育毛・養毛剤「効果ゼロ」でも返金認められず? 消費者が知っておくべき“法的救済”の難しさ【弁護士解説】

育毛・養毛剤「効果ゼロ」でも返金認められず? 消費者が知っておくべき“法的救済”の難しさ【弁護士解説】

ヘアスタイルは第一印象を左右する重要な要素だが、薄毛や抜け毛に悩む人は少なくない。育毛剤や発毛剤、AGA(男性型脱毛症)治療など選択肢は多岐にわたるが、何が自分に合うのか判断するのは容易ではない。

一方で、インターネット上には誇大と思われる広告も氾濫している。「国が認めた最新育毛法」などと謳う広告を表示し、東京都から措置命令を受けた企業もある。

本記事では、効果的な薬剤の「区分」や治療法の選び方、そして虚偽・誇大広告によって商品を購入してしまった場合の法的救済の可能性について、毛髪の専門家と弁護士に取材した。(ライター・榎園哲哉)

効果はないのに「発毛」をPRする広告

「国が認めた最新育毛法」「塗るだけで薄毛卒業できちゃうんです!」――。

毛髪への悩みを抱える人にとって目を引くキャッチコピー、さらには頭頂部を中心にフサフサに変わった使用前・後の写真。

薬機法のチェック事業を手掛ける調査会社「REGAL CORE」は7月、インターネット上で公開されていたA社の育毛剤の広告について、医薬部外品であるため「発毛効果はうたえない」として、薬機法および景品表示法に違反する恐れがあると指摘した。

また、東京都は今年3月、育毛剤「イクモアナノグロウリッチ」を販売するプルチャーム株式会社(目黒区)に対し、景品表示法に基づく措置命令を出している。

同社は、実際にはモデル画像に薄毛の画像を合成して作成した比較画像や、実在しない人物によるSNSの体験談投稿などを用いて、発毛効果があるかのような不当表示を行っていた。都は同社に対し、「今後、同様の表示を行わないこと」などを求めた。

「育毛」と「発毛」の違いと正しい選び方

そもそも、薄くなり始めた毛髪が再び生えることはあるのだろうか。

育毛プロデューサーで、近著『50歳からでも髪は増やせる!』(あさ出版)など多くの著書もある久田篤氏は、まず「育毛剤」と「発毛剤」の違いを理解することが重要だとする。

育毛剤(医薬部外品)は、頭皮の血行促進など今ある髪を健康に育てることを目的とする。これに対し、発毛剤(第1類医薬品)は、含有する有効成分の作用によって、新たな髪を生やす効果が期待できるとされている。

発毛剤で最もよく用いられている有効成分が、高血圧症患者向けの血圧降下剤として開発されたが、多毛症の副作用が報告され、薄毛治療薬として転用された「ミノキシジル」である。

その有効性については、日本皮膚科学会も「ミノキシジル外用の発毛効果に関して、高い水準の根拠がある」(「男性型および女性型脱毛症診療ガイドライン2017年版」より)と認めている。

商品によってミノキシジルの濃度はさまざまだが、久田氏によると、濃度が高ければ良いというわけではないという。副作用のリスクが高まるためだ。

クリニックで行われるAGA治療の場合も同様である。ミノキシジルを頭皮に直接注射する方法や、錠剤を服用する方法があるというが、特に内服薬について、久田氏は「多毛症や性欲減退といった副作用のリスクが高まる」と指摘する。

その上で、「薄毛が進行し、副作用のリスクを理解した上で早く結果を出したい方は内服薬が選択肢になりますが、最近抜け毛が増えた、頭頂部が気になり始めたという段階であれば、副作用の少ない外用薬から試すのがよいでしょう」とアドバイスする。

効かなくても「返金や訴訟」が難しい理由

では、商品を使用しても効果がなかった場合、詐欺罪で刑事告訴したり、詐欺等を理由に売買契約を取り消して返金を求めたりすることは可能なのだろうか。

景品表示法などに詳しい雨宮知希弁護士は、「効果が出なかったという理由だけで法的に救済を求めるのは、かなり難しい」と述べ、大きく三つの理由を挙げる。

第一に、詐欺の立証が困難な点だ。詐欺罪や民法上の詐欺取消しが成立するには、販売者が「効かないと分かっていて、ウソをついてだました」と言える場合だという。単に結果が出なかっただけでは、この「だます意図」を証明することはできない。

