花毎の花ことば・ジンジャーリリー「一瞬の美」
ジンジャーリリーの一般的な花ことばには、「豊かな心」や「信頼」などがあります。これは、香りのよさに加え、近縁種が薬用植物として用いられてきた背景に由来していると考えられます。
一日だけ咲いてしぼむ“一日花”と呼ばれる咲き方も、この花を語るうえで欠かせない特徴のひとつです。
はかなくも印象的なこの性質には、「ジンジャーリリー」という名の響きや、学名の由来とも、どこか重なる部分があるように感じられます。
属名Hedychium は、ギリシャ語の Hedy’s(甘い香り)と chion(雪)に由来し、「甘い雪」という意味を持つ言葉です。また、種小名 coronarium はラテン語の corona(冠)からきており、全体では「甘い雪のような花を冠にする植物」と解釈されています。
ここでいう“雪”は、花の白さを表すと同時に、原産地のひとつであるヒマラヤの雪景色を思わせるものでもあります。
やがて解けて消えていく雪のように、この花もまた、咲いてはそっと花を閉じ役目を終えます。
そんな姿にちなんで、「一瞬の美」という花ことばをジンジャーリリーに添えたいと思います。
文・第一園芸 花毎 クリエイティブディレクター 石川恵子
水上多摩江
イラストレーター。
東京イラストレーターズソサエティ会員。書籍や雑誌の装画を多数手掛ける。主な装画作品:江國香織著「薔薇の木 枇杷の木 檸檬の木」集英社、角田光代著「八日目の蝉」中央公論新社、群ようこ「猫と昼寝」角川春樹事務所、東野圭吾「ナミヤ雑貨店の奇跡」角川書店など
