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大阪万博の象徴だった「大屋根リング」保存に問題山積。すでに腐食が始まっている部分も…財源すら「未定」

大阪万博の象徴だった「大屋根リング」保存に問題山積。すでに腐食が始まっている部分も…財源すら「未定」

世界最大の木造建築としてギネス認定された大阪・関西万博の「大屋根リング」。閉幕を前に保存論争に一応の決着をみたが、市民と専門家の声、そして政治と利権が交錯し、多くの火種が残されていた――。

部分保存でも問題山積! IR利権も絡み混乱

大阪万博[大屋根リング]保存論争
保存決定したのは夢洲駅向いの北東200m部分。周辺は公園として整備される予定だ
 万博の象徴だった「大屋根リング」は、その保存方法をめぐり紆余曲折をたどってきた。

 検討段階では、丸ごと残す「全体保存案」、解体して部材を再利用する「全面リユース案」、北東部分だけを切り出して残す「200m部分保存案」の3つが主なシナリオとして示されていた。

 そして9月16日、万博協会と大阪市は最終的に200m部分保存を選択。周辺を「公園・緑地等」として整備する方針を発表した。

 世界最大の木造建築としてギネス認定を受けた巨大建造物は、その全貌を未来に伝えることなく、“切り取られた象徴”として存続することになった。

 大阪市都市計画局は「市民から『できる限り原形に近い形で残してほしい』との要望が多かった」と説明する。しかし、この決定は専門家の目には“多くの課題を残した中途半端な選択”と映っているようだ。

◆“太陽の塔”のようなポテンシャルはあるのか

大阪万博[大屋根リング]保存論争
LAまちづくり研究所所長・増田 昇氏
「『多様な文化を縁(リンク)で包む』という設計思想からすれば全体保存が原則。1970年に開催された大阪万博の太陽の塔のようにシンボル化したいのならなおさらです」

 そう語るのはランドスケープの専門家・増田昇氏。全体保存については民間で署名運動が行われ、関西7大学の理事・学長らが共同声明を出すなど要望が高まっていた。

 しかし、大屋根リングはそもそも半年間の万博開催を前提に建てられており、長期使用は想定されていなかったため、維持コストの問題などから“妥協案”として現状に収まったという見方が強い。

「部分保存するならば、ただ切り出すのではなく、風景の最適解を見いださなければならない。しかも、市民にとっての魅力と価値は“リングに上れるかどうか”に尽きる。会場全体や大阪湾・瀬戸内海を俯瞰する体験がコアにならなければ、残す意味は半減します。さらに、それが楽しいものでなければならない。そのためには、今の規模の『静けさの森』だけでは迫力が不足するので、パビリオン撤去後の空白を先行緑化する必要もあるでしょう」(同)

◆材質の経年劣化と、IR計画も足かせに

大阪万博[大屋根リング]保存論争
大屋根リングの木材はすでに腐食が始まっている部分があるという。これを恒久保存できるかが鍵
 大阪市都市計画局は200m保存でも、「人が上れる形で残すことが必要」としている。しかし、シビアな技術的問題も横たわる。木材に詳しい森林ジャーナリストの田中淳夫氏は、こう指摘する。

「木材表面の黒ずみやカビはすでに出始めていますし、懸念は大きく2つあります。一つは集成材やCLTに不可避な接着層の経年劣化であり、海風・雨・紫外線などが加わる海辺環境では進行が加速する。もう一つは金属接合部の腐食です。ここが劣化すると安全余裕度は一気に低下します」

 恒久保存を選ぶなら、防火・耐震・耐候の全基準を満たすために解体・再施工レベルの工事が不可避になる。

「約90億円という部分保存費用は、改修と10年分の維持費を束ねた試算にすぎません。恒久保存をうたうなら、数十年ごとに大規模補修が必要になる。中途半端な延命を繰り返せば、結局“見栄えが悪くなったから解体”という議論に戻るリスクがあります」(同)

 つまり、残すなら徹底的にカネをかける覚悟が、壊すなら一切未練を残さない潔さが求められるのだ。

配信元: 日刊SPA!

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