◆遠藤航離脱の衝撃。吉田麻也の合流がもたらす意味

5月31日に行われたアイスランド戦でも、コンディション不良から短い時間でのプレーに限られ、キャンプ地についてからも別メニューが続いていた遠藤。結局、ワールドカップの試合に出られるところまでの回復はできず、無念の離脱、代表引退となった。
支柱を失い、動揺が広がっているだろうサッカー日本代表において、サポートメンバーとして吉田麻也が合流していたことは大きなプラスだったのではないだろうか。
吉田は‘18年から代表のキャプテンに就任。前回カタール大会まで主将を務め、五輪代表としても3大会に出場。ロンドン五輪、東京五輪ではキャプテンも務めており、プレッシャーのかかる試合を幾度となく経験してきている。
5月31日に行われたアイスランド代表との戦いでは、日本代表のスターティングメンバー、3バックの真ん中としてキャプテンマークを付けた吉田麻也が先発出場。ワールドカップを戦うメンバーには入らなかったが、長年代表を支えた吉田への敬意を表すための出場であり、わずかな時間での交代となったが印象的なプレーを見せ、会場をおおいに沸かしてくれた。そして、それは試合という場面でともに過ごすことができたメンバーにも少なからず好影響を与えたと思っている。
吉田はアイスランド戦のあと、報道陣に「前半ちょっとセーフティーな選択が多いなと感じましたし、僕がピッチを出た後も感じました。ワールドカップではもっとプレッシャーがあるし、もっと緊張して、そういうところの視野が狭くなるんで、今からトライしていかないとほんまにできないと思う」と語り、ピッチに立ったことで見えてきた課題を改めて示してくれていた。
その際、いまの代表チームの強さを問われると、ちょうどよく冨安健洋が後ろをとおり、「冨安です。強さは冨安」と返し笑いを誘う。「冨安が(自身が背負ってきた)22番をこれから 10年ぐらい続ける予定だよな?」と巻き込むと、冨安は「はい、麻也さんにはいろいろと学ばせてもらったのでこの場で言えて良かったなと思います」と返すと、吉田が「冨は僕が(代表から)外れたあと、電話で 22番つけるって言ってくれて、それがやっぱり一番嬉しかったんで。まあ引っ張ってくれるでしょう」とにこやかに語り、そこには優しさも垣間見え、冨安からも笑みがこぼれていた。
◆菅原由勢が語った、吉田麻也の“経験”の重み
アイスランド戦でアシストを決めた菅原由勢は、試合後、報道陣から「(吉田と)一緒に過ごして1%でも勝つ確率を上げるための効果があったか」と問われ、「まず経験が違うわけだし、いいワールドカップも悪いワールドカップも、悪いって言い方がよくないかもしれないですけど、何がダメだったのかっていうのはある程度、ワールドカップでの戦い方を知っている選手ですし。もちろん(コーチの)長谷部(誠)さんや、(中村)俊輔さんもそうですけど、現役でやってる選手が生で語って、自分たちと一緒にトレーニングするっていうのはまた違うと思うんです。もちろん僕らが聞くべきところもあるだろうし、麻也さんだったり(長友)佑都さんだったりがしっかり伝えてくれる部分もあると思う。でも本当にチーム一丸となって 1%でも勝てるようにやれることはチームとして続けられたんじゃないかなと思います」と選手に近い立場で寄り添ってくれていることの重要性を話している。吉田はアイスランド戦後、「いろんな環境が変わるなかでコンディションを高めていって、最高の状態でオランダ戦を迎えてほしいですし、新しい景色が見えるために(選手)みんなが、選手だけじゃなくて僕らもそうだし、皆さんもそうだし、ファンの皆さんもそうだし、みんな日本一丸となって勝ちましょう」とも話していた。
「最高の景色を」というスローガンを掲げ、優勝を目指すこと公言してきたいまの代表チーム。サッカー大国であるブラジル、イングランドとの試合で勝利するなどいままで実現できなかったことを数多くやってのけてきた森保ジャパンにとって、それはどこか夢物語ではなくなってきている。
ここでの遠藤航の離脱という事態は、チームに重くのしかかるかもしれない。しかし、思いを繋いできたメンバーがおり、吉田のように経験をふまえて支えてくれるメンバーもいる。今一度、気を引き締め直し、改めてオランダ戦に今できうる万全の状態で臨んでほしい。
取材・文/八木康晴 撮影/藤田真郷

