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保育ICT導入も「端末不足で手書きより遅い」の本末転倒…“業務効率化”進まぬ背景に「人員不足」置き去りにした国の施策

保育ICT導入も「端末不足で手書きより遅い」の本末転倒…“業務効率化”進まぬ背景に「人員不足」置き去りにした国の施策

自治体職員でつくる東京自治労連保育部会は12日、都内で会見を開き、保育現場で急速に広がる「保育ICT」についての調査結果を発表した。「保育ICT」とは登降園の管理や連絡帳、日誌の作成などをアプリで行う仕組み。

調査は現場で働く保育者を対象にしたもので、都内9区の組合員647名から回答を集めた。

国や東京都は「業務効率化」「負担軽減」を掲げ、保育現場へのICT導入を強力に後押ししてきた。ところが調査では、事務作業の時間が短縮されたと明確に実感している保育者は1割にとどまった。

報告書は、端末不足による「順番待ち」や身体的な負担といった新たな問題が生じていると指摘し、「根本的な課題は慢性的な保育者不足にある」と結論づけている。

時短を実感できたのは約4割 「順番待ち」で手書きより遅く

政府のデジタル行財政改革会議は2024年6月、「2025年度中に保育施設のICT導入率100%を目指す」方針を決定した。東京都もこれを受け、「こどもDX2025 つながる子育て推進会議」を設置し、保育ICTを軸にした子育て支援を進めている。報告書によると、23区では約9割の公立保育園がすでに保育ICTを利用しているという。

自治体は保育ICT導入の狙いを「業務効率化」「負担軽減」と説明してきた。理屈のうえでは、紙とペンの作業がデジタルに置き換われば、保育者の手は空くはずだった。

調査では、アプリ導入後に1日の事務作業時間が「1時間未満」と答えた保育者が12.2ポイント増えた。一定の時短効果はうかがえる。

だが「事務作業の時間が短縮されたと感じるか」との問いに「そう思う」と明確に答えたのは約1割。「ややそう思う」を合わせても肯定的な評価は約4割にとどまり、「どちらともいえない」「あまりそう思わない」「そう思わない」が過半数を占めた。評価が高かったのは連絡帳や日誌、登降園管理といった機能だった。

一方で、不便になった理由として「システムの不具合や反映の遅さ」「入力作業の負荷」「端末不足による入力待ち」が、調査した全ての組合で共通して挙がった。

報告書は9区のうち2区で回答者の9割近くが「端末が足りない」と答えた点に注目。複数の職員が1台を共用し、午睡(おひるね)中の記録や連絡帳の作成で順番待ちが生じ、「手書きよりも時間がかかる」という本末転倒な事態も報告されたとしている。

「子どもの椅子で前かがみ」 目・肩・腰への新たな負担

調査で際立ったのは、ICT利用が保育者の体に負荷をかけている点だ。端末利用で負担を感じる部位として「目」「頭・首」「肩」「腰」が多く挙がり、特に50代では眼精疲労(目の疲れ)を訴える声が突出。

背景には、保育現場ならではの事情があるという。子どもが寝ている午睡中に薄暗い部屋で入力することや、子ども用の小さな椅子に座り膝の上で端末を操作することなどが原因で、「薄暗いので目が疲れる」「子ども用の小さな椅子で前かがみになり、腰に負担がかかる」といった切実な声が寄せられた。

「ほぼ使えない」 世代で割れる評価

なぜ、効率化のために導入されたツールが、現場で必ずしも歓迎されないのか。

20代から60代までの年齢別で見ると、20代の約4割がアプリ導入による時短効果について肯定的に回答したのに対し、50代と60代は肯定的な評価が2割代にまで落ち込んでおり、報告書は「若年層ほどICTを評価し、ベテラン層ほど否定的に受け止める傾向が明らか」と指摘。

特に、指導案や連絡帳の文章作成を補助する「AIの文例提案機能」をめぐっては、評価がくっきりと分かれた。若い世代ほど時短効果を前向きに評価する一方、ベテラン層には「文例はほぼ使えない」「有効だが使うべきではない」という否定的・懐疑的な声が目立った。

こうした背景から、報告書はICTが「業務の一部効率化」には役立つ一方、その効果は限定的で、保育の質の向上や長時間労働の是正には直結していないと総括。そのうえで「根本的な問題は、人員不足を改善しないまま、ICTの導入で解決したことにしようとしている点だ」と踏み込んでいる。

調査を行った東京自治労連保育部会は、保育ICTを専門性を支える補助的なツールと位置づけ直すよう提言。人員配置基準の改善や、記録・準備のための「ノンコンタクトタイム」(子どもと接しない事務時間)の制度化、情報機器作業健診の全保育者への適用、事業者を変える際にデータを移せる「データポータビリティ条項」の義務化などを、国と自治体に求めた。

配信元: 弁護士JP

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