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ろう者と聴者が響き合う「東京国際ろう芸術祭」

「知らない世界」を知り、他者のことを想像する力を養う

――映画や演劇で「ろう芸術」に触れ、ろう者が溢れる街を歩く。「手話のまち 東京国際ろう芸術祭」を体験することで、多くの気づきが得られそうですね。

牧原:そう願っていますし、この取り組みを継続していきたいとも思っています。開催に向けて動いている中で、私自身にもさまざまな気づきがありました。例えば、商店街の方々に協力をお願いした際、「前から手話に興味があったんだ」「デフリンピックも開催されるし、手話で挨拶できたらいいなと思っていたんだ」などと声をかけてもらえたんです。

さらに、芸術祭の会場となる「座・高円寺」のカフェでは、ろう者のスタッフがアルバイトとして働いているんです。私が子どもの頃には考えられなかったような変化が、至るところで起こっています。その流れを次の世代につないでいかなければと感じますね。

――「手話のまち 東京国際ろう芸術祭」の直後には「東京2025デフリンピック」も開催されますし、ろう者や手話への関心は引き続き高まっていきそうですね。

牧原:デフリンピックが東京都のサポートがある中で開催されることに意義を感じています。だからこそ、この機会に「ろう文化」にもっともっと触れてもらいたいです。

私は、今回のデフリンピックで新たに導入される「サインエール」の制作にも関わっています。「サインエール」とは、声援が伝わりにくいデフアスリート(※)に届けるために開発された、目で伝わる新しい応援スタイルです。

観客席のような場所で、多くの人々が両手を前に伸ばし、力強く動かしている。「サインエール」を送っている様子。
牧原さんが制作に携わった「サインエール」の様子。画像提供:東京都

牧原:これを使えば、手話を知らない聴者の観客も、デフアスリートへ応援を届けられます。このように聴者の観客も巻き込んでいくことが、デフリンピックを開催する意味の一つではないでしょうか。

  • 「デフアスリート」とは、きこえない・きこえにくいアスリートのこと
「5005」の壁に貼られたデフリンピックのポスター
デフリンピックは、スタートの音や審判の声による合図を、旗やフラッシュランプなどの視覚的な工夫により補うことが特徴

――「手話のまち 東京国際ろう芸術祭」や「東京2025デフリンピック」が、聴者とろう者の言語の違いを超えて、共に過ごす機会を広げていくような気がします。その先の社会に願うことはありますか。

牧原:やはり、ろう者がもっと社会参加できるようになってくれたらいいな、と思います。昔と比べれば改善されてきているとは思うんですが、ろう者がどこにでも普通にいることが実現されればと。

これはろう者に限ったことではなく、他の障害者にも言えることかもしれません。そのために必要なのは、環境づくり。過去に映画祭を主催していたのも、「ろう者が普通にいる映画館」という場をつくってみたかったというのも動機の一つでした。

それから、聴者、ろう者、難聴者に限らず、一人一人が知識や教養を持つことも必要だと思います。自分のことだけを考えるのではなく、この社会で暮らす他の人のことも想像してみてほしい。そのために必要なのは、知識を身につけることなのではないでしょうか。

人と人との間にある垣根をなくしていくこと。それが牧原さんの願い

――そうやって「他の人のこと」を想像していくと、社会全体が少しずつ優しく変化していく気がします。

牧原:芸術と教養って深く結びついていると思うんです。「手話のまち 東京国際ろう芸術祭」に足を運んでみて、「知らない世界」があることを知る。それが教養の第一歩になるのではないかと思います。だからこそ、一人でも多くの方に楽しんでもらえるよう、全力を尽くします。

きこえる、きこえないの違いを超えていくために、私たち一人一人ができること

きこえる、きこえないの違いを超えて、聴者とろう者がつながっていくために、私たち一人一人には何ができるのか。牧原さんに3つのアドバイスをいただきました。

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