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ハラスメントを相談した女性自衛官がなぜか“戒告処分”に。元裁判官が憤る「司法の異常な判断」

ハラスメントを相談した女性自衛官がなぜか“戒告処分”に。元裁判官が憤る「司法の異常な判断」

―[その判決に異議あり!]―

戒告処分を受けた女性防衛事務官が国を相手取り、処分の取消しを求めた訴訟で、東京地裁は原告の請求を棄却する判決を言い渡した。判決は、既婚の上司と性的関係を持ったことは自衛隊法の「隊員たるにふさわしくない行為」に当たるとし、本人が上司に送ったメッセージなどから関係への同意があったと認定した。

“白ブリーフ判事”こと元裁判官の岡口基一氏は、「ハラスメント被害自衛官不当処分判決」について独自の見解を述べる(以下、岡口氏の寄稿)。

◆自衛隊内で被害は訴えられない? ハラスメント訴訟でまさかの……

落ち込む女性
写真はイメージです
 今回紹介するのは、戒告処分を受けた女性自衛官が、その取消しを求めて訴訟を提起したものの、認められなかったという事件である。

 処分の理由は、彼女が10歳以上も年上の既婚者である60代上司と、男性が住む官舎で複数回にわたり性的関係を持ったこと。上司から「妻との婚姻関係はすでに破綻している」と告げられ、女性も次第にこの上司に好意を抱くようになっていったという。

 ところがその後、女性は防衛省のハラスメント相談窓口に駆け込む。これを受け、防衛省は上司を処分するが、このときなぜか、被害を訴え出たはずの女性にまで戒告処分を下したのだ。当然、女性は納得できるはずもない。処分を不服として訴訟を提起したというのが今回の裁判だ。

 裁判所はまず、性的関係を持つことに女性が同意していたのは「明らかである」とした。そのうえで、「同じ職場の自衛隊同士が不貞行為に及ぶことは、現在の健全な社会常識に照らせば、自衛隊が保つべき品位を著しく傷つけるとともに、防衛省・自衛隊に対する国民からの信用を失墜させる行為であることは明らか」だと述べる。さらに、たとえ上司の婚姻関係がすでに破綻していたとしても、自衛隊員としての品位と自衛隊の威信に対する悪影響が直ちに軽減されるものではない、と判断。こうして戒告処分を適法とする判決を下したのだった。

 しかし、この判断には大いに疑問が残る。そもそも上司は、上下関係の厳しい自衛隊で立場を利用し、自身の官舎に年下の部下を連れ込んだ側である。上司が懲戒処分を受けるのは当然だが、いわば犠牲者であるはずの女性まで処分されるのは、本当に妥当なのか。仮に女性が「同意」していたとしても、それは上司と部下という、対等とは言いがたい関係を踏まえて評価されるべきだろう。しかも発覚のきっかけはほかでもない、女性自身がハラスメント窓口に相談したことにある。相談した本人まで処分されるなら、自衛隊では被害を受けても誰も口に出せなくなる。

◆自衛隊への入隊希望者はますます減るだろう

 本欄でも以前触れたが、すでに婚姻関係が破綻した既婚者と性的関係を持っても、不法行為には当たらない。それは自衛隊員であっても変わらないはずだ。一般市民であれば完全に適法な行為を、自衛隊員が私生活においてしたにすぎない。それなのに戒告が相当だという裁判所の判断は、まったく理解できない。

 そもそも「戒告」は、過料や免職などと違い、現実的な不利益のほとんどない処分。しかし、だからといって気軽に「処分は相当」と判断してしまうのは、大間違いだ。軽かろうと懲戒処分であることに変わりはなく、現に俺自身、戒告処分を受けたという事実を、その後も何度となく不利益に利用されてきた。

 こんな判決がまかり通れば、自衛隊への入隊希望者はますます減るだろう。なにしろ隊員になった途端、一般国民なら何ら問題にならない行為まで、「品位や威信への悪影響」として処分されてしまうのだから。自衛隊員の私生活における自由は、一般国民よりも制限されている――。つまりプライベートな時間においてきわめて不自由な存在なのだと、裁判所自らが宣言してしまったのである。

<文/岡口基一>

―[その判決に異議あり!]―

【岡口基一】
おかぐち・きいち◎元裁判官 1966年生まれ、東大法学部卒。1991年に司法試験合格。大阪・東京・仙台高裁などで判事を務める。旧Twitterを通じて実名で情報発信を続けていたが、「これからも、エ ロ エ ロ ツイートがんばるね」といった発言や上半身裸に白ブリーフ一丁の自身の画像を投稿し物議を醸す。その後、あるツイートを巡って弾劾裁判にかけられ、制度開始以来8人目の罷免となった。著書『要件事実マニュアル』は法曹界のロングセラー
配信元: 日刊SPA!

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