該当するのは、トップモデルが多数所属している、界隈でも3本の指に入るほどの大手プロダクション。私が業界にいた期間は短いけれど、今までそのプロダクションで金銭トラブルが起きた話は聞いたことがなかったため、今回の話を聞いて正直驚いた。

◆AV新法導入前の“取り分ブラックボックス問題”
公になっておらずとも、金銭トラブルで悩むモデルは意外と多い。AV新法導入前は契約書に演者の取り分のみを記載し、総ギャラがいくらかを教えることはなかった。だから、自分の所属する事務所の手取りが全体の何%かを知らないケースも実際にあったという。総ギャラを伝えない理由は様々だが、「所属女優が取り分の高いプロダクションに流れるのを防ぐため」というのも関係する。A社が50%、B社が30%なら給料重視のタイプは確実にA社へ行くだろう。
基本的に女優間でギャラの話題を出すのはNGとされているけど、仲良くなればおカネのタブーに触れてしまいがち。話を聞いた側が「じゃあ私もそっちへ行こうかしら」と移籍を検討し、他で仲良くなった子にも「ウチは50%らしいよ」と勧誘すれば、A社は潤ってもB社は困り果てる。よって当時は総ギャラを伝えず、女優同士で深い仲になるのをあまり推奨していなかったのだ。
現在はAV新法が導入され、契約書に総ギャラと取り分(%)の記載が絶対となった。入念な確認を行えばトラブル防止につながる——。そう期待されていたが、今回のように総ギャラ誤魔化しの疑いがあると、契約書や新法の意味がない。
◆契約書すら存在しなかった“口約束ビジネス”の実態
正直なところ、人気商売のほとんどがギャラや契約書、経費の計算はちょっぴり“ザル”な点は否めない。ちなみに、あくまで個人的な話になるが、私はプロダクションと契約書を交わした記憶がない。多分いつやめても良い存在だったからだろうけど、一筆書くことなく年単位で活動したのである。もちろん撮影に関する誓約書にはいくつもサインをしたけれど、仕事を共にするパートナーとは完全なる口約束だったのだ。
今となっては有り得ない話だけれど、ギャラの未払いやプロダクションへの不満もなかったため、そのまま進んだ。私自身もまぁ適当だが、このようにビデオ業界はAV新法が導入される前は“ザル”な事案が発生していたのである。
もちろんこれらが当たり前とは言わないけれど、当時は小さな事務所でのギャラ未払い→踏み倒しや、病気の検査代が全額女優負担などの話も時折耳にした(※現在は検査代はプロダクションかメーカー支払いが絶対となっている)。

