男と女は全く別の生き物だ。それゆえに、スレ違いは生まれるもの。
出会い、デート、交際、そして夫婦に至るまで...この世に男と女がいる限り、スレ違いはいつだって起こりうるのだ。
― あの時、彼(彼女)は何を思っていたの...?
誰にも聞けなかった謎を、紐解いていこう。
さて、今週の質問【Q】は?
▶前回:条件は最高なのに…。メガバンク男(30)との婚約を破棄した女が覚えた「致命的違和感」とは
3日間、既読スルーが続いていた。
オフィスでも友達とご飯を食べていても、スマートフォンを開いては閉じ、また開いては閉じる。永遠に同じことを繰り返しているのは、わかっている。
それでも私の指は、太陽とのトーク画面に向かってしまう。
― 明日香:太陽くん、体調悪いのかな?元気?
自分で送ったその文字を見るたびに、少しだけ後悔する。もっと気の利いたことを送ればよかったとか、重いと思われていないか…とか。
既読はとっくについている。太陽とは、いつもこんな感じだ。向こうも私のこと、良いと思ってくれているのは伝わっている。でも、マメじゃないしまだ曖昧な関係だ。
― もう返事は来ないな。
諦めかけた翌日に、太陽から返信が来た。
― Taiyo:ごめん、バタバタしてた。元気だよ
たった、それだけ。でも私は、思わず口元が緩んでしまった。
何度もデートをしているし、連絡も来る。手も繋いでいるし、スキンシップもある。でもまだ太陽の口から「付き合って」と言われたことはない。
この関係は、一体何なのだろうか。そしてどうやったら、もう一歩進んで、正式に“彼女”になれるのだろうか…。
太陽と出会ったのは、3ヶ月前のこと。
きっかけは、仕事終わりに丸の内で女友達三人と飲んでいた時に、太陽たちがいる男性グループから声をかけられたことだった。
スーツがよく似合っていて、私はとにかく太陽の顔がタイプだった。
「お仕事は、何をされているんですか?」
「僕はM&A関連の会社に勤務していて。明日香ちゃんは?」
「私は金融系です」
「そうなんだ。職場は?近く?」
「はい。お近くですか?」
「うん。僕も丸の内!じゃあ…今度、デートする?」
この時、私はあまりにも嬉しそうな顔をしたのを隠しきれていなかったと思う。
M&A関連会社勤務、28歳。趣味は料理と映画、週末はジムに行くこともある…まさに、完璧な相手だった。
LINEを交換した翌日、自分から思い切って誘った結果デートをすることになった。
初デートは、太陽が予約してくれていた『Amber Trip』だった。
西麻布に今年できたばかりの店で、少量多皿というコース設定も、デートに完璧。
― こんな素敵なお店を予約してくれるということは…太陽も私のこと“いいな”と思ってくれている、ということだよね?
予約してくれたお店の雰囲気で、相手が自分のことをどれくらい思っているのか大体推しはかれる。
その事実に胸を躍らせながら待っていると、太陽がやってきた。
「ごめんね、待った?」
「ううん。私も今来たところだから」
「良かった。何飲む?」
「一杯目は…ビールにしようかな」
「明日香ちゃんビール?じゃあ僕も」
少し緊張しながら乾杯して、初デートが始まった。
太陽は私服姿もかっこよくて、思わずドキドキしてしまう。スーツ姿とはまた違って、髪型も少しラフで、そこがまたいい。
「どうした?」
「あ、ごめん。つい見ちゃって」
「何それ」
ふふっと太陽が笑う。それを見て、つられて私も笑ってしまう。温かくて幸せな時間が流れていた。
しかも太陽は、私に興味を持ってくれているように感じた。「大和肉鶏」を食べながら、私の恋愛話を聞いてきたからだ。
「明日香ちゃんって…。今、彼氏とかいるの?」
「私?いないよ。彼氏欲しいなぁとは思っているけど」
ここで、「すっごく彼氏が欲しい!結婚がしたい!」のようなガツガツした返答はしない。
どこか若干余裕を見せることが大事だと、SNSの婚活アカで見た記憶がある。だからちゃんと、私は実践してみせた。
「そうなんだ。可愛いし、モテそうなのに」
この言葉を聞いて、私は飛び跳ねそうなくらい嬉しかった。男性から“可愛い”と言われたら、嬉しいに決まっている。
