“外務省のラスプーチン”と呼ばれた諜報のプロが、その経験をもとに読者の悩みに答える! 今回は反差別活動家が暴力や醜聞に染まっていく理由についての相談。佐藤優が自らの学生活動家時代の経験も交えて答える。
◆なぜ反体制派の活動家は過激になるのか……?
★相談者★ピーガイ(ペンネーム)会社員 59歳 男性参政党、自民党、維新の会に反差別カウンターと称される旧「しばき隊」、現C.R.A.C.(対レイシスト行動集団)が選挙妨害まがいのカウンターを行い、昨年、オレンジ色の帽子を被っていただけで参政党支持者と勘違いされて肋骨を折られる事件が起きました。差別が許されないのは当然ですが、どうして活動家は人が豹変してしまうのでしょうか? しんぶん赤旗で紹介されるほど地道に文学を愛し反差別活動をしていたおとなしい青年が、突然サングラスに無精ひげでいかついバイクで演説会場に乗りつけ、大声を出し半グレのように振る舞っています。カウンター組織内では内外ゲバ、カネ、オンナ、セックスのトラブルなど醜聞が発覚しました。それと共産党は彼らと親しくしていると言われているようですが、党が公安監視対象なのに不用心すぎませんか?

◆佐藤優の回答
私は同志社大学神学部と大学院に在学していた頃、新左翼系自治会のシンパとして活動していました。あの頃の新左翼は、共産党とその下部組織の日本民主青年同盟(民青)と激しく対立していました。表面上、共産党も民青も「暴力反対」を訴えていましたが、「暴力反対!」と書いた連中のプラカードからは釘が飛び出していて、それで殴りかかってくるのです。新左翼は、民青とどのようないさかいがあっても、警察に訴えたりはしません。他方、民青は同志社大学学友会(自治会やサークルの連合体)が物理力を行使すると、警察に訴える「告訴戦術」を取ることがありました。私が共産党の活動家に「革命を建前にしているのに権力に泣きつくのは、どういうことだ」と尋ねると、「権力の革命的利用だ」と答えました。共産党の陰湿さは今も変わっていません。ただし、過激なカウンター組織と共産党が連携することはありません。この点に関して、あなたは事実を誤認しています。
ドイツの政治哲学者カール・シュミットは、政治において重要なのは、敵と味方を峻別し、中間的な領域をつくらないことであると説いています。理論的には敵が正しく、味方が間違っていて、敵が美しく、味方が醜く、敵が清廉潔白で味方が卑劣な場合もあります。しかし、実際の政争においては、敵は間違っていて、醜く、卑劣だというプロパガンダを展開した者が勝ちます。政争で勝利する秘訣は単純化なのです。トランプ米大統領を見ると、この人には物事を単純化する天才的な能力が備わっていることがわかります。
差別に反対することは、確かに重要です。しかし、そういう運動をする人たちの中から「自分たちに賛同して運動に参加しない者は、自覚的であるか、無自覚であるかにかかわりなく、すべて差別者だ」と論理を飛躍させる人が必ず出てきます。
ジャーナリストの池上彰氏は、〈閉ざされた空間、人問関係の中で同じ理論集団が議論していれば、より過激なことを言うやつが勝つに決まっている〉(『激動 日本左翼史 学生運動と過激派 1960~1972』260頁)と指摘します。逆に言うと、自らの価値観と異なる人に異議申し立てを行う組織でも、その組織が外部に対して開かれていれば、暴力沙汰やカネ、セックス絡みのトラブルは起きにくくなります。
重要なのは、絶対に正しいと考える事柄でも、ほかの人には別の考えがあるという認識を持つことです。絶対に正しいものはある。ただし、それは複数あるという現実を理解する必要があります。
★今週の教訓……閉ざされた関係性では、過激な言動が勝つ

―[佐藤優のインテリジェンス人生相談]―
【佐藤優】
’60年生まれ。’85年に同志社大学大学院神学研究科を修了し、外務省入省。在英、在ロ大使館に勤務後、本省国際情報局分析第一課で主任分析官として活躍。’02年に背任容疑で逮捕。『国家の罠』『「ズルさ」のすすめ』『人生の極意』など著書多数

