洗練された空間も、料理の斬新さも実にハイレベル。そんな最旬焼き鳥店は、すべからく押さえておくべし。
次世代の予約困難店になるであろう話題店たち、まだまだあります!
焼き台を囲む、ゆとりのあるカウンター。小美野さんと気鋭の若手が半々の割合で焼き場に立つ。勢いを増す“おみ乃”は、今秋、八重洲にも新店を開業予定
鶏に合わせて火入れを調整。ハイブリッドな技はここでしか味わえない
押上の『焼鳥 おみ乃』といえば、『鳥しき』出身の小美野正良さんが築いた予約困難店。
その姉妹店『おみ乃 椿』は、告知もなしに京橋にひっそりと開業した知る人ぞ知る人気店だ。
梅肉で和えた絹さやと谷中しょうがを詰めた「手羽先」には、べっこう餡がかかる
焼き鳥特化の押上と異なり、京橋のテーマは「鶏を自由に使い切る」。
焼き鳥がメインでありつつ、旬菜を詰めた手羽先など鶏の一品料理も醍醐味だ。
餃子の皮を使った「うすい豆とリコッタチーズのラビオリ」。グラナ・パダーノのコクが全体をリッチにまとめる
スタッフの経歴がさまざまなので、うすい豆とリコッタチーズを使ったラビオリなど、ジャンルレスで季節の恵みを提供する。
山形県の“だし”をのせた「素麺」。鰹の二番だしにすだちがさわやかに香る。
伊達鶏と各地の地鶏の両方を扱うため、焼き台はそれぞれに合わせて異なる炭の組み方にして火入れをする
さらなる大きな違いが、ストップ制焼き鳥のためバランスの良い伊達鶏のみを扱う押上に対し、京橋は各地の地鶏も焼いていること。
歯応え、旨みともに強い地鶏も、京橋では料理に用いることで存分に楽しんでもらえるよう工夫した。伊達鶏と地鶏を串ごとに焼くので、結果、焼き方も火力も使い分ける。
島根県の銀山赤どりの「抱き身」。
伊達鶏は近火の強火で焼くが、地鶏だと身が硬くなってしまうので、遠火の低温調理でじっくり焼く。
高く積んだ炭で一気に焼く伊達鶏の「かしわ」。
地鶏と伊達鶏の合い挽きの「つくね」。軟骨と黄にらも入る京橋限定の配合。
要望が多く、京橋限定で誕生した「親子丼とそぼろ丼のハーフ&ハーフ」。料理はすべてコース(¥17,300)より
焼きの技術に地鶏の魅力、季節感も堪能できて、姉妹店の枕詞に勝る個性を味わえるのだ。
2.星付きフレンチの火入れの技を駆使したエレガントな串は、ワイン一択の艶やかさ
『焼鳥um』@白金
鶏は天草大王が主。コクはあるが澄んだ味が特徴で「だきみ」も旨みは清澄。クリアな味わいで味は緻密な「エグリ・ウーリエ グラン・クリュ」が串の繊細な旨みと調和し個性を際立たせる
フランス料理を味わうが如くの皿の数々は、ふたりのディナーの濃度を深める
『焼鳥um』の大ぶりの「だきみ」は、バキバキに香ばしい皮に驚き、噛むと溢れる美味な肉汁に唸る。
「フレンチのピケの応用です」と店主の寺西辰哉さん。ピケとは“刺す”の意でこの場合、皮目に細かく穴を開けて焼いたことを示す。
フランボワーズビネガーで仕上げた「七谷鴨ロース炭焼き」はディジョンマスタードも合うフレンチな味。果実味豊かな「ヴォーヌ・ロマネ・オー・コミュンヌ」と
「鴨」なら塊で焼き台へ。「炭の熱を対流させ全体に柔らかく火を入れる」と鉄板焼き用の蓋も使って仕上げる。
寺西さんは、あの銀座『エスキス』の出身。メインの肉料理を担当して、この高度な火入れの技を会得した。
仏産うずらたまご「エル・フランス」は「ピュリニー・モンラッシェ」のミネラル感が合う。料理はおまかせ¥10,000~、ワインはボトル¥8,000~
名店出身の実力は、部位に応じた各種ビネガーや柑橘の使い分けでも発揮される。「何本も飽きずに食べられるキレが欲しかった」と工夫を施したことで、酸の効果で自然にワインとの相性もアップした。
スパイスも多く用いるが、言われなければ気付かない程度で、「目指すは、あくまで王道の焼き鳥。これらの工夫はエッセンスにとどめたい」と寺西さんは断言するのだ。
寺西さんは大阪の有名焼き鳥店で修業後、『エスキス』に入り、『um』の名で大阪にて独立。2024年に上京し、この店を開いた。店のセラーにそろう100本超のワインは、信頼するバーのソムリエが料理に合わせて厳選している
