
草間彌生《赤かぼちゃ》2006/直島・宮浦港緑地
こんにちは、奈良在住の編集者・ふなつあさこです。
香川県といえば、うどん県……というのはもちろんですが、今や世界的な人気を集める国内屈指のアートエリア。とくに今年は、3年に一度開催される「瀬戸内国際芸術祭」の開催年にあたり、11月9日(日)まで開催中の秋会期はそのラストチャンス! 今回は、そんな“瀬戸芸”の広大な開催エリアのなかから西エリアをピックアップしてレポートします。
さらに、今回の“瀬戸芸”の秋会期で新たに開催エリアに加わった「宇多津(うたづ)」にある四国水族館なども併せてご紹介。
おだやかな瀬戸内海に浮かぶ島々の歴史と個性をバックボーンに展開される現代アートの数々に触れるアート旅は、大人の心にこそ豊かな潤いをくれます。ぜひチェックして!
芸術の秋! 世界的に有名な芸術文化の聖地・直島へ

「南瓜」草間彌生 2022年 ©YAYOI KUSAMA 撮影:山本糾
瀬戸内のみならず、日本を代表するアートの聖地・直島。日本を訪れる海外ツーリストにも人気の訪問先となっていて、BBC(英国放送協会)による「2025年に旅行したい場所25カ所」にも、国内で唯一ランクインしています。
ベネッセハウス ミュージアムの屋外に展示されている草間彌生氏の《南瓜》(2022)は、ベネッセアートサイト直島のシンボルともいうべき作品。風景も含めてひとつのアートです。

直島新美術館 写真:GION
直島には美術館やギャラリーのほか、屋外作品が点在。なかでも注目は、今春本村地区にオープンしたばかりの直島新美術館。ベネッセアートサイト直島における安藤忠雄氏設計のアート施設としては10番目となる建物で、テラスからは瀬戸内海を臨むことができます。

「直島新美術館 開館記念展示―原点から未来へ」展示風景、2025年 写真:来田猛
館内では現在、日本、中国、韓国、インドネシア、タイ、フィリピンなどアジア地域出身のアーティストによる「開館記念展示―原点から未来へ」が行われています。
私も個人的に訪れて、自分の心と向き合うように作品を鑑賞してきました。同じ時代を生きるアーティストの作品には、リアルな生命力が溢れている気がします。

Ring of Fire – ヤンの太陽 & ウィーラセタクンの月 Lunar(夜) 写真:表 恒匡
美術館以外にも、直島の集落に溶け込むようにアート施設があるのも直島を訪れる楽しみ。本村地区の家屋を展示の場としている「Ring of Fire - ヤンの太陽 & ウィーラセタクンの月」は、昼(Solar)と夜(Lunar)とで異なる表情を見せるインスタレーションが見どころ。
本村地区において展開するアートプロジェクト「家プロジェクト」のアート施設をめぐりながら散策していると、私たちの暮らしの地続きにアートがあるんだということを再認識することができるのではないかと思います。

草間彌生《赤かぼちゃ》2006/直島・宮浦港緑地
直島を旅立つ前に、フェリーが発着する港がある宮之浦の草間彌生氏の《赤かぼちゃ》(2006)にも会ってきました。作品の中に入ることもでき、思い思いのポーズで記念撮影する人の行列ができています。みんなでアートを楽しむワクワク感を共有できました!

実は私、直島も瀬戸芸も知ってはいたけど訪れたのは今回が初めて。あまりのスケールにいつどうやって参加すればいいのだろうと迷っているうちに時間が経ってしまったんですが、実際に訪れてみて、“行って出合えたアートと向き合う、その時を持つことが自分の心を豊かにしてくれるんだ”ということがわかりました。
ちなみに私が宿を取ったのは、高松市内。高松港は、直島・豊島(てしま)・犬島のベネッセアートサイト直島関連スポットや瀬戸芸開催エリアの拠点となっているので、とりあえず行ってみようという方は、高松市に泊まるのがよいのではないかと思います。夕飯には、名物の骨付鶏をいただきました。グルメも充実! 大きな商店街もあるので、お買い物も楽しめますよ〜!
美しい瀬戸内の風景のなか“瀬戸芸”西エリアをめぐるアート旅
斜面に石垣の家々が立ち並ぶ「高見島(たかみしま)」

高見島アートトレイル《星屑の子どもたち》淺井裕介
瀬戸芸の西エリアには、多度津港や丸亀港からフェリーでアクセスできます。最初に訪れたのは高見島。斜面を這うようにつづく細い上り坂や階段をあがっていくと、かつて除虫菊の栽培などで栄えた家々や空き地が「高見島アートトレイル」の作品たちの展示の場になっています。
風景になじむように作品がひそんでいるので、探すのも楽しみ。ただし、足もとにご注意を! 瀬戸芸に参加する際には、歩きやすい靴がマストです。

こちらは中塚邸に展示されている泉 桐子(とうこ)さんの絵画《The days when you said you were okay and the scene about the boat》。屋根裏には、橋本雅也さんによる木と土からなる作品群《子音と海》も。

同じ民家のはなれには谷本真理さんの陶器作品《Stepping stones of memory》が。谷本さんは石垣の隙間にそっと小さな陶器を展示した《Left things,letters》も手がけています。

淺井裕介さんの巨大な立体作品《土ヲ喰ム》の作品の一部には高見島の土も使われているほか、島を去った人々の暮らしの道具も取り入れられています。
妖精のように集落のあちこちに登場する立体作品は、淺井さんによる《星屑の子どもたち》と題されたシリーズ。

高見島でかつて行われていた「なもで踊り神下ろし式」から着想を得たインスタレーション作品《おりおりる》を手がけるのは、保良雄(やすらたけし)さん。建物に這うツタひとつまでも作品の一部になっているようでした。

海辺には、八角形の塔《鳥のための塔》が。大室佑介さんが設計を担当し、内部の漆喰壁には中谷ミチコさんの2羽の鳥をモチーフにした作品が羽ばたいています。

瀬戸内に観光客が押し寄せるさまをバッタの襲来に見立て、外来種の食材を使ったカレーを《エイリアンフード 島の外来種》という作品の一環として供しているのは、食をテーマにしたアーティスト・EAT&ART TAROさん。
そのへんでよく見かける外来植物・セイタカアワダチソウのソースはスパイシーな風味でした。

島のあちこちには、ちょっとひと息つける椅子が設置されていますが、こちらもBankART1929+PHスタジオが手がける椅子プロジェクト《家具φ》シリーズの作品。座っても大丈夫です!

