“SNSの応援”だけで「逮捕」も? 未成年の“選挙運動”を全面禁止する「公選法」は“違憲”か…10代らが国を訴えた裁判が結審

“SNSの応援”だけで「逮捕」も? 未成年の“選挙運動”を全面禁止する「公選法」は“違憲”か…10代らが国を訴えた裁判が結審

「ありがとう。だけど、未成年の子は選挙の手伝いはできないんだよ」——。応援したいと願った選挙の候補者にそう告げられ、中学生のAさんは言葉を失った。身近なテーマを公約に取り上げた候補者に「お手伝いさせてください」と申し出た、その矢先だった。

Aさんは後に未成年者の選挙運動には罰則があると知り、「逮捕されてしまうのでは」と怖くなって手伝いをやめたという。

Aさん(提訴時16歳)を含む4人が、未成年者の選挙運動を全面的に禁じ、違反に刑罰を科する公職選挙法の規定が憲法に違反するとして、国を訴えた裁判が、8日、東京地裁で結審した。

口頭弁論期日を終えた後、原告と弁護団は都内で報告会を開き、本訴訟の争点について語った。判決は9月25日に言い渡される。

「投票もできなければ、応援も許されない」

提訴は2025年2月28日。原告は4人で、提訴時の年齢はそれぞれ18歳、18歳、17歳、16歳(Aさん)。

4人のうち、提訴時点で18歳未満の2人は、18歳になる前に公職選挙が行われた場合に「未成年者であることを理由として刑罰を科されることなく、選挙運動をすることができる地位」の確認等を求めている。

また、4人全員が、公職選挙法の規定によって過去の選挙で「政治的表現の自由」を侵害されたとして、それぞれ10万円の国家賠償を求めている(※)。

※特に、提訴時点で18歳になっていた2名については、訴訟制度上、「過去に権利を侵害されたこと」を争う手段は国家賠償請求に限られている。

問題とされているのは、公職選挙法137条の2だ。同条1項は「満18歳未満の者が選挙運動をすること」を禁じ、2項は「満18歳未満の者を使用して選挙運動をすること」も禁じている。

「選挙運動」とは特定の候補者を当選させる目的で行う活動で、街頭でのビラ配りや電話かけだけでなく、SNSで候補者を応援する投稿やシェアも該当しうるとされる。違反すれば239条1項1号により1年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金が科され、252条によって最長5年間、選挙権と被選挙権を失う。

大人が満18歳未満の者を使用して選挙運動を行わせた場合には、その大人にも同じ刑罰が及ぶ。

この規定は1952年(昭和27年)の法改正で設けられた。

原告側は、立法時の審議の過程で、当初の政府案に未成年者への禁止・罰則は含まれず、政府側も「未成年者が自発的にやる場合については、この法律で制限する範囲ではない」と説明していたと指摘する。

しかし議員から、「(未成年者を使用した者だけでなく、実際に運動した未成年者に対しても)警察がこれを取り締まることが可能であるというだけでも相当の(犯罪抑止の)効果がある」との意見が出て、罰則付きの禁止が採用された経緯があるとしている。

「違憲以外どんな結論が出るのか」

報告会では、多田晋作弁護士がこの日の争点を説明した。「違憲審査の枠組み」をめぐる対立だという。

多田弁護士によれば、被告である国側は、選挙運動の自由は選挙制度の一部にすぎず、ルールを定める国会に広い立法裁量があるため、誰が見ても明らかにおかしいと言えるものでない限り合憲だ、という立場をとる。

これに対し原告側は、重要な憲法上の権利を実質的に全面禁止することが許容されるには、目的が「重要な利益を守るため」で、かつ、そのための手段が「必要やむを得ないものである」ことという厳しい条件が必要であり、一つでも欠ければ違憲になるはずだと主張。多田弁護士は「違憲という結論以外に、どんな結論が出るのか」との見立ても示した。

「悪いのは未成年を動員する大人では?」

太田こもも弁護士は、もう一つの争点である「立法事実」について述べた。選挙運動は候補者を応援するという意味を持ち、表現の自由に含まれるとしたうえで、未成年者の選挙運動を禁止するだけの合理的な理由や事情が本当にあるのかが問われるとした。

被告側は禁止の理由として概ね2点を挙げている。

1つは「選挙の公正」。この点について、太田弁護士は「たしかに、法律ができた昭和27年当時、大人が未成年者を動員して人海戦術に利用するなどの実態があった」と説明。しかし、「その場合、誰が『悪い』のか」と問いかけ、「仮にそのような問題があるとしても、動員する側の大人を規制すれば足り、現に使用を禁じる規定もある」と指摘した。

もう1つが「未成年者の保護」だ。この点についても、太田弁護士は「選挙運動に熱中すると学業をおろそかにする」という被告側の主張に対し、「未成年者を含め国民には教育を受ける権利が保障されているが、学業に専念しなければならない義務が課されているわけではない」と指摘した。

判決は9月25日。Aさんは訴訟の提起から結審までの経緯について「(応援が禁じられているのは)法律で決まっているからだと言われて『仕方ないか』と思ったが、今は『法律自体が間違っているのかもしれない』と考えるようになった」と振り返る。

「裁判では違憲と判断されるでしょうし、今は判決が出るのが楽しみです」と述べる一方、「地裁で憲法違反が認められても国は控訴、上告してくると思います」と先を見据えた。

配信元: 弁護士JP

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