7月21日から、危険運転致死傷罪と道路交通法の改正が施行され、「酒酔い運転」に関する体内のアルコール量の数値基準がはじめて設けられた。
また、危険運転致死傷罪には「高速度運転」についても数値基準が設けられたほか、車のドリフト走行やバイクのウィリー走行も危険運転として処罰の対象に含まれるようになった。
全国で繰り返される危険運転に対し、これまでグレーゾーンであったものにも明確に基準を設けることで、より厳正に処罰するための改正だ。
「酒酔い運転」にアルコール濃度の数値基準が明確化
危険運転致死傷罪とは、危険・悪質な運転の結果として人を死傷させた場合に科される処罰規定。当初は刑法の中に含まれていたが、2014年に自動車運転死傷処罰法(※)として独立した。
※正式名称は「自動車の運転により人を死傷させる行為等の処罰に関する法律」
「危険運転」には「飲酒運転」や「高速度運転」など複数の類型が含まれているが、法定刑はどの類型においても変わらず、人を死亡させた場合には1年以上20年以下の拘禁刑、負傷させた場合には15年以下の拘禁刑。
従来も飲酒運転は危険運転致死傷罪が適用される対象であったが、その成立要件は「アルコールの影響により正常な運転が困難な状態」で自動車を走行させ人を死傷した場合とされており、具体的な数値基準は設けられていなかった。
この点については、要件が曖昧で立証が困難であり、実際に本罪が適用されるケースが限られる原因となっているとの批判が根強かった。
しかし、21日の改正により「数値基準を満たす高濃度のアルコールを身体に保有する状態」と「その他アルコールの影響により正常な運転が困難な状態」の両方のケースにおいて、危険運転致死傷罪が適用されるようになった。
これにより、「アルコールの影響により正常な運転が困難な状態」を立証しなくとも、一定の客観的な数値基準を満たせば危険運転致死傷罪の対象とされることになった。
また、道路交通法でも同様に、「酒酔い運転」(法定刑は5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金)について、従来は「アルコールの影響により正常な運転ができないおそれのある状態」のみが要件とされていたところ、数値基準の要件も追加される。
具体的な数値基準は危険運転致死傷罪と同一で、血中アルコール濃度が1ミリリットル中1.0ミリグラム以上、または呼気中アルコール濃度が1リットル中0.5ミリグラム以上。
なお、血中アルコール濃度1ミリリットル中0.3ミリグラム以上または呼気中アルコール濃度が1リットル中0.15ミリグラム以上ならば、従来通り「酒気帯び運転」となる(法定刑は3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金)。
ドリフト走行・ウィリー走行も処罰の対象に
危険運転致死傷罪では「高速度運転」についても、従来は「道路及び交通の状況に応じて重大な交通の危険を回避することが著しく困難な高速度」で自動車を走行させ人を死傷した場合を成立要件としていたが、今回の改正により数値基準が追加された。
具体的には、最高速度が時速60キロ以下の道路で時速50キロ以上超過していた場合、または最高速度が時速60キロを超える道路で時速60キロ以上超過していた場合に人を死傷させれば、一律で危険運転致死傷罪が適用される。
たとえば時速50キロ制限の道路で時速100キロの速度で運転していたケースや、時速70キロ制限の道路で時速130キロの速度で運転していたケースが当てはまる。
なお、飲酒運転の場合と同様、数値基準を満たす場合にはもちろん、満たさない場合であっても高速度運転として危険運転致死傷罪の対象とされる可能性がある。
そして、今回の改正により「殊更滑走型類型」が新設され、「殊更にタイヤを滑らせ、または浮かせることにより、進行を制御することが困難な状態にさせる運転」をしていた状態で人を死傷させた場合にも、危険運転致死傷罪が適用されることになった。
自動車のタイヤを意図的に横滑りさせる「ドリフト走行」や車体の一部を浮かせる「リフト走行」、バイクなどの二輪車の前輪を浮かせる「ウィリー走行」が処罰の対象となる。
総じて、今回の改正では、危険運転の判断基準がより明確になり、これまで適用が難しかったケースでも危険運転致死傷罪が成立する可能性が高まることになる。自動車やバイクを運転する人には、これまで以上に、安全運転への高い意識と責任が求められるだろう。

