
中高年の転職活動は、20代・30代とは戦い方が根本的に異なります。スキルを職務経歴書に書いて待つだけの「受け身」の戦略では、もはや通用しません。では、なにを武器にすればいいのでしょうか。後藤宗明氏の著書『中高年リスキリング』(朝日新聞出版)より、中高年の転職を成功に導く戦い方を解説します。
落とされること100社以上…「転職活動」にのこる後悔
私が40歳からリスキリングを開始して新しい仕事に就くために行っていたことで、一つ後悔していることがあります。それは転職活動の方法です。
職務経歴書を人材会社に登録し、書類選考を経て一次面接に呼ばれるのを待つという、一般的な「受け身」な活動しかしていませんでした。
10年以上前の当時は、自分が働いている会社でリスキリングの機会を提供してくれたり、リスキリングを通じてデジタル分野へのキャリアチェンジに挑戦していることを評価してくれたりする会社はほとんどなく、見事に100社以上、書類選考と面接に落ち続けるという結果になりました。
リスキリングを開始していきなり即戦力になれる人ばかりではありません。そのため、場合によっては身につけたばかりの新しいスキルを実践するチャンスを提供してくれる企業との出会いが必要になります。
前職での実績、やる気を含むポテンシャルを評価してもらい、カルチャーにマッチすることなどをクリアした上で、総合的に評価してもらう必要があるわけです。
中高年の転職に欠かせない「インフォーマル・ネットワーク」
のちに、実は中高年の転職には「インフォーマル・ネットワーク」を築いておくことが重要だということを、人事コンサルタントの曽和利光さんに教えていただきました。
インフォーマル・ネットワークというのは、現在所属している組織の人間関係をフォーマル(公式)なネットワークだとすると、それ以外の非公式なネットワークを指しています。例えば、次のようなものです。
・退職した従業員たちが集まるアルムナイ(元従業員)ネットワーク
・新卒1年目のときの入社同期
・同じ大学の同窓会ネットワーク
・外部で参加可能な勉強会
特に大切なのは、自分がリスキリング後に就きたい職種や業種で働いている先輩後輩を見つけ、加えて新しい成長分野についてお互いに学び合うことを前提としているオンライングループやオフ会などで良好な関係を維持することです。そのようなつながりがあると、リスキリング後にチャンスを得られる可能性が高まります。
現在は空前の人材不足が続いているため、リスキリングしたばかりのスキルでも、やる気があれば採用したいといったケースもあるかもしれません。
しかし、中高年の方々の募集ポジションということで考えると、転職エージェントを頼る転職活動だけでは自分の価値を売り込むには不十分といえます。リスキリング後に自分のやりたい仕事に就くことを支援してくれるネットワーク、人間関係をあらかじめ少しずつ築いておくことが重要なのです。
後藤 宗明
一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ
代表理事
