
2024年、福岡県朝倉市柿原(かきばる)地区のゴルフ場に隣接する土地で、入居者の大半を外国人が占める「大規模マンション計画」が浮上しました。この計画はSNSで急速に拡散し、反対運動に発展。こうした「外国人不動産」を巡る問題は、このケースに限ったものではありません。背景には、日本人に潜む特有の“意識”が影響していると考えられます。牧野知弘氏の著書『「外国人不動産」問題』(祥伝社)をもとに、広がる外国人不動産問題と、それを深刻化させる一因に迫ります。
福岡・朝倉市で浮上した「外国人向け大規模マンション計画」
福岡県福岡市の南東40km、久留米市の北東20kmにある人口4万9000人ほどの朝倉市が近年、「外国人不動産」問題で脚光を浴びています。同市柿原(かきばる)地区において、中国在住者が代表を務める不動産開発会社によるマンション建設がSNSなどで取り上げられ、話題となったのです。
ゴルフ場に隣接した、面積1万8000m2(5445坪)のかなり広い敷地に地上14階建てのマンション2棟、総戸数290戸・705人が居住するマンションを建設する計画で、将来的には6棟・2000人が居住することになるとのことでした。
この計画については、2024年5月に地元住民に対する説明会が開催されるのですが、説明文書では入居予定者について、中国系が40%、香港・台湾系で40%、日本および韓国で20%とされ、外国人のうち40%が永住者である、との説明がなされたのです。
さらに開発業者からは、入居者の多くが外国人富裕層の別荘やセカンドハウスとしての利用となる、との追加説明があったと言います。マンション開発などにあたっては、規模に応じて地元住民などに適宜、説明会が開催されますが、居住予定者のプロフィールにまで踏み込んで説明するのはきわめて異例です。
この業者が同年に市内で設立されたばかりで、代表が外国人で説明すべき内容をよく理解していなかった可能性もありますが、それにしてもえらく丁寧な説明をしたものです。
このことがネット上で拡散され、外国人村が造られるといった噂が飛び交うようになります。開発についてすでに福岡県知事が認可している、将来的にはこの地に1000棟が建設され、中国人2万人が居住する計画などというデマが拡散され、福岡県庁や朝倉市役所に抗議電話が殺到します。
計画自体は“合法”も、反対運動拡大で白紙撤回へ
この問題については、まず開発業者の計画については、日本の法令に則ればこの段階で違法ではないと考えられます。
開発申請を行なう前に自治体が認可をするはずもありませんし、業者が外国人経営であったとしても、そのこと自体に問題があるわけでもありません。あくまでも民間による開発であって、誰を居住予定者にするかについて、自治体や地元住民におうかがいを立てる必要はありません。
しかし、SNSをはじめとした怒りの声は、やがて反対住民によるデモ行為におよび、テレビ、新聞などのメディアでも取り上げられるようになりました。騒ぎに驚愕した土地オーナーとゴルフ場運営会社は、2025年12月に開発業者に土地を貸すことを断念、計画は白紙撤回されます。
「アフリカホームタウン」認定も撤回…騒動から見える日本人の“アレルギー反応”
同じような事例として、JICA(国際協力機構)が2025年8月に認定したアフリカホームタウン認定を巡る問題があります。
JICAでは日本とアフリカとの交流促進を目的として、木更津市(千葉県)、長井市(山形県)、三条市(新潟県)、今治市(愛媛県)の4市を認定。このうち木更津市をナイジェリア共和国のホームタウンとしたことから、大量の移民受け入れにつながるとの激しい反対の声が上がりました。
この政策自体は移民受け入れを目的としたものではなく、特別なビザを出すものでもないことをJICA、国は説明しましたが、結局9月25日になって4市すべてについて撤回することを余儀なくされました。
この事象には、現在の国内における外国人による不動産所有や移住に対する極端なアレルギー反応が見て取れます。自分たちの知らない外国人が大量にやってくることに対しての警戒や不安がSNSなどによって増幅され、激しい反対運動につながっていくというものです。
また中国などのアジア諸国やアフリカ諸国に対する日本人の隠れた差別意識もうかがえます。これが仮に欧米人を中心とした計画であったらこれほどまでの反対運動につながったかどうかは定かでありません。
人口が極端に減少していく日本で、外国人であっても多くの人が転入してくることは、地元経済を活性化させる効果が高いのにもかかわらず、これだけの拒否感は「外国人不動産」問題をさらに深刻化させているのです。
牧野 知弘
不動産事業プロデューサー
