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大阪万博の象徴だった「大屋根リング」保存に問題山積。すでに腐食が始まっている部分も…財源すら「未定」

大阪万博の象徴だった「大屋根リング」保存に問題山積。すでに腐食が始まっている部分も…財源すら「未定」

◆なおも解決しないままの未払い問題

大阪万博[大屋根リング]保存論争
 だが現状、財源は「未定」。大阪市都市計画局によると万博剰余金、国の交付金、大阪府、大阪市の負担、企業協力金などが挙げられているが、市民負担の可能性も排除されていないという。

 そうなると、「果たして残すべきか」という議論に直面するのは必至だ。

 さらに議論を複雑にしているのが、跡地に予定される統合型リゾート(IR)計画との関係だ。

「正直どうでもいいんですが、IR批判派が保存を推奨していて、IR寄りは全撤去を唱えている。保存場所はサーキット建設予定地と重なり、工事計画に支障が出るからです」

 こう吐き捨てるのは、いまだ万博パビリオン建設代金の未払いを抱える建設業者だ。

「そもそも同業者は皆、未払いも解決していないのに保存に予算を回すとは何事かと憤っています。我々は明日にでも首をくくるかもしれない状況なんですから」

 文化遺産の保存論争が、IR利権をめぐる代理戦争へと姿を変えつつある状況だ。

 理念と現実、政治と利権が入り乱れ、出口への道のりは霧の中。大屋根リングはレガシーとなれるのか、それとも負の遺産となるのか。

◆全体保存案には「総合介護医療施設」構想も

大阪万博[大屋根リング]保存論争
完成予想図。家族が訪問しやすいよう娯楽施設も併設
 全体保存を望む声も根強いなか、万博跡地を医療・介護・リハビリ・生活支援・娯楽を一体化した「大規模ケアキャンパス」案も注目を集めている。発起人で精神科医の東徹氏は、構想のきっかけを次のように話す。

「医療従事者として長年感じてきた問題意識が根底にあります。今の地域包括ケアは分散を前提にしており、病院、介護施設、在宅支援がそれぞれ連携が取れておらず、救急や介護の現場では“本来は救急でない搬送”や、施設間のたらい回しが日常化している。人も時間も疲弊しているのです」

 すべての医療支援機能を一つのキャンパスに重層配置する仕組みは、そうした構造的に非効率な現状の解決策になりうる。

「病院と介護施設が近接していれば、必要時には数分で連携できる」

 また、利用者の幅を最初から織り込んでいる点も特徴だ。特養のような公的負担主体の層から、有料老人ホームやサービス付き高齢者向け住宅など自費を含む層まで、要介護度やニーズに応じて段階的に居住・支援を選べる。

 さらに最上階には富裕層向けの高付加価値フロアを設け、その収益を他階層の費用補塡に回す仕組みを描く。

 200m保存案も覆らないとは限らず、大屋根リング問題にはさまざまな可能性が残されている。

配信元: 日刊SPA!

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