いつまでも輝く女性に ranune
2年間毎日「昼食はゆで卵1個と千切りキャベツ」…安定した道を捨て、夢を選んだ28歳女性の挑戦

2年間毎日「昼食はゆで卵1個と千切りキャベツ」…安定した道を捨て、夢を選んだ28歳女性の挑戦

◆2年間毎日「昼食はゆで卵1個と千切りキャベツ」

一ノ瀬リカ
――かなり勇気が要る行動ですね。金銭的に厳しくなかったですか。

一ノ瀬リカ:いざとなったら路上に出て靴磨きでもしてお金を稼げばいいと思って退職しました。2年間蓄えた貯金など微々たるもので、当然、親からの仕送りもありません。いずれ顔を出して音楽活動をするのでコンセプトカフェでアルバイトはやっていましたが、生活は苦しかったですね。会社員を辞めて最初の2年間、誇張でもなんでもなく、お昼ごはんは毎日ゆで卵1個と千切りキャベツでした。ちょっと頑張ったご褒美で、トマトです。

 夜ご飯も業務用スーパーで大量に安く買ってきて、ちょっとずつ食べていました。ある夜、業務用スーパーから大量の冷凍ブロッコリーを担いで帰路につく途中、繁華街で楽しそうにカップルが酔っ払っているのをみたとき、「私は何をやっているんだろう」と涙が出ました。今も、昼はWEBライターをやりながらギリギリのところで音楽生活をしているのは変わらないかもしれませんが。

◆歌わないと生きていけない人間

――生まれ育ったご家庭が裕福なのに、金銭的に苦しい音楽活動を続けてこられるのはどうしてでしょうか。

一ノ瀬リカ:大学時代、居場所がなかった私を音楽が救ってくれたように、誰かにとっての居場所になれる音楽を作りたいと思っています。楽曲のテーマも「愛」「恋」という普遍的なものを扱うというよりは、聞いた人が「明日も生きてみようかな」と感じられるものになっています。かつてお風呂場でひとりで泣いていた自分に宛てて曲を描くことが多く、「生きてていいのかな」と思っている人をそっと肯定するものができればと思っています。

 つまるところ私は、歌わないと生きていけない人間なんだと思います。生きていくなかで経験するつらいことや裏切りなど、蓄積したさまざまな負の感情を昇華させる手段として音楽があるんです。同じ気持ちを持っている人に届いてくれることを願っています。

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「人と違う」を生きるのは辛い。血統や家柄のきらびやかさだけに着眼すれば、一ノ瀬さんの抱えた悩みなど即座に矮小化されよう。だが誰しもわかりにくい絶望に冒されながら日々を生きる。自分の地獄に気づける人だけが、他人を地獄から救うことができる。彼女の叫びにも似た歌声がいつか誰かの居場所になる。

<取材・文/黒島暁生>

【黒島暁生】
ライター、エッセイスト。可視化されにくいマイノリティに寄り添い、活字化することをライフワークとする。『潮』『サンデー毎日』『週刊金曜日』などでも執筆中。Twitter:@kuroshimaaki
配信元: 日刊SPA!

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