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「殴っても文句ないよな」コンビニ店長が“万引き犯”捕まえ「50万円出せ」と脅迫…被害者が一転、“恐喝犯”になるワケ

「殴っても文句ないよな」コンビニ店長が“万引き犯”捕まえ「50万円出せ」と脅迫…被害者が一転、“恐喝犯”になるワケ

5月末、神奈川県警は、川崎市の登戸駅(JR南武線・小田急線)の近くにあるコンビニの店長を務めていた男を恐喝未遂容疑で逮捕した。

報道によると、店内から食料品を万引きしようとした男性客を事務所に連れていき、「この状況で俺が殴っても文句ないよな」などと言い現金50万円を脅し取ろうとした疑い。

さらに、店長はこれまでにも万引き犯たちから示談金を合計約200万円受け取ってきたと供述している。実際、警察は店舗から示談に関する誓約書を約50枚押収している。

店長の行為が脅迫であるとしても、商品が万引きされそうになるという“被害”が店側に発生していることは確かだ。本件のようなケースでは、刑の重さはどうなるのだろうか。

窃盗の被害者でも恐喝罪が成立する理由は?

まず、恐喝罪(刑法249条)とは「暴行や脅迫で相手を恐れさせて、財物を交付させる」ことにより成立する犯罪である。法定刑は10年以下の拘禁刑であり、窃盗罪(刑法235条、10年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)と比較してより重い罪といえる。

ただし、今回のケースについては、最終的に店長は男性客から50万円を受け取っていないため、未遂犯が成立するにとどまり、刑の減軽の余地がある(刑法43条参照)。

なお、暴行や脅迫の度合いが強くなり、相手方を恐れさせるだけでなく反抗を抑圧する程度に至っている場合には強盗罪(刑法236条1項、5年以上の有期拘禁刑)が成立する。

ただし、冒頭で述べたように、本件ではコンビニ側も「男性客に商品が万引きされそうになる」という「被害」を受けている。この点が、犯罪の成否および量刑判断において、どのように影響することになるか。

そもそも、刑法は、「犯罪行為は誰であろうとやってはいけない」という大前提のうえで、犯罪類型に応じた「構成要件」が定められ、それに該当すれば原則として処罰されるべき行為と扱われる。

そして、例外的に犯罪に該当しない場合として「正当防衛」などが細かい要件のもとに規定されている。

本件では、報道されている事実関係を前提とする限り、店長の行為が正当防衛などの例外に該当するとは考えにくいため、被害者であるかどうかにかかわらず恐喝罪が成立する可能性が高いということだ。

次に、量刑判断に関しては、刑法に詳しい杉山弁護士によると、「行為」「結果」「経緯」という3つの要素をとくに評価したうえで量刑が決定される。

そして、店長が「被害者である」という事実は、本件の量刑判断において、量刑を軽くする方向にも、重くする方向にもはたらき得る。

すなわち、まず、上述の「経緯」として、量刑を軽くする方向で考慮される可能性はある。しかし他方で、被害者であるという状況を利用して、書面や脅し文句を用意したうえで金を脅し取ろうとしたことが「狡猾だ」と捉えられて、量刑を重くする方向にはたらく可能性もある。

過去の示談を取り消すことはできるか

店長は過去にも同様のケースで「示談金」を受け取ったと供述していることが報じられている。もし、これが真実だったとしたら、脅された人は、「示談」の無効を主張して、お金を取り戻すことはできるのだろうか。

杉山弁護士によると、刑法における恐喝行為が存在していたのであれば、民法においても、交渉過程に「詐欺」や「強迫」(※)にあたる行為が介在したと評価され得るため、示談という契約の効力を取り消して、お金を取り返せる可能性はあるという。

※民法上の「詐欺」や「強迫」は、契約を取り消す理由となり得る概念のことであり、刑法上の詐欺罪・恐喝罪とは要件や効果が異なる(民法96条)

「ただし、実際に取り戻そうとするなら、お金を払った側が『交渉時には、詐欺や強迫に該当する事実があった』ということを自ら証明して、裁判で覆さなければなりません。

たとえば、『他の万引き犯との交渉時には恐喝はしたことがない』と店長側が主張した場合には、相手方(万引き犯)は、当時のやり取りを客観的に立証する必要が出てきます。

店長の交渉が恐喝にあたるかどうかが判断されるにあたっては、あくまで、『個々の交渉において実際にどういうやりとりがあったか』という『事実』についての議論と、『それは交渉を超えた脅迫である』とする『評価』の議論が挟まるのです。

そもそも今回のケースについても、当然に『犯罪だった』と言えるわけではないことには注意が必要です。

そのうえで他の被害についても刑事事件として捜査・立件が進んだと仮定すれば、これまでお金を支払った人たちが被害者として当該店長との示談交渉の機会を得られた場合が、支払ったお金を取り戻せる可能性が比較的高い状況といえるかもしれません」(杉山弁護士)

配信元: 弁護士JP

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