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「立候補するな」“最年少”女性市長の産休に“賛否”…「批判は法的にナンセンス」元市議・議員秘書の弁護士が指摘するワケ

「立候補するな」“最年少”女性市長の産休に“賛否”…「批判は法的にナンセンス」元市議・議員秘書の弁護士が指摘するワケ

全国最年少の女性市長である京都府八幡市の川田翔子市長(35歳)が、出産のため今夏以降に産休と育休を取得すると表明した。現職の女性首長による産休取得は全国初とみられる。

これに対し、千葉県四街道市の鈴木陽介市長が「大賛成。エールを送りたい。経験していろいろ発信してほしい」とコメントし、那須烏山市の川俣純子市長も「みんなで応援したい。新しい道を彼女が開いてくれる」と賛意を表明するなど、応援の声が起きている。

しかし他方で、たとえば「任期が4年なのはわかっていることなので、子供をもうけたければ立候補しない、市長になったのなら任期が終わるまで待つというのが責任というものなのではないかと思います」(某町議)などの否定的なコメントも散見される。

政治家の産休・育休に関する制度の現状はどうなっているのか。また、任期のある政治家が産休・育休を取得することにはどのような意義があるのか。東京都国分寺市議会議員を3期10年、国会議員秘書を10年務め、衆議院・参議院の議院規則など、政治家に関するさまざまなルールに詳しい三葛敦志弁護士に聞いた。

政治家の産休・育休の「現状」

政治家の産休・育休に関する制度は現状、どうなっているのか。

三葛弁護士は、政治家の「働き方」がそもそも一般の労働者と異なることを指摘する。

三葛弁護士:「政治家は、雇用契約で働くサラリーマンとは異なり、有権者からの信託を受けて活動する特別職公務員です。

労働時間や就業場所も決まっておらず、受け取るのは『報酬』であり、給与とは性質が異なります」

国会議員、閣僚、首長、地方議員、それぞれの立場で制度は異なるが、共通しているのは一般の労働者のように、労働関係法令等に明確に規定されているわけではないという点だ。

国会議員については、衆参両院で「欠席届」を提出する際の理由として「出産」が認められている。とりわけ衆議院では2025年11月25日の規則改正により、議員の欠席理由として「配偶者の出産」「育児」「不妊治療に係る通院」も明記された。

これに対し、閣僚や首長といった特別職の公務員には、このような特別の規定がおかれていないようである。八幡市でも、市条例等に市長の産休に関する規定はない。

特別職である市長には労働基準法が直接適用されないものの、川田市長は、労働基準法で定められる期間(原則「産前6週間、産後8週間」)や、一般職員に適用される市条例の施行規則(「産前・産後各8週間」)を参考に、産前・産後それぞれ6~8週間程度の期間を選択することを検討しているという。

一方、地方議員については、労働基準法や育児・介護休業法のような統一的な法制度は存在しないものの、全国の議長会が定めた標準会議規則により産休期間が明記されるなど、各議会で制度化が進んでいるのが現状である。

過去には閣僚も。国会議員の産休・育休取得例

制度が不十分な中でも、過去には産休・育休を取得した国会議員が複数存在する。

初の国会議員の妊娠出産は、1949年12月、園田天光光(てんこうこう)衆議院議員(当時)だったが、当時は産休等の制度は整っていなかった。

国会議員の産休制度は、2000年3月、橋本聖子参議院議員(自民党)の妊娠判明後の参議院規則の改正により認められ、衆議院でも翌2001年9月、水島広子衆議院議員(民主党・当時)の出産を機に認められることとなった。

小渕優子衆議院議員(自民党)は、2007年9月25日に第一子を出産した後、2009年には、麻生内閣で内閣府特命担当大臣(少子化対策、男女共同参画)を務めていた際に第二子の妊娠を発表した。

閣僚の妊娠は史上初であり、大きな注目を集めた(出産は閣僚退任後)。同年8月の総選挙では、9月の出産を控えていたため本人不在の選挙戦となったが、対立候補に大差をつけて当選を果たしている。

男性議員の例としては、2019年に当時環境大臣だった小泉進次郎衆議院議員(自民党)が、2020年の第一子誕生に際して育休を取得する意向を表明し、話題となった。

これらの事例は、政治家がライフイベントと職務を両立させるための先例となってきたが、その度に賛否の議論が巻き起こってきたのも事実である。

国外に目を向ければ、国のトップである首相が在任中に出産し、産休を取得した例もある。

ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン首相(当時)は、2018年に在任中に出産。6週間の産休を取得した。その間、副首相が首相代行を務め、国政の停滞を招くことはなかった。この出来事は、女性リーダーが国のトップとして働きながら出産・育児をすることの可能性を世界に示した。

「一定期間の不在も問題なし」専門家が指摘する産休取得の意義

三葛弁護士は、任期のある政治家が産休を取得することについて、法的にも実務上もまったく問題はないと指摘する。

三葛弁護士:「そもそも、法律上、被選挙権が25歳や30歳から付与されていることを踏まえれば、20代や30代の若い世代が政治家を目指す上で、任期中に出産や育児といったライフイベントを迎えることは、当然に想定されています。

小渕議員の例を引くまでもなく、妊娠中に立候補することも当然に認められており、憲法はじめそれを否定する法令はありません。

一方、子どもは授かりものであり、『任期後に妊活しよう』などと思っても計画通りにいくものではありません。かたや、少子化対策基本法をはじめ少子化対策のための法令が整備されており、政治家が子どもを産み育てることを阻む制度はありません。

したがって、在任中に妊娠・出産するのを批判すること自体、法的にはナンセンスです。むしろ、出産や育児を理由にキャリアを諦める必要がない環境を整えることが筋です。

首長の場合、地方自治法に基づき、副市長や副知事が職務代理者を務める制度が確立されています。川田市長のケースでも、産休中は副市長が職務を代理し、重要案件についてはオンライン会議への参加や電話、メールで対応するとしており、市政実務が停滞する懸念は無用でしょう」

三葛弁護士はさらに、出産や育児による不在は、急な病気や事故で職務を離れるケースと比較して、むしろ事前に準備を整えやすいという利点もあると付け加える。

三葛弁護士:「出産予定日に向けて、業務の引き継ぎや代理の体制を計画的に準備することができます。病気や事故などの突発的な事態と比べて、むしろ、行政への影響を最小限に抑えることが可能です。そして、産休・育休の場合、復帰の目途もある程度たちます。

病気やけがの際にも辞任させられない以上、産休や育休を認めないことに合理的な理由はありません。

私自身もかつて市議会議員1期目に病気で議会の定例会を欠席しましたが、市民も議会も温かく迎えてくれました。それがあるべき社会の姿と考えます。

首長自らが産休・育休を取得することは、その必要性を社会に示す大きな意義があります。川田市長の決断は、『男女とも仕事や社会での自己実現とライフイベントの両方を追い求めやすい社会』を目指す上で、重要な一歩となるでしょう」

政治家の産休・育休を巡る議論は、単に一個人の働き方の問題ではなく、多様な人材が政治に参加できる社会を実現するための制度設計のあり方を問うものと言える。川田市長の決断を機に、より建設的な議論が進むことが期待される。

配信元: 弁護士JP

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