◆“当事者”に向けて伝えたいことは…

ササヤマメリー:私自身、社会から長いこと隔絶され、「それでいいんだ」と気楽さすら感じていました。あのとき友人が猫のかぶりものを作ってくれなかったら、今でも同じ生活だったかもしれません。人生、今はどん底だとしても、冬がやがて春になるように、浮上するときが必ずやってきます。私の場合は「猫が好き」というのを持ち続けたから、世界がひらけたと思っています。
こうした活動をしていると、かつての自分と同じく社会とつながりを感じられない人たちからメッセージをいただくことが多くあります。他人に気を使いすぎてしまったり、極度の人見知りの人が意外と存在することもわかりました。自分だけが辛いと思わずに、多くの人が無理をしながら、ちょっと頑張って生きているのを知れたことも、良かったかもしれません。
これから、丹波篠山市のために地域をさらに盛り上げる活動をしていこうと思っています。かつて笑顔をなくしていた私でも、みんなを笑顔にするために動ける日が来ました。今はトンネルのなかにいたとしても、光は必ず差すことを私自身の生き様で伝えていこうと思います。
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人生には、失意のなかで誰の声にも耳を傾けられない瞬間がある。立ち上がるきっかけは些細なところにあるのに、それが見つからない。ササヤマメリーさんは猫をきっかけに自らを鼓舞したが、心配してくれる友人の声さえ拒絶していたら、現在の人生はあり得なかっただろう。嫉妬渦巻く人々の煩わしさから逃れ、「余生は猫として生きたい」と願ったメリーさんが、異形となって初めて知る、人や地域の温かさ。この温もりを絶やさないために、メリーさんは今日も活動を続ける。
<取材・文/黒島暁生>
【黒島暁生】
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki

