◆人知れず、入浴中に涙を流すことも…

一ノ瀬リカ:ところがそうでもなくて……。昔から自分がどこへ行っても浮いてしまうのは自覚しているんです。なぜか先生から気に入られて同級生の反感を買ったり、無駄に正義感が強くて「それはおかしいと思う」みたいな発言をしていらっとされたり、みんながアイドルの話をしていても自分は大槻ケンヂのことを考えていたり。周囲と自分の波長が合っていないことはずっと悩みでした。
両親に心配させたくないので、あたかも自分にはたくさん友だちがいるかのように振る舞っていましたが、お風呂のときにずっとひとりで泣いていたりしましたね。それに、友だちと一緒にいたとしても、精神的に食らってしまうことも正直多くて。
――といいますと?
一ノ瀬リカ:人といたほうが疲れるんですよね。「この人はいま、こう感じたんじゃないか」と余計なことを察知してしまうクセもそうですし、それ以外にも、「私みたいな人間が二酸化炭素を吐き続けて生きていることに意味はあるのか」とかずっとぐるぐる考えてしまって。思考が止められないんです。学生時代は、つらいことでも、笑って話すしかすべを知りませんでした。
◆新卒で入社した企業を退社した理由は…
――つらい気持ちになったり、希死念慮を感じることもあったのでしょうか。一ノ瀬リカ:幼いころからうっすら希死念慮はありましたね。どこにいても、「自分の居場所ではない」という違和感が強かったと思います。大学生になってバンドのライブに行ったときに、初めて「私はここにいていいんだ」と思える温かい空間に出会いました。それが、いま私が音楽を続けている理由だと思います。
――大卒後、すぐに音楽活動を開始するのでしょうか。
一ノ瀬リカ:いえ、新卒で大手アパレル企業に入社しました。2年間働いたのですが、その間にコロナ禍を経験し、ひとりで鬱々と考える日々が続きました。「何のために生きているんだろう?」という疑問が湧いて、やがて希死念慮に変わりました。そのとき、ずっと趣味で続けてきた音楽をやってみようかなと思ったんです。これまで常識的な生き方に自分を合わせて生きてきたけど、死んでしまうよりは出来損ないの人生であっても生きていたほうが、家族も悲しまないでしょうし。そのあと、同じビルで働いていた女性社員が休憩所で愚痴を延々とこぼし続けるのをみて、「ここにいちゃいけない」と思って辞表を書きました。

