「セブン-イレブン・ジャパン」(東京都千代田区)は6月10日、店舗で製造する「セブンカフェスムージー」が全品半額となる1日限りのセールを実施した。
セールの情報は以前から店頭で告知されていたほか、SNSでも拡散され、当日は多くの人が同商品を目指し、 セブンに押し寄せた。
しかし、通常の商品と異なり、スムージーは購入後に店内の専用マシンで調理を行う必要がある。結果として各地でマシンの前に行列が発生し、多くの店舗で「30分以上待ち」の状況となる。さらには「120分以上待ち」の店舗もあったという。
SNSではその他にも「待っている間にスムージーが溶けてしまった」という声も出ている。マシントラブルも頻発しており、並んだ末に機械が故障してしまったというケースも多数。
このような事態があることから、購入後に返金を求める人も多くいたが、拒否する店舗もあった。セブンには、返金に応じる義務があったのだろうか。
「待っている間に溶けてしまった」との声も…
スムージーは種類によって価格が異なるが、たとえば定番の「ベリーベリーヨーグルトスムージー」は通常価格が330円のところ165円、新発売の「すいかスムージー」は通常価格が400円のところ200円と、通常に比べると大幅に安くなっていた。
もっとも、セブンのスムージーはジュースやアイスクリームのように、レジで支払いを済ませればすぐに飲食できるという商品ではない。むしろセブンカフェのコーヒーに近く、購入後、店内に設置されている専用マシンにセットしてはじめて完成する仕組みだ。
公式サイトによると、スムージーはマシンにセットしてから約70秒後に完成するとされている。しかし実際には、完成後にマシンの洗浄作業が行われるため、次の人がマシンを使用できるまでには数分の時間を要する。記者が実際に訪れた東京都港区の店舗では「約3分かかります」と掲示されていた。
また、ほとんどの店舗では、設置されているスムージー専用マシンは1台のみとみられる。複数設置されていることの多いコーヒーマシンに比べても処理能力に限りがあるため、そもそも、複数の人が同時にスムージーを購入した時点でほぼ必然的に行列が発生する構造ではあった。
今回の半額セールでは、この問題が一気に表面化したといえる。普段ならスムージーを購入しない客が値引き目当てにやってきたことで、各地の店舗でマシン前に長蛇の列ができたのだ。
さらに、半額ということで一度に複数のスムージーを購入して、まとめてマシンで調理しようとした人も多数いたことが、混雑に拍車をかけた。
記者が実際に訪れた店舗では、10人以上の列ができており30分以上待つ必要がある状態だった。Xを見ると、同じ状況は全国でざらにあったようだ。さらには「スムージーただいま120分以上待ちです」との貼り紙が冷凍ケース前に掲示されている写真も投稿され、多数拡散されている。
出勤・通学前や昼休みにスムージーを購入したが、マシンが使えるまでに想像以上に時間がかかるため、けっきょく調理せずに凍ったままのスムージーを持ち帰る人も多くいた。また、「待っている間に中身が溶けてしまった」「ぬるくなってしまった」という投稿も相次いだ。
さらに、一部の店舗では専用マシンがトラブルや故障で使用中止になっていた。この場合は返金の対応が取られていたようだ。
一方、記者が訪れた店舗では、若い男性客のグループが「昼休みが終わってしまうから」と返金を求めていたが、店員は「今日はスムージーの返金対応はできない」と断っていた。
Xを見ても、対応には店舗によってばらつきがあり、列に並んでいる客に対して店の方から「30分以上かかりますが大丈夫ですか」と返金を持ち掛ける店もあった一方で、スムージーが溶けてしまった後でも返金に応じない店もあったようだ。
代金を払った時点で契約は完了している
今回のようなケースでは、店側には返金に応じる法的な義務はあるのだろうか。
法律上、売買契約は、買主(客)が代金支払い義務を負い、売主(店側)が目的物の所有権を買主に移転する義務を負う契約により成立する。
スムージーに関しては、客が代金を支払い、店側が「専用のマシンでスムージーが作れる冷却された果物などのセット」を引き渡した時点で売買契約は成立し、同時に双方の債務の履行が完了する。そして、この売買契約の内容には通常、「店内の専用マシンで商品を完成させられること」が含まれるとしても、「一定時間内に必ず完成させられること」まで含むとは限らない。
契約法に詳しい杉山大介弁護士は、次のように説明する。
「たとえば、急いでいる時にセブンカフェのコーヒーを買おうとしたらマシンの前に行列ができていた場合、それでもコーヒーを買うかどうか、客側が考えたうえで判断することになりますよね。
スムージーの場合も同じことであり、行列ができていることを客は確認できるのだから、『急いでいるから買わない』という選択をすることもできます。そのうえで『スムージーを買う』という選択をしたのなら、その時点で契約は完了しており、後からつべこべ言うことはできない、ということです」
たとえば「果物セットを購入すれば、3分以内にマシンでスムージーを作れる」と店側が明示して保障しているわけではないから、「いつスムージーを作って飲めるか」という点にまで合意が成立するわけではないのだ。
したがって、購入した後から「思ったよりも時間がかかる」または「溶けてしまった」「ぬるくなってしまった」などの客側の都合だけで返金を求めようとしても、法的には、店側に応じる義務はない。
ただし、マシントラブルの場合は店舗側の責任によって「商品を完成させられること」という条件が達成されなくなることを意味するから、債務不履行が問題となり得て、返金を求めやすくなる。
結局のところ、「半額」や「200円お得になる」という要素に目がくらみ、目の前にできている長蛇の列や待ち時間の案内を見て見ぬふりしながらスムージーを買ってしまったのなら、後から「昼休みに間に合わない」などと不満を訴えるのは筋違い、ということであろう。

