先日、ある配信者の男性が自身のXアカウントに「10歳息子、ソシャゲに385万円課金する」と投稿し、話題を呼んだ。
投稿によれば、男性が5月16日にクレジットカードの請求額を確認すると、不自然に高額な請求が発生していることに気付いた。利用履歴を調べたところ、4月初旬から5月13日までの約1か月の間に、合計約385万円がソーシャルゲームに課金されていたことが判明したという。
男性が使用していたスマートフォンでは、子どもの課金やアプリ利用を制限するためのペアレンタルコントロール(保護者が端末の利用制限や課金制限を設定できる機能)が外れてしまっており、10歳の息子が自由に決済できる状態になっていた。
Xでは本件について「リアル血の気が引いた」「こわっ。うちも気をつけないと」などのコメントが寄せられている。
スマートフォンやタブレットが身近になった今、未成年の子どもによる高額課金は、どの家庭でも決して他人事ではない。では、今回のように子どもが保護者に無断でゲームに課金した場合、「子どもがやったことだから」として支払いを拒否したり、返金を求めたりすることはできるのだろうか。民法に詳しい雨宮知希弁護士に聞いた。
親の同意のない課金は取り消せる可能性
そもそも、ソーシャルゲームの「課金」は法律上、ゲーム内のアイテムや通貨などを買うための「契約」と位置付けられる。
そして、未成年者が親(保護者)の同意なくこうした契約をした場合、原則として「未成年者取消権」(民法5条)で取り消すことができるという。
「成人年齢は18歳であるため、10歳の子どもは未成年者取消権の対象です。取り消せば契約はなかったことになり、支払ったお金の返還を求められます。
さらに、年齢がかなり低い場合には、『そもそも課金の意味を理解できる判断能力がなかった(意思能力の不存在)ので契約は無効だ』と主張できる余地があります。
一般に、子どもの年齢が低いほど、未成年者取消権の行使や契約の無効を主張する側にとって有利に働きやすいと考えられます」(雨宮弁護士)
返金を求める手順としては、まず、カード会社の明細から決済先(AppleやGoogleなど)を特定して、そのプラットフォームに「子どもの課金だ」と申し出て返金を申請する。もしプラットフォームが返金に応じなければ、ゲーム会社に取消しを求める……という流れが一般的だ。
子どもが「成人だ」と偽っていた場合は…
冒頭に記したように、男性のスマートフォンではペアレンタルコントロールの機能が外れていたという。
雨宮弁護士によると、「親がクレジットカードの情報を端末に登録しており、子どもがそれを自由に利用できる状態だった」など保護者側に過失がある場合でも、それだけで取消権が消えるわけではない。
注意が必要なのは、「詐術」(民法21条)に該当する場合だ。たとえば、子どもが「自分は成人だ」と偽って課金した場合には、取消権が消える可能性がある。
「本件のように子どもの年齢が10歳というケースであれば、単に『あなたは18歳以上ですか?』などのメッセージが表示され、それに対して形式的にボタンを押しただけでは『嘘をついた』と評価されにくい傾向があります。
ただし、年齢確認画面の表示方法や警告の内容など、具体的な画面設計も含めて総合的に判断される点には注意が必要です。
たとえば自分の年齢について聞かれて『18歳以上である』というボタンを選んで課金した場合には、取り消しが認められないことも考えられます」(雨宮弁護士)
次に、子どもが自由に課金できる状態であった場合、いざ返金を求める際に「親ではなく子どもが課金した」という事実を立証することが難しくなる、という問題が発生する。
「親のアカウントにログインしたままであり、クレジットカードの情報も登録済みのスマホを子どもが操作できる状況であった場合、事業者側からすれば子どもが課金したのか親自身が課金したのか区別がつきにくく、返金を渋られる可能性が高まってしまいます」(雨宮弁護士)
逆に、以下のような事情が複数存在する場合には、事業者から返金を受けられる可能性は高くなる。
- 子ども自身が課金の事実を認めている
- ゲームプレイの記録から「子どもが操作した」という事実を示せる
- 子どもが嘘をついていなかった
- 子どもが実際に親に請求が行われている事実を知らず、無料だと誤認していた
- 短期間に課金が集中している
「子どもの課金に気が付いたら、望ましい対応は、すぐに事業者に連絡するとともに、消費生活センター(消費者ホットライン、電話番号は188)にも相談し、今後の対応について助言やあっせんを受けることです。
その際に重要なのは、決済メールや利用明細、ゲーム内の履歴などの証拠をできるだけ残しておくことです」(雨宮弁護士)
予防するための対策は?
契約を取り消せる可能性があるとしても、子どもが勝手に高額課金するという事態は、未然に防ぐにこしたことはない。保護者にはどのような対策がとれるだろうか。
雨宮弁護士によると、最大の対策は、そもそも子どもが手に取れるスマートフォンなどの端末にクレジットカード情報を登録しないことだ。ゲームやアプリなどで課金が必要になった場合にも、コンビニなどで購入できるプリぺイドカードを購入することで、望まない高額課金を防ぐことができる。
また、ペアレンタルコントロールを含む、OS(オペレーティングシステム)の管理機能を活用することもできる。具体的には、Apple(iPhoneなど)なら「ファミリー共有」、Google(Androidなど)なら「ファミリーリンク」を用いることで、課金を親の承認制にできる。
決済時にパスワードや指紋・顔認証を毎回求める設定にしておくことも有効な対策となる。さらに、キャリア決済に上限を設定する、決済完了メールや毎月の明細を常にチェックするなどして、不自然な課金があった場合にはすぐに気付ける体制を整えておくことも重要だろう。
「子ども専用アカウントを作るのも有効な対策となります。なお、年齢によっては子ども本人が単独でアカウントを作成できないサービスもあるため、その場合には保護者が各サービスの利用規約に従って作成・管理する必要があります。
そして、『ログインしている状態の自分のスマホを、子どもが手に取れないようにする』『課金のルールを、子どもと話し合って決めておく』といった日常的な工夫をしておくことで、家庭内における課金トラブルを予防しやすくなるでしょう」(雨宮弁護士)

