
いも、栗、きのこ、ぶどう、柿、梨、さんま⋯⋯秋の味覚が出揃いました。食欲の秋も本番です!
東洋医学では、秋に食欲が増すのは、冬に備えて生命力を体の内側に蓄えようとするためだと考えます。
とは言え、食欲まかせに食べ過ぎてしまうと体に負担がかかることに。
そこで、食欲の秋を楽しみつつ、過食にならないように食欲を安定させる食事法をご紹介しましょう。
薬膳や漢方薬に用いられる「五味(ごみ)」とは?

「空腹を満たしたい」「おいしいものを食べたい」という食欲は、体がエネルギーや栄養を必要としているサイン。東洋医学では、人間の体は「五臓(ごぞう)」と呼ばれる肝(かん)、心(しん)、脾(ひ)、肺(はい)、腎(じん)が中心となって生理活動が営まれていると考えられており、食欲とはその“五臓からのサイン”と言い換えることもできます。
そんな五臓と食欲を結びつけるものに「五味(ごみ)」があります。
五味とは、食材や生薬を酸味、苦味(くみ)、甘味(かんみ)、辛味(しんみ)、鹹味(かんみ)という5つの味で分類する東洋医学の考え方。薬膳における食材の組み合わせや漢方薬の生薬の配合などに用いられている理論で、「味」という名前がついていますが、その特徴は次のような作用を持つことにあります。
◉酸味⋯⋯収れん作用(体を引き締めて、漏れやゆるみを抑える作用)
◉苦味⋯⋯排泄作用、解毒作用、熱を冷ます作用、余分な湿気を乾燥させる作用
◉甘味⋯⋯体力を補って疲労回復する作用、胃腸を整える作用、痛みをやわらげる作用
◉辛味⋯⋯冷えをとる作用、気(き)と血(けつ)のめぐりをよくする作用
◉鹹味⋯⋯利尿作用、通便作用
薬膳で用いる食材は基本的に、この五味のうちのどれか(もしくは複数)に分類されています。
そしてこれらの五味は五臓との関係が深く、酸味は肝、苦味は心、甘味は脾、辛味は肺、鹹味は腎の働きをサポートします。これは裏を返すと、五味のうちのどれかを無性に食べたくなったときは、対応する臓が弱っている可能性があるということ。例えば、酸味の食材が無性に食べたくなった場合は肝が弱っていると考えられ、その原因となるストレスがたまっているサインだと推測できるわけです。
このように特定の食品を無性に食べたくなったり、逆に食べたくなくなったりする食欲の乱れは、五臓のバランスの乱れである可能性が考えられます。そして、五味の食材をバランスよくとると五臓のバランスが整い、食欲が安定するわけです。
五味それぞれの食材を使った代表的メニュー

食欲を安定させるためには、五味の食材をバランスよくとることがポイントとなります。まずは、五味それぞれの食材を使った代表的メニューや食材を押さえておきましょう。
◉酸味の代表的メニュー⋯⋯トマト料理、レモンやゆずを使った料理、梅干しを使った料理、酢を使った料理
◉そのほかの酸味の食材⋯⋯桃、ぶどう、かんきつ類、ざくろなど
◉苦味の代表的メニュー⋯⋯緑茶や抹茶を使った料理(和え物、炒め物、抹茶塩を使った料理、お茶漬けなど)
◉そのほかの苦味の食材⋯⋯レタス、アスパラガス、らっきょう、かぶ、おくら、酢、コーヒーなど
◉甘味の代表的メニュー⋯⋯お米・パン・麺類などの主食、肉料理、魚料理、たまご料理
◉そのほかの甘味の食材⋯⋯いも類、豆類、果物など
◉辛味の代表的メニュー⋯⋯薬味を使った料理、スパイス料理、ハーブ料理、カレー料理
◉そのほかの辛味の食材⋯⋯セロリ、ピーマン、ニラ、たまねぎ、かぶ、だいこん、春菊など
◉鹹味の代表的メニュー⋯⋯貝類や海藻類を使った料理、いか・たこ料理、かに料理、豚肉料理、味噌汁
◉そのほかの鹹味の食材⋯⋯たら、たちうお、うに、くらげなど
上記を参考に、1食あたり三味をとるようにしてみてください。例えば、酸味、苦味、甘味の三味をとるなら、梅干し、緑茶、ごはんで梅干し茶漬けにする、という具合です。そして、1日3食を通じて五味をバランスよくとれるように食材を組み合わせてみるといいでしょう。

