日本の株式相場において、AIが主役になった1日と例えられるでしょうか。2026年6月1日、ソフトバンクはトヨタ自動車を抜き、時価総額が日本国内トップに躍り出ました。時価総額は「発行済株式総数×取引株価」において計算します。まさに世界中で同社の株式が求められている証明と言えます。数日でトップの座は変わったものの、なぜ今回このような首位交代劇が発生したのでしょうか。
時価総額上位にはAI関連が並ぶ
ソフトバンクだけではありません。以下は最新の「日本株における時価総額上位ランキング」です(時価総額は2026年6月5日18:40現在)。この時価総額トップ10を見れば世代が解ると言われているように、時代の趨勢を表す会社名が並びます。とはいえ長く不動の1位は、日本を代表する自動車メーカーであるトヨタ自動車でした。
各種公開資料から筆者作成
上記表でソフトバンクが1位ではない理由は、キオクシアを含めた上位3社の時価総額が常に変動し、順位が入れ替わっていることが原因です。また上位10社にはAI・半導体関連がソフトバンクを含めて4社と、個別株の評価においてもAIの時代が到来していることを実感します。
AIに「振り切る」ソフトバンク
ソフトバンクの事業内容を見ると、AIに振り切っていることが解ります。巨額出資するOpenAIは近々の上場が確実視され、同社に大きな利益をもたらすことは間違いありません。また子会社のArm(アーム)の企業価値が上昇するなど、好材料が重なりました。アメリカのトランプ大統領が外遊などでビジネスを仕掛ける時に、ソフトバンクの孫正義会長が同席している報道を見た人も多いでしょう。つまり、AIへの投資会社として同社は数多くの場面に「絡んで」いるのです。これはソフトバンクが「関わりたい」と考えて実現できるものではありません。世界中の経済界からの信頼度や人脈、実績が蓄積したことによるものです。
「日本版マグ7」の構築か
アメリカでは「マグニフィセント・セブン(マグ7)」というハイテク・半導体企業の集合体が注目されています。アメリカの株式相場を牽引する7社を総称して、名付けられたものです。なお、マグ7という名前はハリウッド映画が元々の出典です。日本において今回の首位交代は、まさに「日本版マグ7」が構成されるきっかけになるのではないでしょうか。Google(ALPHABET)やAppleなどAIの開発会社が多いアメリカに対して、日本はアドバンテストなどAI周辺の企業が存在感を放っています。そして、もうひとつ目立つのが「投資会社」です。
ソフトバンクは「投資会社」
ソフトバンクはスマートフォン(携帯電話)の会社では?と捉えている人も多いでしょう。CMに出ている北海道犬は有名ですが、同社は既に投資の会社なのです。
そして上位10社に金融機関があることも注目点です。ソフトバンクのような事業投資型ではないですが、金融機関として融資・出資を進めることで利益を得ています。少し大袈裟かもしれませんが、日本という国が「投資会社で展開する」ことにおいて適性があるのかもしれませんね。
半導体・ハイテク企業と、投資会社がこれからの日本を牽引する。今回の時価総額の首位交代は、新潮流のスタートと称することができるでしょう。戦後の日本を牽引したトヨタ自動車を、あらたな潮流の代表会社であるソフトバンクが抜く。とても印象的な出来事だったと捉えることができます。
ASIの実現を目指す
ソフトバンクが目指すのは、AGI(汎用人工知能)のさらに先、ASI(人工超知能)の実現です。ASIのNo.1プラットフォーマーを目指す、と孫会長は宣言しています。OpenAI、Armへの投資はこの目標に向けての確実な推進であり、さらに期待値は高まるでしょう。
一方の不安要素もないわけではありません。日本・アメリカともにAI領域の株は世界中の注目を集め、資金が集まっています。ただ、その過熱感はバブルと表裏一体です。売上・利益という財務諸表ではなく、世界を変える企業としての「期待値」が高い株価を構成していきました。
2026年に入り関連企業の決算を迎えるたびに「今度は大丈夫か?」という警戒感が広がりましたが、今のところ各社は好決算で懸念を打ち消し続けています。ソフトバンクは四半期による売上の増減も著しい会社なので、相場への印象が懸念される向きはあります。その一方で、同社の投資家は独特であり、口語的な言い方をすると「そんなのは慣れているから大丈夫」という反応になる可能性も十分にあるでしょう。
いずれにしても、日本の時価総額のトップが変わったのはとても印象的です。時代は常に動いていると表現することができるニュースです。