした個々の卑わいな言動の場合『風俗を害する行為』と一義的に言えるかは明らかではありません。

迷惑防止条例も警察しか捜査ができませんし、性的な発言をしている人を鉄道会社がすぐさま退去させるというのは現実的にはなかなか難しいのではないでしょうか」

被害に遭ったら…まず乗務員へ相談を

では、実際に新幹線車内などでこうした被害に遭った場合、どのように対応すればよいのだろうか。

国内新幹線の利用者数トップである「東海道新幹線」を運行するJR東海・広報担当者は、弁護士JPニュース編集部の取材に対し、以下のように回答を寄せた。

「弊社では、お客様に安心して快適に鉄道をご利用頂けますよう、お客様のご協力を得ながら、マナーの定着に取り組んでいるところでございます。

車内にてお困りのことやお気付きの点がございましたら、大変お手数をおかけいたしますが乗務員へお申し出ください。

車内にて他のお客様のご迷惑となるような行為を認めた際は、乗務員からお声掛けさせていただいております。また、車内の状況により限りはございますが、お席の移動含め可能な限り対応をさせていただきます」

JR東海は回答で踏み込んでいないが、小島弁護士によれば、あまりに被害が悪質な場合には「乗務員が警察に連絡することもあり得るのではないか」と推測する。

「また、被害者が個人で警察に被害届を出すことも可能です。ただし、その際は被害を示す『証拠』が必要になります。周囲の方に証言を求めたり、録音をしたりする必要があるでしょう 」(小島弁護士)

慰謝料請求は「費用倒れ」の可能性も

今回のSNS投稿者は、指定席券を購入していたにもかかわらず、その場を離れざるを得なかった。このような場合には、指定席料金相当額の損害や精神的苦痛に対する慰謝料を加害者に請求することもできるのだろうか。

小島弁護士は、指定席料金について「乗務員に伝えて席を変えてもらう等の方法もあるので賠償は難しい」と率直に述べる。

慰謝料についても、「理屈の上では請求可能ですが、金額が大きくはならず、労多くして得るものが少ないと思います」と説明。場合によっては「費用倒れ」になってしまう可能性もあるとしてその難しさを語る。

一方で、被害届が警察に受理され捜査が進んだ場合は、「加害者側が刑事責任を軽くしようと示談を申し入れてくることがある」として、示談に応じることにより慰謝料を得る余地があるとした。

公共交通機関の、しかも指定席という容易に立ち去れない空間で受ける性的な言動は、被害者に大きな精神的負担と恐怖を与え得る。

被害に遭わないことが一番だが、万一の時は一人で抱え込まず、まずは乗務員に相談し、自らの安全を確保してほしい。また、近くの座席に困っている人がいた際も、乗務員に声をかけると良いだろう。

配信元: 弁護士JP

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