コースが基本だが、21時以降はアラカルト注文も可。 このすご技が気軽に味わえるとは喜ばしい限りだ。
3.抜群の技術と隠れ家感。大人なら隠し持ちたい、こんな行きつけ
『焼鳥 あさのみ』@赤坂
赤坂の喧騒を離れた住宅街に佇む。浅海さんが師と仰ぐ西荻窪の『鮨 いし田』から受け継いだ大黒様のお面が、その仕事を見守る。飾らず、おごらず、心落ち着く焼き鳥店を目指す
喧騒を抜けた閑静なエリアで、実直な串をアテにしっぽりと夜が更けていく
世代を問わずに愛される焼き鳥だが、左党の大人にとって焼き鳥をつまみに飲む時間は、幸せの象徴。
今年1月、赤坂のヴィンテージ感が漂うビルの一画にオープンした『焼鳥 あさのみ』は、そうした日常の悦びを支えてくれる安息の店だ。
山桜の多角形カウンターが印象的な空間でにこやかにお客を迎える店主の浅海真也さんは、吉祥寺の『いせや』で働いたのち、西麻布の『鳥よし』へ。合わせて18年間、修業に勤しんだのは、理想とする一人前の職人像が明確にあったからだろう。
もともと「焼き鳥で飲む時間が好き」という思いがあって志した道。真に居心地が良いのはどういう焼き鳥店なのか、自身がよく知っている。
「ももみ」。ももは名古屋コーチンを使用。それ以外の部位はみかわ赤鶏をメインに扱う。おまかせストップ制にも対応するが、好みの串を1本から注文可能なのが嬉しい。串は¥500~
1本でもおまかせでも、ストップ制でもその日の気分で注文できるとあれば、自然と足が向くのが焼き鳥好きのさがだ。
焼き目がパリッと香ばしく中はふっくらの「焼おにぎり」。
お好みで注文する場合は、これを間に挟んで焼き鳥に戻るのも手。
米の旨みがのった“純米酒の鑑”。「剣菱」の樽酒(¥1,000)はたれ焼き鳥とも相性抜群
地に足のついた仕事でさりげなくお客に寄り添う。今年、赤坂の大人たちがこぞって拠りどころにするに違いない。
4.全17品という怒涛のコース。心躍る2時間で、焼き鳥の楽しさを改めて体感する
『とり 難波』@麻布十番
一見するとストレートのカウンターだが、実はL字。正面に向かって右に間仕切りがあり半個室として過ごせる空間は、デートにも重宝
肉汁あふれる地鶏串から「鶏鮨」まで、予測不可能なコースに身を委ねたい
焼き鳥業界の変遷を見守りながら、臨機応変に結果を出し続けてきたたくましさと物腰の柔らかさ。麻布十番『とり 難波』の店主・井口勝広さんのキャリアは、30余年と長きにわたる。
20代の時に勤めた原宿の焼き鳥店で技を磨いたのち、自らの店を開店。そこから紆余曲折を経て、まったく新しい店の立ち上げに携わることを決めたのは、時代の移り変わりを見てきた職人の勝負心がうずいたからだろう。
電光石火のスピードで串打ちしながら「今が一番楽しい」と言い切る姿には、脂が乗ったベテランならではの説得力がある。
野菜ファーストなコース構成が嬉しい「前菜」は、ももの燻製を添えて。中盤には口中をリフレッシュさせるサラダも登場
さりげなく個性を忍ばせた一品料理にはゲストを喜ばせたいという心を感じる。
炒めたたまねぎがコクのあるレバーの甘みをいっそう引き立てる「自家製鶏レバーパテ」。
ブルゴーニュの赤ワインとの相性も抜群。
「難波特製 茶碗蒸し」。
脂が多い部位の間に提供するため、まろやかで優しい風味に仕上げる。
低温調理した胸肉にシャリを合わせ、すだちを搾った「鶏鮨」。
コースの途中で酸を感じさせることで食べ疲れさせない仕立てに。
細めのちぢれ麺と濃厚なスープが満腹感を幸福感へと引き上げる「ラーメン」。
ネタ箱に並べられた美しい串にゲストの心が舞い上がる
焼き鳥は水郷赤鶏を使い、「鶏は20%の水分を飛ばした時が一番美味しい」と井口さんが語るように、肉の水分量を見極めながらの火入れが冴えわたり、ひたすらにしなやか。
焼き鳥のトップバッターは「抱き身」。
胸肉は味噌を加えたヨーグルトに漬けてしっとりと。
「手羽先」は、あらかじめ骨を抜き、コラーゲンを閉じこめるように焼き上げる。すべて「おまかせコース」(¥12,000)の一例
生涯現役を貫くであろう、職人の「今」をしっかり目に焼き付けておきたい。
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