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桜蔭学園vs.タワマン訴訟「訴え却下」は “敗訴”ではない…今後の展開と学園側がとりうる「次の手段」とは

桜蔭学園vs.タワマン訴訟「訴え却下」は “敗訴”ではない…今後の展開と学園側がとりうる「次の手段」とは

「女子御三家」に数えられる日本有数の名門女子中高である桜蔭学園(東京都文京区)が、隣接地でのタワーマンション建設計画をめぐり、東京都を被告として建設計画の許可処分の差止訴訟を提起したものの、東京地裁により訴え却下の判決が行われた一件が注目を集めている。学園側は今月2日に判決を不服として控訴している。

一部では、この却下判決をもって、あたかも建設計画が事実上容認されたかのような報道も見受けられる。

しかし、その認識は果たして適切といえるか。「却下」という司法判断は、法的にどのような意味を持つのか。今後、どのような展開が考えられるか。また、その際に学園側が取りうる法的手段にはどのようなものが考えられるか。

「許可が出るか否か」には全く影響なし

今回、桜蔭学園が提起した差止訴訟が裁判所に却下されたことは、何を意味するのか。また、都の処分にどのような影響を及ぼすことが考えられるか。

この点について、建築関係紛争に詳しい田渕朋子弁護士は、次のように、裁判所はマンション建設の当否そのものについて、なんら判断を下しておらず、都の処分に一切影響を及ぼさないと解説する。

田渕弁護士:「今回桜蔭学園が求めたのは『処分の差止訴訟』です(行政事件訴訟法3条7項)。

報道されている限りでは、既存の建物を建て替えて建設しようとしているタワーマンション側が、建築基準法や『長期優良住宅の普及の促進に関する法律』に基づき、容積率や高さ制限の緩和を求めて東京都に総合設計許可(※)の申請を行っており、桜蔭学園側がこれに対し、東京都に許可を行わないように求めたものと思われます。

あくまでも、東京都が許可するか否かの判断を示してさえいない段階で、許可を出さないよう求めたものです。

この原告の請求に対し、裁判所は、許可処分が行われたとしてもそれだけでは原告に『重大な損害を生ずるおそれ』が生じるとはいえないとして、却下判決を行いました。これは請求の内容の当否を判断するための要件をみたさないという意味であり、いわゆる『門前払い』です。

被告の東京都に対し『許可を出していい』とも『許可を出してはいけない』とも言ったものではありませんので、マンション建設許可が出るかどうかについては影響がないと考えられます」

※総合設計制度:市街地の環境の整備改善に資すると認められる場合に、特定行政庁の許可により、容積率制限、斜線制限、絶対高さ制限を緩和する制度

差止めの訴えは、行政事件訴訟法37条の4で、処分がされることにより「重大な損害を生ずるおそれ」がある場合に提起できると定められている。

東京地裁(一審)の判決は、この要件を満たさないと判断し、その理由として、「許可処分がされた後に取消訴訟を提起することで救済を受けることができ、建て替え計画の許可自体には重大な損害を生じる恐れがあるとはいえない」と指摘している。

つまり、却下判決は、原告にとって許可処分が行われる前に差し止めなければならないほどの緊急性や必要性はない、という、訴え提起の要件に関する判断を行うものであり、マンション建設の適法性や違法性といった実体的な内容にはまったく踏み込んではいないのである。

学園側が今後とると想定される法的手段と争点

差止訴訟が却下されても、学園側がとりうる法的手段が尽きるわけではない。一審判決の理由中でも言及されている通り、東京都がマンションの建設計画を許可した場合、学園側は次の段階として、その許可処分の取り消しを求める訴訟を提起することなどが可能である。

今後想定される動きについて、田渕弁護士は以下のように指摘する。

田渕弁護士:「許可処分が行われた場合に、学園が許可処分の取消訴訟を提起するとともに処分の執行停止の申立てを行うことや、工事禁止の仮処分の申立てを行うことなどが考えられます」

ここで言及されている「取消訴訟」とは、行政庁が行った処分に不服がある場合に、その取り消しを求める訴訟である(行政事件訴訟法3条2項)。また、「処分の執行停止」とは、取消訴訟の判決が出るまでの間、処分の効力や工事の続行などを一時的に停止させる手続きであり、回復困難な損害を避けるために申し立てられる(同法25条2項)。

仮に取消訴訟が提起された場合、争点はマンション建設許可の適法性・違法性そのものに移る。学園側が主張する擁壁倒壊の危険性や教育環境の悪化といった点が、許可処分を行う上で適切に考慮されたかどうかが、裁判所で審理される中心的なポイントになると考えられる。

考えられる「決着」とは

法的な争いが本格化した場合、どのような決着が考えられるだろうか。田渕弁護士は、許可が行われた場合に処分の取消訴訟が提起されたとして、そこでの争点と決着のパターンについて、次のような見方を示す。

田渕弁護士:「学園側が、マンション建設許可が違法であると主張して争う場合には、学園が主張している擁壁倒壊の危険や教育環境の悪化等が、許可処分の当否の判断においてどの程度取り上げられるべきものなのかがポイントになります。

逆に、マンション建設側としては、擁壁に対する備えがあることを主張する、目隠しを設置するなどで、学園の主張に対応していくとともに、『これだけの配慮をしてくれるのであれば、建設に対して反対しない』という妥協点を探って、和解による決着をするということも考えられます」

司法の場で白黒をつけるだけでなく、建設側が安全対策やプライバシー保護策を具体的に提示し、学園側の懸念を払拭することで、双方が妥協点を見出し、和解に至る道も残されている。本件は、教育機関の環境保全と、都市における開発計画との共存という普遍的な課題を社会に投げかけているといえる。

配信元: 弁護士JP

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