毎年7月25日は「世界溺水防止デー」。溺水事故によって失われた命に想いを寄せ、予防可能な悲劇に対する世界的な認識を高めることを目的に設けられた。世界では今もなお、1時間あたりおよそ26人が溺水事故で落命しており、24歳以下の死因において上位10位に入るほど、溺水は身近な脅威であり続けている。
海開き直後から相次ぐ人身事故
各地で酷暑日が連日記録されるなど夏のレジャーシーズンが本格化する中、全国の海や川では水難事故が続いている。
12日、神奈川県平塚市の「湘南ベルマーレひらつかビーチパーク海水浴場」で、同県伊勢原市の男子高校生(15歳)が友人5人と遊泳中に沖に流され、2日後の14日午前4時ごろ、現場から約300メートル離れた海岸で遺体で発見された。
同月19日には、富山県黒部市の石田浜海水浴場で、群馬県富岡市の小学4年生(10歳)が行方不明に。群馬県内のサッカークラブの遠征の一環として18日から県内を訪れ、引率の50代男性と小学生17人とともに海水浴場を訪れていた。発見時にはタンクトップとハーフパンツを着用。通報から約40分後に波打ち際から沖合約10メートルの海中で発見されたが、搬送先の病院で死亡が確認された。
また、7月19日には沖縄県名護市の源河川で、知人らと遊泳中の20代の男性が溺れ、搬送先の病院で死亡が確認された。
2025年の海難発生状況では全体数減少も、遊泳中の死者増加
海上保安庁が2026年4月1日に公表した確定値によれば、2025年のマリンレジャー活動に伴う人身事故者数は702人(前年比33人減少)。全体としては減少傾向だが、死者・行方不明者数は206人(前年比17人増加)と増加に転じており、楽観できる状況ではない。
活動内容別に見ると、人身事故全体のうち遊泳中の事故者は218人で最多の区分を占め、そのうち死者・行方不明者は82人にのぼる。前年(68人)と比較して14人増加しており、遊泳中の致死性が高まっている。
なお、福島海上保安部が2026年7月に公表した資料によると、福島県内の海で過去5年間に遊泳中に事故に遭った12人のうち、全員が遊泳禁止区域で泳いでいたことが明らかになっている。これらの事故者は、波打ち際から沖合へと流れる「離岸流」に流されるなどしており、指定区域外での遊泳がいかに危険であるかを改めて示すデータといえる。
死者・行方不明者の3分の2が50歳以上
マリンレジャーに伴う事故のデータからは、特定の世代に深刻なリスクが集中している実態が浮かび上がる。
第十一管区海上保安本部の資料によれば、2025年1月1日~7月27日の期間において、50歳以上の事故者は23人で、事故者全体の43%を占める。さらに過去5年間(2020年〜2024年)の累計データを参照すると、死者・行方不明者123人のうち、50歳以上が82人(67%)と、3分の2を占める。
なぜ50歳以上は特に注意が必要なのか
より深刻なのは、50歳以上で事故に遭った際の致死率の高さだ。過去5年間の統計において、50歳以上の事故者164人のうち、死者・行方不明者は82人に達しており、事故者の2人に1人という高い割合で命が失われている。
年代別の内訳を見ると、死者・行方不明者82人のうち、50歳代と60歳代がそれぞれ29人(各24%)と最多であり、70歳代の20人(16%)がそれに続く。
なぜこれほどまでに50歳以上の致死率が高いのか。同資料は、加齢に伴う体力・心肺機能の低下、持病の存在、そして自身の体力を過信した無理な行動が事故の深刻化につながりやすいと指摘している。
海上保安庁は50歳以上に向け、以下の注意点を呼びかけている。
- 海に入る前に体調を確認し、無理をしない
- 体調や持病を同行者と共有する
- 器材の確認と事前練習を徹底する
- ライフジャケットを必ず着用する
- 一人にならず、声掛けと見守りを徹底する
データが示すシュノーケリングの危険性
50歳以上における活動内容別の事故データは、さらに具体的なリスクの所在を示す。2025年1月1日から7月27日における50歳以上の事故者23人のうち、シュノーケリング中の事故が13人(56%)と最多であり、次いでダイビング中が5人(22%)、遊泳中が2人(9%)と続く。
特に注目すべきは死者・行方不明者の内訳だ。50歳以上の死者・行方不明者11人のうち、シュノーケリング中の事故者は10人にのぼり、全体の91%という圧倒的な割合を占める。
過去5年間(2020年〜2024年)の累計でも、50歳以上の死者・行方不明者82人のうち、シュノーケリング中が33人(40%)と最多であり、ダイビング中の18人(22%)、遊泳中の11人(13%)を大きく上回っている。
シュノーケリングは、一見すると気軽に楽しめるマリンレジャーとして認識されがちだ。だが、水面近くに浮いたまま行動するため体力の消耗に気づきにくく、心肺機能への負担が蓄積しやすい特性がある。この特性が、体力や心肺機能の低下が生じやすい50歳以上の層に、致命的な結果をもたらすリスクを高めていると考えられる。
海の安全を担う日本ライフセービング協会も呼びかけているように、海や川・水辺に出かける際には、飲酒をしない、子どもと一緒に水に入る、ライフジャケットを着用する、天気予報を確認するといった基本的な行動が、命を守る第一歩となる。データを正しく知り、その知識を自身と身近な人にも共有する。それが過信をなくし、無謀を止め、最悪の事態の予防につながる。

