「もう両親2人で暮らすのは難しい」…ケアマネジャーの勧めで、施設に入れることに
やがて、父親は要介護4、母親は要介護3という認定結果が出た。
さらに父親は、前頭側頭型認知症の一つである「ピック病」であることがわかる。「ピック病」は、感情の急激な変化や反社会的な行動をとる症状があらわれ、人格が変わってしまったようになる病気だ。父親は火傷の後遺症がひどく、歩けるようになるには相当なリハビリが必要だと想定されたが、リハビリをすること自体が難しく、ほとんど寝たきりになってしまった。
担当のケアマネジャーから「もう両親2人で暮らすのは難しい」と言われ、施設への入所を勧められた櫻木さんは、夫婦で入所することができる施設を探し、約5ヶ月後に入所させた。
約20年もの間実家に帰らず、両親を放置した自分を責めた櫻木さんは、2週間に1度は施設に顔を出し、両親との時間を大切にするようになった。
親と折り合いが悪くても…「後悔しない選択」のために子世代がすべきこと
親と折り合いが悪く、大人になってから距離を置くようになる子ども世代は少なくない。
それ自体は仕方のないことではあるが、もしも親に介護が必要な状況になったり、病気や怪我をしてしまった時、親と距離を置いていた自分を責める可能性があるなら、親が定年退職したり、前期高齢者入りしたりしたきっかけで、一度連絡を取ってみることをお勧めしたい。
親子の間には長い歴史があり、複雑な感情が絡み合う。それでも、「親だけでなく、自分自身と向き合う」「自分が後悔しない選択をする」。こうした考え方にシフトすることが、高齢の親を持つ子ども世代が、その後の人生をなるべくラクに生きるヒントではないだろうか。
櫻木さんは、20年以上も実家に帰省しなかったために、親が2人とも認知症になってから実家を片付けることになってしまった。認知症を患い、84歳という高齢の両親にはもう、実家の荷物を片付けることは難しいだろう。両親はまだ存命だが、実質櫻木さん1人で片付けることになり、生前整理とは言い難い状況になってしまった。
旦木 瑞穂
ノンフィクションライター/グラフィックデザイナー
