カップラーメン売場に「生肉」放置…スーパーでの迷惑行為、成立する“犯罪”は? 最大で“3年の拘禁刑”の可能性も【弁護士解説】

カップラーメン売場に「生肉」放置…スーパーでの迷惑行為、成立する“犯罪”は? 最大で“3年の拘禁刑”の可能性も【弁護士解説】

カップラーメン売場の棚に、調理用の生肉が放置されている――。

そんな写真とともに投稿された「スーパーに行くと必ず見かけるやつ。なんであった場所に戻せないんかな? ましてや冷蔵商品を常温棚に置いていくのは犯罪だよな…」というコメントが、先日、SNSで話題となった。

環境省が6月30日に公表した2024年度の食品ロス推計によると、食品ロスは約461万トンに上り、そのうち事業系食品ロスは約237万トンを占めていた。

スーパーで常温の売り場に放置された冷蔵・冷凍食品が品質管理のために廃棄されるケースも、こうした食品ロスの一因となり得る。

このような行為は、場合によっては店舗から損害賠償を請求されるだけでなく、故意であれば器物損壊罪や業務妨害罪などに問われる可能性がある。

民事・刑事それぞれで責任が生じるのはどのような場合なのか。荒川香遥弁護士(弁護士法人ダーウィン法律事務所)に聞いた。

放置した客は損害賠償しなければならない?

まず、民事責任はどうだろうか。スーパーの客が冷蔵・冷凍食品を常温の売り場に放置し、店舗が品質管理上やむを得ず廃棄した場合、不法行為(民法709条)としてその客に損害賠償責任が認められる可能性がある。

「売り場の商品は、客が購入するまでは店舗の所有物として扱われます。商品の廃棄を余儀なくさせることは、スーパーの所有権を侵害し、損害を生じさせる行為と評価され得ます。

損害賠償責任の有無を分けるポイントは主に以下の3点です。

第一に、損害賠償責任が認められるには、少なくとも『故意』または『過失』が必要となります。

通常、要冷蔵・冷凍の食品を常温に放置すれば品質が劣化することは予見できます。しかし、それだけで直ちに過失が認められるわけではありません。単なる戻し忘れなど、通常の買い物の過程で生じた行為と評価される場合には、過失が認められない可能性もあります。

一方、嫌がらせや悪ふざけなど、意図的に放置したケースでは、故意が認められやすくなります。

第二に、その放置行為によって実際に商品を廃棄せざるを得なくなったといえるか、つまり損害の発生と放置行為との因果関係が認められるかです。

たとえば、品質に問題がないにもかかわらず店舗側が念のため廃棄したような場合まで、当然に賠償を請求できるわけではありません。賠償の対象となるのは、放置行為との間に、一般人の社会観念にてらして相当と認められる因果関係がある損害に限られます(民法416条参照)。

第三に、実際に商品を放置した者を特定できるか、『その商品が放置によって品質を損ない、廃棄が必要になったこと』を証明できるかという、実務上の課題があります。

このような立証上のハードルもあるため、現実には店側が損害賠償を請求できるケースは限られます」(荒川弁護士)

器物損壊罪や業務妨害罪が成立する可能性

次に、刑事責任についてはどうか。客が故意に冷蔵・冷凍食品を常温棚に放置し、スーパーに廃棄や売り場点検などの対応を余儀なくさせた場合には、罪に問われる可能性がある。

まず問題となるのは、器物損壊罪(刑法261条)だ。

「『損壊』とは、物理的に壊すことだけを意味するものではありません。本来の用途で使用できない状態にすることも含まれると解されており、食品を売り物にできなくすれば『損壊』に当たる可能性があります。

法定刑は3年以下の拘禁刑または30万円以下の罰金・科料です。なお器物損壊罪は親告罪(刑法264条)であり、店舗側の告訴が必要です」(荒川弁護士)

また、業務妨害罪が成立する可能性もある。

「こっそり常温棚に紛れ込ませて店員に気づかせず、廃棄や点検の手間をかけさせたような場合には、偽計業務妨害罪(刑法233条後段)が成立し得ます。

一方、公然と多数の商品を放置してまわって店の業務を混乱させたような場合には、威力業務妨害罪(刑法234条)が問題となります。

いずれも法定刑は3年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。判例上、現実に業務が妨害された結果までは不要で、そのおそれがあれば足りるとされています」(荒川弁護士)

東京商工リサーチが2月に発表した、全国610社を対象とする「2026年『スーパー経営会社』業績動向調査」によると、2024年10月期~2025年9月期決算で、スーパー業界全体は2年連続の増収増益となった。 

一方、売上高1,000億円未満の地場・中堅スーパーでは利益が前期比20.4%減となるなど、仕入れ価格や運営コストの上昇を吸収しきれず、厳しい経営環境が続いている。 

常温の売り場に放置された冷蔵・冷凍食品が品質管理上の理由から廃棄されるケースも、一つひとつは小さく見えても積み重なれば店舗の負担となり、経営にも影響を及ぼしかねない。

その観点からも、不要になった商品は元の売り場へ戻すか、店員に申し出て対応してもらうようにしなければならないということである。

配信元: 弁護士JP

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