今春、熊本県は、勤務中に職場のパソコンでアダルトサイトなどを繰り返し閲覧していたとして、商工労働部に所属する50代の男性職員を停職4か月の懲戒処分としたことを発表した。
県によると、職員は2024年1月から2025年7月までの1年半の間で、延べ約93時間にわたって不適切なサイトを閲覧しており、自宅で保存したデータをUSBで職場に持ち込んでいたという。さらに、この職員は2018年にも同様の行為で減給処分を受けていたという。
2022年にも、名古屋市で同種の事例が発生している。当時50代の男性職員が勤務中にアダルトサイトなどを閲覧していたこと(75日間で114時間)などの理由から、停職1か月の懲戒処分を受け、課長級から係長級に降任された。
公務員の場合は公表されるのでニュースになりやすいが、同様の事態は民間企業でも起こっている。
たとえば、某県内にある従業員が数名の小規模な事務所で働いていた男性のAさんは、同僚の中年男性が就業時間中に会社のパソコンでたびたびアダルトサイトを閲覧していることに気が付いていた。なお、この中年男性も50代だったという。
所長や他の職員が女性だったこともありAさんはハラハラしつつ、しかし本人に直接指摘するのも気まずいので放置していたところ、ついに中年男性がAVを見ている現場に女性所長が遭遇。中年男性はこっぴどく叱られただけでなく、自席の後ろに大型の鏡を設置されることに。パソコン画面が周囲から丸見えになり、AV鑑賞は事実上不可能になった。
この事例のように女性もいる職場で男性がアダルトサイトを見ることは、サボりだけでなくハラスメントにも該当するのではないだろうか。労働問題に詳しい遠藤知穂弁護士に、法的な問題点を聞いた。
仕事中のAV閲覧は「職務専念義務」違反
通常の企業では、就業規則に「アダルトサイトの閲覧は禁止」と直接的・具体的に規定されていることはまれだろう。それでは、懲戒や解雇処分の対象にはならないのだろうか。
遠藤弁護士によると、就業時間中の閲覧は「職務専念義務」に違反する。また、会社支給のパソコンや携帯電話について私的利用を禁止するルールが就業規則などに記載されているなら、「服務規律違反」にも該当するという。
「就業時間中にアダルトサイトを閲覧していた社員を、その行為だけを理由に、会社が解雇できるわけではありません。しかし、懲戒処分の対象にはなります。
また、注意や懲戒処分を繰り返し行っても改善が見られず、アダルトサイトの閲覧を続けたり不適切行為を繰り返したりするなら、最終的には解雇される可能性もあります」(遠藤弁護士)
「環境型セクハラ」にあたる可能性
そして、就業時間中にオフィスでアダルトサイトを閲覧することは、セクシュアル・ハラスメントに該当する可能性がある。なお、仮に同僚に女性がいない場合でも、男性の同僚に対するセクハラが成立し得るという。
「ハラスメントは職場環境を乱す行為でもあるので、それ自体が、懲戒処分の理由になり得ます」(遠藤弁護士)
もっとも、他の社員に無理矢理見せつけるならともかく、隠れてAVを見るような行為は加害性が高いとは言えない。そのため、隠れて見ている状況であれば、同僚が「ハラスメントで精神的損害を受けた」と慰謝料を請求する事態や、刑法上の犯罪が成立して刑罰が与えられるまでの事態には発展しにくいという。
「昔の企業では、オフィスの壁などに女性の水着姿のポスターが堂々と貼られていることがよくあったと聞きます。これは現代では『環境型セクハラ』に該当すると考えられています。
AVを他の従業員もいる中で自席で見ていて、他の従業員の目にも入ってしまうというような状況の場合には、『環境型セクハラ』に該当する可能性がありますので、セクハラを理由とした損害賠償請求の可能性も否定できません。
また、会社がそのようなハラスメントに該当する環境を放置して改善しようとしない場合には、従業員が会社に対して損害賠償を請求する、というケースも想定できます。
しかし、特定の従業員が同僚に隠れてこっそりAVを見る行為については、『環境型セクハラ』に該当するとは言い難いでしょう」(遠藤弁護士)

