神奈川県川崎市内の運河で8年放置されていた遊覧船について、市が撤去作業を始め、ネット上で関心が高まっている。

船の装飾はくすみ、船体が傾き、沈みかけているようにも見える。舳先で右手を上げる人の像やマスト上の見張り台が、在りし日の面影を伝えていた。
婚活やハロウィンのイベントなども行われていた
この船が「海賊船アニバーサリークルーズ号」で、2013年から東京湾などを巡る遊覧船として使われていたという。
しかし、報道によると、18年10月ごろから工場前の船着き場で放置され、市が遊覧船の使用は許可していないとして、度々撤去などを求めていた。しかし、船の所有者側は、資金がないなどとして、応じていなかった。
25年2月には、強風などで1階部分が水没し、船が傾いてしまった。市では、26年6月8日、所有者らを港湾法違反の罪で川崎海上保安署に刑事告発するとともに、台風シーズンを前に危険だとして、17日に撤去の行政代執行に踏み切った。撤去費用3300万円超は、所有者らに請求するという。
この遊覧船は、1997年に造られ、三重県内の志摩スペイン村などで運航していた。07年からは、神戸市内で「ヴィラジオ・イタリア号」として運航を始めた。船内には、フラメンコを踊る女性の像やドン・キホーテを描いた壁画などが飾られ、海賊ショーなども企画されていたという。
ところが、運航会社の経営悪化から12年に入って運航がストップし、1年にわたって神戸港に放置された。神戸市が係船料の滞納を回収するために一時公売にかけたが、13年3月に東京都内の男性経営者が船を買い取っていた。
この経営者は、アニバーサリークルーズ号の運航会社「フィンセールマリン」(東京都中央区)のCEOとみられ、その後、同社は、東京湾などで遊覧船として運航していた。千葉や横浜などで不定期に運航し、婚活やハロウィンのイベントなども行われていたようだ。
では、なぜ川崎市内の運河で長年放置される状態になってしまったのだろうか。
「工場の敷地内を通るため、船への出入りはできなかった」
この点について、川崎市の港湾管理課は6月18日、J-CASTニュースの取材に対し、こう推測した。
「所有者の方などは、他の港に船を動かそうとしたり、売却しようとしたりしたが、話がまとまらなかったようです。船の運航会社は、商業登記簿上でその存在を確認しており、撤去をお願いする書類を送っていますが、反応はありません」
船の所有は、フィンセールマリンのCEOが買い取った翌年の14年3月には、個人の男性に売却された。そして、この男性が亡くなった後、20年7月に子どもが相続し、市では、子どもの代理人を通じて連絡を取っている。
アニバーサリークルーズ号については、今回の船着き場に来てからも、遊覧船として運航していたとX上で情報がいくつか出ている。港湾管理課でも、横浜や東京などで船の目撃があったとの情報は聞いているという。その後、何らかの事情で、運航もなくなったようだ。
船撤去のニュースが流れ、ネット上では、「いよいよ終焉か」などと往年の姿を懐かしむ声も漏れている。放置されていた8年で、船への出入りなどはなかったのだろうか。
「船に入るには、工場の敷地内を通るため、出入りできなかったと思います。海からの侵入についても、そうした情報はありません。船内は、長年放置されたため、水漏れがあり、かなり傷んでいました。観光名所になっていたとの認識はなく、特段意見などは来ていません」
(J-CASTニュース編集部 野口博之)