
AIの台頭、70歳までの継続雇用──。昨今、中高年を取り巻く労働環境の厳しさは増すばかりです。変化の激しい時代を乗り切るため「リスキリング」の必要性を感じつつも、「もう年だから、記憶力が……」と、一歩を踏み出せないでいる人も多いのではないでしょうか。後藤宗明氏による著書『中高年リスキリング』(朝日新聞出版)より、リスキリング開始前に見直すべき習慣についてみていきます。
「物覚えが悪い」は年齢のせいだけではない
リスキリングのお話をしている中、よくご相談いただくのが記憶力や集中力のお話です。「大学受験の頃は何でも覚えられたのになぁ」とおっしゃる方もたくさんいます。そこで、私が効果を実感した、記憶力と集中力を高めるための習慣についてご紹介します。
例えば、社会人になってから物覚えが悪いと多くの人がおっしゃる理由の一つには、アルコールとの関係があるのではないでしょうか。実は、年齢のせいだけではないのではないか、と一度疑ってみてほしいのです。
例えば、大学受験中にお酒を飲みながら勉強していた、という人はどれくらいいるでしょうか? 受験生が18歳、19歳くらいだとすると、当然いないわけです。
「アルコール」が加齢による記憶・学習低下を促進する
私の場合、2020年、新型コロナウイルス感染症による緊急事態宣言下でリモートワークが始まり、ある日ふと気づいたことがありました。それは「記憶力がよくなっているのでは?」ということでした。別に記憶力を高めるトレーニングをしたわけでもないので、何か生活の中で変わったことはないか、と思い返してみると、アルコールを全く飲まなくなっていたことに気づきました。
緊急事態宣言が始まり、友人たちと夜の時間帯に外食をすることも全くなくなり、夜中には欧米の国際会議にオンラインで毎日参加するという生活をしていたので、いわゆる寝酒的なこともしなくなっていたのです。
そこで調べてみると、厚生労働省のホームページには、「アルコールが加齢による記憶・学習低下を促進することが動物実験では証明されています」と書かれており、自分の場合は当てはまっているなと感じました。
アルコール摂取の1週間後、「部分的な記憶喪失」に!?
ある実験では、アルコールが眠りによる学習効果も阻害するという結果が出ています。
新しい言語の文法を学んだ後、初日にアルコールを摂取したグループは、1週間後には「部分的な記憶喪失」とでも呼べる状態になり、覚えたことの半分を忘れていたそうです。また、初日と2日目は熟睡し、3日目の夜にアルコールを摂取したグループも、覚えたことの40%を忘れていたとのことです。
リスキリングを開始してせっかく学習したのに記憶が定着しないといった事態を避けるためにも、少なくとも集中してリスキリングに取り組む期間はお酒を控える習慣をぜひ身につけていただきたいと思います。
