キムタクなら“格好いい”、おじさんは“スネハラ”。鈴木おさむが「猛暑のハーフパンツ問題」に感じる不条理

キムタクなら“格好いい”、おじさんは“スネハラ”。鈴木おさむが「猛暑のハーフパンツ問題」に感じる不条理

東京都は’26年4月、夏の省エネを推進する「東京クールビズ」を発表。梅雨が明けた7月下旬、全国的に気温が上がり酷暑日を記録する地点も多い。都内では一部ハーフパンツで出勤する人の姿が見られる一方、SNSを中心に中年男性がスネを露出することの是非を問う「スネハラ」論争が過熱している。

放送作家の鈴木おさむ氏は、「スネハラ」論争の本質は年齢や服装そのものではなく、「おじさん」と見なされた人だけが不快の対象にされることにあるとみる(以下、鈴木氏による寄稿)。

半ズボン
写真/photo AC

◆同じハーフパンツでも木村拓哉なら「格好いい」

今年も「職場で男性のハーフパンツはアリかナシか」という論争が起きている。連日35℃を超える猛暑なのに、男性、とりわけおじさんが膝やスネを出すと「見苦しい」、さらには「スネハラ」とまで言われる始末だ。

僕は20代の頃から、ずっとハーフパンツをはいてきたが、30代までは何も考えなかった。暑ければはく。ただそれだけだった。ところが40歳を超えたあたりから、仕事場にハーフパンツで行っていいのかを考えるようになった。45歳を過ぎると、今度は会う相手や場所によって、今日ははいていい日か、長ズボンにすべき日かを判断するようになった。そして54歳になった今、家を出る前に自分の膝を見ながら考える。

不思議なのは、70代、80代のおじいさんがハーフパンツをはいていても、多くの人は文句を言わないだろうということだ。むしろ「暑いですからね」で終わる。では僕とほぼ同世代の木村拓哉さんがハーフパンツをはいていたら、どうだろう。おそらく誰も「スネハラ」とは言わず、「格好いい」「似合っている」と言うはずだ。同じ年代の男が同じように膝を出しても、木村さんならファッションになる。なぜなら、世間の頭の中で木村さんは「おじさん」という枠に入れられていないからだ。つまり問題は年齢でも、ハーフパンツでも、スネでもない。「おじさん」とインプットされた人のスネだけが嫌われているのだ。

◆蝶は愛され、蛾は嫌われる…それでもおじさんは今日も飛ぶ

この話を考えていて、蝶と蛾を思い出した。蝶が飛んでいれば人は足を止め、きれいだといって写真を撮る。蛾が飛んでくれば、顔をしかめ、手で追い払う。けれど、蛾は人を刺すわけでも血を吸うわけでもない。ただそこにいて、蝶と同じように羽を広げているだけだ。「ファッション」と評価される木村さんが蝶だとしたら、「ハラスメント」と批判される普通のおじさんは蛾なのかもしれない。

今、おじさんは何をしても叩かれやすい。話せば説教、黙れば不機嫌。汗をかけば不潔で、涼しい格好をすれば見苦しいのだ。「おじさんにも自由を」と言おうものなら、その発言自体がまた叩かれる。だから、おじさんたちは黙って長ズボンをはく。

だが今年の暑さは、そんな遠慮を軽々と超えてくる。蛾だって好きで蛾に生まれたわけではない。普通のおじさんも、誰かを不快にするためにおじさんになったわけではない。ただ普通に生きて、年を取り、気づけば蝶ではなく蛾の側に分類されていただけだ。

それでも蛾は、今日も飛ぶ。僕も今日、ハーフパンツをはいて外に出る。

だって蛾も、暑いのだから。

鈴木おさむ
鈴木おさむ
<文/鈴木おさむ>

【鈴木おさむ】
すずきおさむ●スタートアップファクトリー代表 1972年、千葉県生まれ。19歳で放送作家となり、その後32年間、さまざまなコンテンツを生み出す。現在はスタートアップ企業の若者たちの応援を始める。コンサル、講演なども行っている
配信元: 日刊SPA!

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