ジャーナリストの岩田明子氏は、今回の「カツアゲ疑惑」の背景には、地方政治と財界、メディアまでが癒着する“古い自民党”文化が残っているとみる。そのうえで、不透明なカネの問題を長年黙認してきた責任は政治家だけでなく、「県民・市民らの無関心」にもあると指摘する(以下、岩田氏の寄稿)。

◆1000万円の「議長ポスト代」 福岡県議会を揺るがすカツアゲ疑惑
「(高市首相から)『頑張れ』というような目で見ていただいたと思う」7月23日、こう語ったのは福岡県議会の蔵内勇夫議長だ。官邸での高市首相との面会を振り返っての発言だった。
周知のとおり、福岡県議会は「カツアゲ疑惑」に揺れている。発端は、’20年6月から1年間、同議会議長を務めた元自民党の吉松源昭県議らによる告発だ。議長就任に際して当時の党県議団幹事長らから1000万円を要求され、懇親会費やゴルフコンペ代なども含めて計2000万円以上を支払ったと明かしたのだ。現金受け渡し時の音声データも公開したことで、“地方政治とカネ”の問題は一躍、全国ニュースとなった。
加えて、3泊ハワイ視察に福岡県議1人あたり300万円も費やしていた問題も浮上。歴代議長は就任パーティ券を県職員に売りつけ、1000万円の「議長ポスト代」を回収していたと吉松氏が明かしたことも大きな話題を呼んだ。これらを主導したとされるのが、「福岡県議会のドン」と称される蔵内氏だ。麻生太郎氏が後ろ盾とも言われる。
◆地方に残る“古い自民党”文化 増長させた有権者の無関心
’23年に浮上した自民党議員の裏金問題は党内処分や選挙を経て一応のケリをつけた。だが、福岡を筆頭に“古い自民党”文化が残る地域は少なくないと考える。私自身、NHK岡山放送局時代には、地方議員による豪華な海外視察ツアーを目の当たりにしていた。議員から高級ブランド品のお土産をもらう記者も少なくなかった。地方では政治と地元財界、メディアまで癒着する構図も散見され、だからこそ不透明なカネの問題が長く黙認されてきたと見ている。今回のカツアゲ疑惑をきっかけに、地方の癒着構造が解消されることを期待したいが、責任の一端は有権者にもあることを忘れてはならない。ドン・蔵内氏は10期目の大ベテランだが、キャリアの大半を無投票再選でつくり上げた。吉松氏は“正義の告発者”のように見えるが、議長就任のために自ら贈賄に手を染めた事実には変わりない。県民・市民らの無関心が、彼らを増長させていたと考えられるのだ。
古い自民党政治と距離を置く高市首相にとっては、とばっちりも同然だろう。現に党幹部は党福岡県連を冷やかに突き放していた。蔵内氏に「頑張れ」とエールを送るはずもないだけに、永田町では冒頭の蔵内氏の発言を「ポスト高市に向けた“仕掛け”」と嘯く声もある。福岡から中央にも飛び火した際に、誰が笑うのか。政争の具にされることだけは避けたい。

【岩田明子】
いわたあきこ●ジャーナリスト 1996年にNHKに入局。20年にわたって安倍元首相を取材し、「安倍氏を最も知る記者」として知られることに。’23年にフリーに転身後、『安倍晋三実録』(文藝春秋)を上梓。’26年4月にはYouTubeチャンネル「TABOO CRASH岩田明子のオフレコ部屋」を開設

