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“無実の罪”で懲戒解雇→自死 元勤務先に約8300万円賠償命令も遺族憤慨「本当は倒産してほしい」…背景に会社側の“判決直前”控訴取り下げ

“無実の罪”で懲戒解雇→自死 元勤務先に約8300万円賠償命令も遺族憤慨「本当は倒産してほしい」…背景に会社側の“判決直前”控訴取り下げ

葬儀会社の社員だった男性・Aさん(当時51歳)が、同僚従業員による会社の金銭詐取事件に関与したとして懲戒解雇された後、自死した――。

男性の妻と3人の子が、勤務先だった葬儀会社「おおの」(栃木県鹿沼市)に約1億80万円の損害賠償を求めた訴訟で、会社側は5月27日に予定されていた東京高裁の控訴審判決を前に控訴を取り下げた(取り下げは25日付で26日までに送付された)。

これにより、会社側に約8300万円の支払いを命じた1審・宇都宮地裁判決が同日付で確定。Aさんの遺族と代理人弁護士が6月18日、東京都内で会見を開いた。

Aさんの妻は「1審判決を待ち望んでいたのに、前日になって取り下げられたことに、ものすごい怒りを感じる」と述べ、長男も「とにかく誠意のない行動に強い憤りを感じる。裁判には勝ったが、虚しさが残っている」と話した。

詐取事件の共犯と決めつけ懲戒解雇

Aさんは2010年11月、葬儀会社「おおの」に入社。ギフト部の責任者として、葬家への引き物の管理業務などに従事していた。1審判決によれば、2019年1月下旬から4月にかけて、月100時間前後の時間外労働をこなしていたとされる。

同社では2017年頃から、別の従業員Xが葬家への引き物買取りを装い、会社事務員から買取り費用名目で金員を詐取していた事件が発覚。

当時の代表取締役Yは、Xに指示して、Aさんに引き物を渡したかのような引取書を作成させた。さらにAさんがこの詐取事件に関与していたと決めつけ、Aさん自身にも「税務署がサインがないと困ると言ったので」などと説明し、引取書への署名を求めた。Aさんは引取書の意味を精査することなく署名したとされる。

2019年4月24日、Yは警察から要請がなかったにもかかわらず、Aさんに警察署への出頭を指示。Aさんが取り調べで詐取への関与を否定したと知ると、警察署の駐車場で「お前が選んだことだからどうなっても知らない」などと怒鳴りつけた。

翌25日、Yらは本社事務所でAさんとの面談を実施。詐取への関与をめぐり口論となった末、YはAさんに口頭で懲戒解雇を通告した。

同年8月21日、Aさんが死亡しているのが見つかった。遺されたメモには「葬儀はしないでください」「会社に言いたいことはいっぱいあるけど面倒くさい」と書かれていた。

地裁「Aさんは詐取事件に関与していない」と判断

会見で代理人の松森美穂(みほ)弁護士は、訴訟前の手続きで、Aさんが引取書に署名した場面を録画したCDを会社側が遺族側に提出した経緯を説明。「会社側が提出したCDは音声が消されており、しかも映像の3か所がカットされていた」と明かした。

CDの音声は遺族側の親族が復元。再生したところ、YがAさんに「特別なことは何もない」「日にちだけ入れておいてもらえる」などと説明して署名させていた場面が確認された。1審・宇都宮地裁は、Aさんは詐取事件に関与しておらず、引取書への署名は「Yに言われるがまま記載したにすぎない」と判断。

Aさんは遅くとも2019年8月上旬頃にうつ病エピソード(うつ病の医学的分類の一つ)を発症して自殺に至ったとして、Yの過失との「相当因果関係」(法的に責任を負わせるべき相当な因果関係)を認め、会社側に対し、妻に3015万8604円、3人の子にそれぞれ1756万0687円を支払うよう命じた。

会社側はこれを不服として東京高裁に控訴。控訴審でも「Aさんが犯人である」との主張を続けたが、判決を翌日に控えた5月26日、突如として控訴を取り下げた。

松森弁護士は控訴取り下げの理由について「判決が出てまた(裁判で)負けるのを嫌がったということだと思う」と推測した。

遺族「会社に倒産してほしいのが正直な思い」

会見によれば、賠償金約8283万円は判決確定から約2週間後の6月12日、保険会社を通じて支払われた。会社側からの謝罪はなく、訴訟費用も未払いだという。

松森弁護士は本件について「犯罪行為をしていない人に『あなたが犯人だ』と言い、仕事を失わせた事件だ」とした上で次のようにコメント。

「こんなことをしたら人が死んでしまう可能性が高いという当たり前のことを、当時の社長はやってしまった。今の時代にまだこんな会社があるのかと思う」

なお、原告側によると、Aさんを懲戒解雇したYは、その後代表取締役を退任しているが、理由は明らかになっていないという。

会見に出席した原告の妻は、被告側がAさんを犯人扱いし続けた点を挙げ、「1審で動画の異常が認められたにもかかわらず、控訴し、再び夫が犯人だと主張してきた。警察が何を言おうと、裁判官が何を言おうと、聞かない社長だと分かった」と話し、以下のように続けた。

「社長(Y)に何を言っても通じなかったのだと思うと、本当に主人(Aさん)がかわいそうだ。今日はこの事件を世間に公表し、二度とこのようなことが起きないようにするために会見に出席しました」

また、長男も「お金をもらったところで、父は戻らないし、何も埋められない。本当は会社に倒産してほしいというのが正直な思いで、深く反省してほしい」と述べた。

なお「おおの」の代理人は弁護士JPニュース編集部の取材に対し次のようにコメントした。

「1審判決の内容は当社の主張と乖離しており、最後まで争うことも検討しましたが、元従業員の方が亡くなられていること、解決までさらに時間を要する見込みであること、控訴審判決の報道に対する反響への対応が困難であることから、控訴を取り下げる決断をしました」

配信元: 弁護士JP

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