いつまでも輝く女性に ranune
「今を大切にする感覚が得られる」死について語り合いたい若者が増加しているワケ。死を“疑似体験”できるスポットも

「今を大切にする感覚が得られる」死について語り合いたい若者が増加しているワケ。死を“疑似体験”できるスポットも

◆棺に入ったら「生きる気力が湧いた」

[死を語りたい]若者たち
 東京都江東区にある、死について語り合える「終活スナックめめんともり」では、棺に入って、ふたを閉じた状態で数分間過ごす“入棺体験”というデス活を体験することができる。

 取材班が足を運んでみると、友人が入った棺を前に大粒の涙をこぼしている20代の女性が目に飛び込んできた。広告代理店で働いているという武井里奈さん(仮名・25歳)。彼女はなぜ死を疑似体験したかったのか。

「20歳のときに幼なじみが突然病気で亡くなって、『若くても死はこんなに身近で、突然来るものなんだ』と怖くなったんです。以来、SNSを眺めていても、戦争や殺人事件など死に関する情報に触れるたびに怖くなる。でもその不安を友達に打ち明けると、『え、疲れてるの?(笑)』『めっちゃ病んでるじゃん(笑)』っていうひと言で片づけられてしまう。語りたいのに語れない。語れないからより不安になる。感受性が強いのに惰性でずっとSNSを見てしまうので、最近はアカウントを消しました。でも、死についてリアルに向き合える場所があったら、漠然とした死への恐怖が薄れると思ったんです」

◆棺桶はほんのり暖かかい

[死を語りたい]若者たち
武井さん(右)に誘われ、好奇心から参加したという30代の吉野さん(仮名)は「棺の中で生きる気力が湧いた」
 緊張した様子で入棺した彼女は数分後、どこかすっきりとした表情で棺から出てきた。

「自分の本音と向き合えたような……。ゆっくりと前向きになれる気がします」

 その後、取材班も入棺体験をすることに。自分に向けて書いた弔辞を司会者に読んでもらい、真っ暗な棺の中からこもった声を聞く。死んだときの予行演習をしている気分だ。

 だがそれが思いのほか心地よい。ほんのりと暖かい暗闇の中で、自分は何が好きで何をしたいのか、やり残したことはないかと考える。死に触れたのに、いつの間にか生き方について考えていたのだ。

 Deathフェスの共同代表を務める市川望美氏は「若者には居場所が必要」と語る。

「デス活に参加している若者たちは、生きることに一生懸命で真面目。ただ死についてふと考えたとき、共感したり話せたりする人や場が少なすぎる。だからこそ、デス活の場が、死を語れる仲間と出会い、死に触れ、死を知り、自分を再確認できる居場所になるのだと思います」

 若者たちは今を生きるために「死」を語り続ける。

[死を語りたい]若者たち
「カラオケないけど、カンオケあります」がキャッチコピーの、日本初の棺おけ常設店「終活スナックめめんともり」。グラス片手に死を語る。◯東京都江東区森下1-11-8 2F ◯18:00~23:00 (定休日は日・祝)
取材・文/青山ゆずこ 撮影/杉原洋平

―[[死を語りたい]若者たち]―

配信元: 日刊SPA!

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