学生時代はヘアサロンのモデルをしていたくらいなので顔は悪くないと思うし、少し背は低いけれど、それも含めて“可愛い”と言われることがある。ネイルもかかさず通ってセルフケアも怠らないようにしている。
食事が終わりお店を出ようとすると、さっと太陽が支払ってくれた。
「いいの?ありがとう。ご馳走さまです」
「もちろん。それよりこの後どうする?」
「もう少し一緒にいれたら嬉しいけど…。でも無理せずに。太陽くん、明日早かったりしない?」
「明日ゴルフだからそこまで遅くまではいられないけど…。友達の車に乗せてもらえるから運転じゃないし、せっかくだしもう1軒行こうよ」
「うん♡」
こうして、2軒目へ行き、24時前に解散した私たち。
「じゃあまたね。明日香ちゃん、気をつけて帰ってね」
「ありがとう。今日はすっごく楽しかった。またすぐにね」
家に帰ってもまだ、私の心臓はしっかり跳ねていた。
この日は昼間がとても暑かった。でも夕方になると少し風が出てきて、ディナーの後、まだほんのり熱気が残る目黒川沿いを一緒に歩いた。
今日は頑張っておしゃれをしてきたから、肩に紐がついたワンピに、ちょっとだけヒールのある靴。歩くのには少し不向きな服装だったけど、「歩こう」と太陽が誘ってきたので、嬉しかった私は素直に従う。
「今日も楽しかったな〜。太陽くん、ありがとう」
「こちらこそ。明日香ちゃん、寒くない?」
そのタイミングで太陽がさりげなく私の手を握ってきた。
驚いて思わず固まってしまったけど、太陽は何事もなかったように歩き続けるから、私もそのままついて歩く。
― これって…。私のこと少しは好きってことだよね?
「好き」とか「付き合おう」とか、そういう言葉は一度も出てこない。でも、この手は意味するのだろうか。
そしてこの日も、何事もなく中目黒の駅前で解散となった。
◆
― 私たち、今どういう関係なんだろう。
そう思い始めたのは、3回目に会った時だった。
3回目は、22時から恵比寿のバーで落ち合った。私が外で飲んでおり、太陽に連絡したところ、たまたま近くにいたので急遽会うことになった。
カウンター席に並んで座り、ふたりでグラスを傾ける。
毎回、会話は弾む。
好きな映画の話、子どもの頃のこと…気がついたら2時間が経っており、「こんなに話せる人、久しぶりだな」と思ったタイミングだった。
お酒の力を借りて、ずっと聞きたかったことを思い切って聞いてみることにした。
「太陽くんって…今、彼女いるの?」
すると太陽は少し間を置いてから、こう言った。
「彼女はいないよ。一応マッチングアプリはまだ入っているけど…でも、最近は全然見てないな」
嘘か本当かはわからない。でも「アプリを見なくなった」ということは、それはつまり、私とのことを前向きに考えているということだと受け取った。
「そうなんだ」
「彼女は欲しいと思っているんだけどね」
この太陽の言葉に、また私の胸はギュンっとなる。
― 彼女を探していて、私に定期的に会うということは…。
これはかなり私に向いていると思う。
こんな感じで毎回希望を積み上げて行ってくれる太陽とは、この後も定期的に会う関係になっていく。
でも、三ヶ月経っても私たちの関係は何も変わらなかった。
付かず離れずの関係で正式な“彼女”になれていない。でも定期的に会っているということは、太陽も私のことが気になっている、ということで間違いはないと思う。
― 今は仕事が忙しいと言っていたし…。もう少し待てば、きっとちゃんと向き合ってくれるんだろうな。
そう信じながら、今日も私はスマートフォンを握りしめている。
既読スルーの3日間を経て届いた、「元気だよ」のひとこと。
― これを、脈なしと呼ぶのだろうか。それとも、私が信じたいだけ?
太陽は、私のことをどう思っているのだろうか。
▶前回:条件は最高なのに…。メガバンク男(30)との婚約を破棄した女が覚えた「致命的違和感」とは
▶1話目はこちら:「あなたとだったらいいよ♡」と言っていたのに。彼女が男を拒んだ理由
▶NEXT:6月14日 日曜更新予定
定期的に会うのに正式な関係にはならない…男は一体、何を考えている?

