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「ホームホスピス」はどんなところ?

気軽に相談ができる窓口は少ない。ホームホスピスはそうした相談先の一つになり得る

――お二人がホームホスピスを運営する上で、課題に感じていることはありますか。

市原:ここ数年で「ホスピス型住宅(※)」と呼ばれるビジネスモデルの施設が急増していて、ホームホスピスとの混同が問題になっています。ホスピス型住宅を運営する一部の企業では、必要以上の頻度で訪問看護を行うことで、収益を上げているという報道もありました。

榊原:こうした施設では高い給与が支払われる一方で、スケジュールが分刻みで、機械的に管理されるなど、本来の看護やケアのあり方から乖離してしまっている現状があります。これは医療者や企業のモラルの問題だと思います。

そういった施設で働いていた人が、心身ともに疲弊し、ホームホスピスの理念に共感して、ホームホスピスの立ち上げを目指すため、私たちのもとに相談に訪れるケースも少なくありません。

――ホームホスピスには自治体からの支援などはあるのでしょうか。

市原:今のところありません。ですので、運営は利用者の自己負担に頼らざるを得ず、入居者一人当たり月々20万円程度の費用が必要となり、利用できる層が限られてしまうという現状があります。

それでも、入居者5~6人に対して倍以上のスタッフが必要なので、収益的に運営は大変です。「支援があったらいいな……」とは思うものの、実際に自治体からの支援を受けるとなると、予算があるため「終末期ケアは6カ月まで」など、制限が設けられてしまうでしょう。

人の寿命は誰にも分からないし、決めることもできません。「余命6カ月」と診断された方が数年生きるということはよくあることなんです。支援があることでホームホスピスの理念が崩れてしまうことを考えると、制度ができるとかえって自由度がなくなると考えています。

――人生の最期まで自分らしく生きられるようにするために、社会全体で必要な取り組みはなんでしょうか。

市原:気軽に相談できる窓口が必要だと思います。家族が病気になったり、要介護になったりして初めて気づくことがたくさんあるんですよ。地域に根差したホームホスピスはまさに、そうした場所になり得るのではないでしょうか。

榊原:本当にそう思います。その地域のケアの課題をどうにかしたいと思った人が、ホームホスピスを立ち上げるので、そこには知識と経験が集まります。そして、その知識と経験を持ったスタッフが、別の地域でホームホスピスを立ち上げて……、という「ケアの連鎖」が起こることを期待しています。

人生の最期まで、自分らしく生きていける社会を形成していくため、読者一人一人にできること

最後に、人生の最期まで、自分らしく生きていける社会を形成していくため、読者一人一人にできることをお二人に伺いました。

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