第二に、契約内容の問題である。育毛剤等の商品は「その液体・薬剤そのもの」を売る売買契約となり、商品が約束通り届いている以上、契約は履行されていると考えられるという。つまり、「効果」までが契約内容として保証されているとまでは通常言えない。

「たとえば、『効果には個人差があります』といった注記は、まさに効果を保証していないことを示すもので、効果が出ないこと=商品の欠陥(契約不適合)という主張を通しにくくしています」(雨宮弁護士)

第三に、因果関係の証明の壁である。効かなかったのが本当に商品のせいなのか、あるいは本人の体質や生活習慣など他の要因によるものなのかを特定し、立証することは難しいという。

さらに雨宮弁護士は、効果について、商品の区分によって期待できる範囲が法的に定められていることも重要だと補足する。

「発毛効果が科学的に認められ、法的にも『発毛』をうたえるのは医薬品(ミノキシジル配合の市販薬、AGA治療など)に限られます。

育毛剤(医薬部外品)や養毛剤(化粧品)は、抜け毛予防や育毛といった限られた範囲の表示しか認められていません。消費者が『髪が生える』と期待しても、医薬部外品・化粧品はそもそもそこまで約束していない、というズレが起こりやすいのです」(同弁護士)

“虚偽”広告を見て購入、使用しても返金はされず?

それでは、前述のプルチャーム社のように、行政から措置命令を受けた事業者の商品であれば返金は容易になるのだろうか。

この点について、雨宮弁護士は「行政の処分と、個人の返金請求は別問題」と前置きし、次のように解説する。

「景品表示法は国や都道府県が事業者を取り締まるための法律で、措置命令が出ても、それによって自動的に契約が無効になったり、消費者にお金が返ってきたりするわけではありません。ただし、措置命令は、消費者が民事で争う際の強力な後ろ盾になり得ます」

プルチャーム社の事例では、①使用前後の画像が実際の使用結果ではなく、モデル画像に薄毛の画像を合成して作られていた、②SNSの体験談投稿が実在の人物によるものではなく、委託先が作成していた、③「国が育毛効果を認可」といった文言に合理的根拠がなかったことが認定されている。

「こうした『作られた広告』を信じて購入したと言えるなら、民法の詐欺取消し・錯誤取消し(96条・95条)や、消費者契約法の不実告知による取消しを主張する余地が出てきます。もっとも、ここでも『広告を見て、信じて買った』という個別の立証は必要で、誰でも当然に返金されるわけではありません」(同弁護士)

「生える」確率はおよそ5割、効果なければ変えてみる

育毛・発毛剤、AGA治療等を的確に選ぶために、消費者は何に留意すればいいのだろうか。雨宮弁護士は次のようにアドバイスする。

「一番の心構えは、『誰でも』『簡単に』『これだけで生える』といった甘い言葉を疑うことです。加工された画像や作られた体験談が横行している現実を知るだけでも、冷静な判断がしやすくなります。

本気で改善を目指すなら、皮膚科や専門クリニックに相談し、医学的根拠に基づく選択肢を検討することが、結果的に時間とお金の節約につながるでしょう」

一方、久田氏は、たとえ医薬品を用いた治療であっても「必ず生えるわけではない」と釘を刺す。

「薬や治療が体に合うかどうかは個人差が大きく、効果が期待できる確率は5割程度と考えるべきです。半年ほど続けても効果が見られない場合は、その治療法があっていない可能性が高い。漫然と続けるのではなく、別の選択肢を検討することも重要です」

■榎園哲哉
1965年鹿児島県鹿児島市生まれ。私立大学を中退後、中央大学法学部通信教育課程を6年かけ卒業。東京タイムズ社、鹿児島新報社東京支社などでの勤務を経てフリーランスの編集記者・ライターとして独立。防衛ホーム新聞社(自衛隊専門紙発行)などで執筆、武道経験を生かし士道をテーマにした著書刊行も進めている。

配信元: 弁護士JP

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