今週のテーマは「グイグイアプローチしてくる男に、女が靡かなかった理由は?」という質問。さて、その答えとは?
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翔太のことは、最初から気になっていた。
顔が整っていて、話しがうまくて、場の空気を作れる男。「モテてきたんだろうな」というのは、会って5分でわかった。
嫌じゃなかった…いや、むしろ身長も高いし顔もタイプに近い。都内の外資系不動産会社で勤務をしていて、年収もしっかりあって将来性も抜群。
私は結婚を考えられる彼氏を募集中だったので、翌日LINEが来た時も素直に嬉しかった。デートに誘われてOKしたのも、本気で楽しみにしていたからだ。
でも、会うたびに、心のどこかに何かが引っかかった。
何度会っても、「この人、ちょっと違うかも」という感覚が消えない。うまく言葉にはできず、その違和感の正体をずっと掴めずにいた。
ただ最後に、私はこの“何か違う”が言語化できた気がする。
翔太と出会ったのは、2対2の食事会だった。彼は最初から私に積極的に話しかけてきてくれた。
「由真ちゃんって、すごく美人さんだよね。モテるでしょ?」
「ありがとうございます。どうなんですかね」
「由真ちゃん、顔も綺麗だけど雰囲気も美しいというか…姿勢も綺麗だよね」
「本当に?嬉しいです。最近ピラティスに行っているからかな」
「そうなんだ。だからか〜。うん、本当に綺麗」
しかも相当な褒め上手。適度な距離感を保ちつつも、ぐいっと核心には迫ってくる。
その絶妙な距離の詰め方に、「この人はきっとモテるんだろうな」と私はすぐに察した。
そして翌日、すぐに翔太からLINEが来た。
― 翔太:昨日楽しかった!由真ちゃんの話もっと聞きたかったな。
― 由真:私も楽しかったです!
― 翔太:次は二人でご飯行かない?
初デートまでの流れも完璧だったけれど、デート中のアプローチも本当に上手だった。
初回は、表参道のフレンチだった。お店選びのセンスもあって、デートはもちろん楽しい。会話もスムーズ…。一見すべてが完璧だった。でも、逆に完璧すぎてどこか引っ掛かる。
「これまでどんな人と付き合ってたの?」
こんな会話をしている最中、私が感じていた違和感の片鱗が見えた気がした。
「どんな人…。みんな綺麗な人たちばかりだよ。でも、なんやかんやで続かなくて」
「なんで続かなかったの?」
「束縛とか嫉妬が激しくて。“私だけを見て”的な重い女性が苦手なんだよね」
何だろう。その言葉を聞いた瞬間、私に向けられたものではないのになぜか胸がざわついた。
元カノ達のことをどんな風に言うかで、意外に男性の本当の人柄は見えてくる。
「由真ちゃんって本当にいいよね。美人だし話しやすいし…」
「ありがとう。翔太さんも。こんなかっこいいのに、いい人だよね」
「そうかな。ありがとう」
ただ、今日もとても褒めてくれるしとても優しい翔太。いい人な上に条件もいい。
だから私は、しばらくデートを続けることにした。
そして二度目のデートは、西麻布の和食屋さんの後、六本木の会員制のバーへ…という素晴らしい流れだった。
まるで“港区のデートの大正解”のような完璧なプラン。
しかし2軒目の少し薄暗いバーへ入った途端に、ふと疑問が湧く。
― この人、毎回こういうことしてる?
「初めて来た!翔太さん、ここのお店はよく来るの?」
「ううん、由真ちゃんみたいな特別な子だけとしかこないよ」
「本当に?絶対嘘だ」
「まぁ、たまに男友達と来るかな」
嘘に決まっている。
こんなムード満載の六本木の会員制のバーに男友達と来るはずがない。ここは完全に、“口説く”ためのお店だということくらいわかる。
そして、このデートで気になったことは他にもあった。
先ほどから、カウンターに置かれた翔太のスマホが何度も光っている。LINEの通知がひっきりなしに届いていた。
裏返しにすれば気にならないのに、本人はまるで気にする様子がない。かえって私のほうが落ち着かなくなってしまう。
「LINE、さっきからたくさん来ているけど大丈夫?」
そう聞くと、翔太はサラッとこんなことを言ってきた。
「あぁ、これね。大丈夫。週末になると、色んな人から“会いたい”とか“飲もうよ”って誘いが来るんだけど…。でも、今は由真ちゃんとデート中だから」
― これは「俺、モテるんだよね」という意味で合ってますか?
そう思うと、今までの言動すべての意味合いが変わってくる。
「翔太さんって、意外にまめだよね」
「そう?好きな子以外には、結構冷たいよ」
「そうなんだ」
実は、翔太は意外に頻繁にLINEをくれていた。「付き合う前からこんなにも連絡をくれて、嬉しいな」と思っていたけれど、色々と考え始めてしまう。
「私だから」なのか、「誰にでも」なのか、その境界線が見えなくなってきた。
― これって、他の子にも同じ手口を使ってるのかな…?
そしてトドメとなったのが、この日の帰り道だった。歩いていると、急に翔太が真面目な顔をしてこんなことを言ってきた。
「由真ちゃん、付き合わない?」
嬉しいと思ったのと同時に、冷静な自分がいた。
― この人、毎回このパターンでいけると思ってるんだろうな。もはやマニュアル化されてない?
根拠があったわけじゃない。ただ、それまでの会話の端々から積み上がってきた“俺的な感じ”から伝わってきたので、一旦保留にすることにした。
「翔太くん、ありがとう。嬉しいんだけど…もう少し考えさせてもらってもいいかな?まだあまり、翔太くんのこと知らないから、時間が欲しいなと思って」
翔太が悪い人だとは思っていない。むしろ一緒にいると楽しかったし、顔は本当に好みだった。
だから、その後2回ほどデートしてみたが、やはりどこか信用できない感覚は否めなかった。
結局私は恵比寿のバーでデートしたあと、フェードアウトすることに決めた。
話がうまくて、顔が良くて、自分に自信がある。モテてきた自覚がある。女性の扱いが手慣れている。
でも女には、言葉より先に届くものがある。
誠実かどうかはアプローチの上手さじゃなく、もっと細かい部分に滲み出る。自分の話をする時の目の輝き、元カノの話をする時の軽さ、褒め言葉の使い回し感…そういうものを、私は翔太にずっと見ていた。
誰に対してもこのアプローチができる人間は、誰のことも特別だと思っていない可能性がある。
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