京都の店々に密やかに備わる坪庭は、この街に暮らす人々の美意識を象徴するような場所。京都に出かけたら見に行きたい、小さくも美しい庭を紹介します。
心を感じとるための茶と庭と。
―POUYUENJI KYOTO―

敷き詰められたあられこぼしに誘われて歩を進めると、外の喧騒を忘れさせる静けさに満ちる世界が現れる。普洱茶、烏龍茶、岩茶と、希少な茶葉との出合いをもたらすティールームの先に広がるのが、清らかな水の流れる庭園だ。
ブランド&アートコンサルタントのトニー・チーとタッグを組む形で庭を仕立てたのは、日本屈指の作庭家・北山安夫。枯山水庭園の石組みを得意とする庭師による作品は、風水による水の流れを取り入れているのが稀有である。とはいえ小石で組んだ池の縁に大きな石や細長く切った葛石をあしらい、表情と躍動感をもたらしているのは石を知り尽くした匠ならでは。茶人大名・古田織部が考案したとされる織部灯籠には、茶の美学が息づく場への想いが込められている。
「庭は生きていて『心』をもっている。見る人の心と呼応し、自分の内側にある原風景や気分が重なって、景色がうまれる。それはお茶と同じ。今日の自分の『心』を見つけて、余韻を味わうもの。ここにそんな風情がうまれることを願って」。そんな匠の言葉とともに、今一度眺めたい景色だ。


さまざまな茶のギャラリー&ティールーム。
『ポウエンジ キョウト』
京都市東山区八坂通下河原東入八坂上町374
075−533−8826
10時〜18時(ティールーム〜16時30分LO)
月火休
photo : Yoshiko Watanabe illustration : Junichi Koka edit & text : Mako Yamato
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