〈狙われる10代〉消費者被害相談が過去最多 「150万円」の借金を背負うケースも…副業詐欺・エステ被害の手口【弁護士解説】

〈狙われる10代〉消費者被害相談が過去最多 「150万円」の借金を背負うケースも…副業詐欺・エステ被害の手口【弁護士解説】

国民生活センターは5月27日、2025年度に寄せられた18歳・19歳を契約当事者とする消費生活相談の状況を公表した。

相談件数は1万件以上と、2021年度以降で過去最多となり、被害の深刻さがうかがえる。

2022年4月に成年年齢が18歳へ引き下げられてから4年が経過したが、若年層を狙った消費者トラブルは依然として後を絶たない実態が浮き彫りとなった。

本記事では被害の実態や相談事例、もしもの時の対処を、消費者被害に詳しい弁護士に聞いた。(ライター:岩田いく実)

狙われる10代:「美」と「金」のトラブルに巻き込まれる傾向

国民生活センターがまとめたPIO-NET(全国消費生活情報ネットワークシステム)の統計によると、契約当事者が18歳・19歳の相談件数は2021年度8536件、2022年度1万27件、2023年度9788件、2024年度9082件と推移してきた。

そして2025年度に1万250件となり、大幅に増加。過去最多を更新した形だ。

もっとも相談内容の傾向を見ると、件数こそ最多となったものの、被害の内訳には大きな変化は見られない。

「脱毛エステ」や「医療サービス」といった美容関連、「他の内職・副業」といった金銭関連の相談が多く寄せられている。

いわゆる「美」と「金銭」にまつわるトラブルが、成年になったばかりの若者を中心に根強く続いている構図だ。

2022年の成年年齢引き下げにより、18歳・19歳は「未成年者取消権」による保護の対象から外れ、親の同意なしに自らの責任で契約を結べるようになった。

その一方で、契約に関する知識や交渉の経験が乏しいまま、高額な美容医療契約や、簡単に稼げるとうたう副業・投資話などに巻き込まれるケースが目立っている。

10代の消費者被害:相談内容の実態とは

今後も被害の拡大が危惧される10代の消費者被害。実際の相談事例とはどのようなものか、消費者事件に精通し、現在「東京都消費生活対策審議会」にて会長代理も務める平澤慎一弁護士(アクト法律事務所)に傾向と対策を聞いた。

若者はどのような経路から詐欺や悪質商法に巻き込まれていくのでしょうか。

平澤弁護士:寄せられる相談の傾向としては、LINEやSNSで「簡単に稼げる」「投資なので必ず儲かる」とうたう広告に惹かれ、クリックするケースが多いですね。18歳・19歳に限らず、20代前半の方々もこうした手口で詐欺に誘導されています。

例として副業詐欺の手口を紹介すると、まず広告をクリックした後、LINEでのやり取りに誘導されます。

そこで副業や投資などの内容をまとめた簡単なパンフレットを示されながら説明を受けるのですが、実態は不明瞭なまま「とにかくやってみませんか」と勧誘が進みます。

最近ではLINE通話で顔を見せながら説明するケースも増えており、相手の顔が見えることでつい信用し、詐欺に引っかかってしまう場合もあります。

LINEなどから誘導された後、どのような流れで被害が発生することになるのでしょうか。

平澤弁護士:副業詐欺を例に説明すると、副業についてアドバイスをする“コース”が用意されており、例えばスタンダードコース10万円、上位コース100万円〜150万円などという価格設定がされています。高額なコースほど多く儲かるという説明もされます。

一方、若年層は手元にまとまった現金がないことが普通なので「無理だ」と断ると業者は「借りれば大丈夫、儲かるのですぐに返せる」などと言って“借金”に誘導するのです。その際、利用されるのがAnyDesk(※)のような画面共有アプリです。

※画面共有・遠隔操作アプリで、本来はITサポートなどに使われる正規のツールだが、悪用されるケースが目につく。

業者は画面共有アプリを使い、遠隔操作によって、被害者にネット上で消費者金融の借入手続きをさせてしまうのです。

複数の消費者金融に同時並行で申し込みすると、通常であれば貸付上限額との関係で審査に通らないことが多いのですが、時間をおかずに次々と申し込むことで、審査をすり抜けることが可能になってしまいます。

そのようにして、たとえば50万円ずつ2〜3社から借りてそのお金で契約金を支払い、結果的に100万円〜150万円もの借金を背負わされただけになってしまうのです。

エステ被害のようなケースで用いられる手口はどのようなものでしょうか。

平澤弁護士:美容関連のトラブルは、SNSやLINEの被害が多い副業詐欺とは異なり、対面の被害が主となります。

安価な体験コースで集客し、「それでは効果が出ない」と高額コースへ誘導するのが、美容関連で共通する手口です。

「初回体験980円」「今だけ無料カウンセリング」といった安価な「体験コース」への誘導から始まり、カウンセリングルームで「今日の体験より効果がさらにあるのはこちらのコースです」「本来の効果を実感していただくには、最低でも○回の継続施術が必要です」などと巧みに高額の契約に誘導されます。

こうした手口は昔から存在しており、今も被害が後を絶ちません。

副業詐欺にせよエステ被害にせよ、手口の巧妙さには驚かされます。もし実際にこうした被害に遭ってしまった場合、どのように対処すればよいでしょうか。

平澤弁護士:まず、ひとりで抱え込まないこと、そして消費生活センターに相談することが重要です。

消費者ホットライン「188(いやや!)」に電話をかけると、最寄りの消費生活センターにつながります。公的機関である消費生活センターは詐欺被害や手口の最新情報を全国各地から集約しており、「詐欺かどうか疑問に思っている」という段階でも相談できます。

詐欺や被害の証拠となる広告のスクリーンショットや振込履歴、LINEのやり取りをできる限り保存し、相談時に活用できるようにしておくことが大切です。

平澤弁護士


■プロフィール

平澤慎一(ひらさわ・しんいち):弁護士。東京弁護士会所属(43期)、アクト法律事務所パートナー。長年にわたり消費者被害事件を多数手がける。日本弁護士連合会・消費者問題対策委員会幹事、東京都消費生活対策審議会委員(会長代理)など。著書に「消費者法講義」「狙われる18歳!?」(いずれも共著)ほか多数。

岩田いく実:損害保険会社、法テラス、一般民事系法律事務所に勤務後、ライターに転身。パラリーガル経験を活かし、年間60人を超える弁護士・税理士を取材。相続や離婚、不動産売却、債務整理、損害保険などのテーマを中心に執筆。第一法規『弁護士のメンタルヘルスケアの心得』で記事執筆、自主出版に『ルポ豊田商事』がある。

配信元: 弁護士JP

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