今日から変わる「高額療養費制度」 “年間上限”導入も自己負担増に患者団体「治療断念につながる」懸念

今日から変わる「高額療養費制度」 “年間上限”導入も自己負担増に患者団体「治療断念につながる」懸念

8月1日から高額療養費制度の見直しが実施され、長期間にわたって高額な医療を受ける人の負担を抑えるため、新たに「年間上限」が導入される。

一方で月ごとの自己負担上限額が引き上げられることから、医療関係者や患者団体からは「受診控えや治療の断念につながりかねない」と懸念する声も上がっている。

年間を通じた自己負担に上限が設けられるが…

高額療養費制度は、1か月に支払った医療費の自己負担が一定額を超えた場合に、超えた分が支給される仕組み。

自己負担の上限額は年齢や所得によって決まっており、重い病気や長期治療を受ける人の経済的負担を抑える役割を果たしている。

8月からは、高額な治療を継続して受ける人への配慮として「年間上限」が新たに導入される。

これまでは月ごとの上限を中心とした仕組みだったが、見直しにより、8月から翌年7月までの1年間を通じた自己負担にも上限が設けられる。年間上限に達した場合は、その超過分が高額療養費として支給される。 

たとえば年収約370万円〜約770万円の人の場合、自己負担額は年間で53万円が上限となる。

この年間上限制度の導入により、高額療養費を毎月利用している人や極めて高額な医療を受けた人、またこれまで「多数回該当」(※)に該当しなかった人や見直しにより該当から外れる人の負担が軽くなる場合がある、と厚労省は説明している。

※医療機関にかかって12か月以内に同一世帯で3回以上高額療養費が支給された場合、4回目以降からはさらに自己負担限度額が引き下がる制度

外来特例も見直し

年間上限が導入される一方で、月ごとの自己負担上限額は、多くの所得区分で引き上げられる。政府は「公的医療保険制度を持続可能にする観点から」と説明している。

たとえば、70歳未満で年収約370万円〜770万円の人では、月ごとの自己負担上限額が「8万100円+(医療費-26万7000円)×1%」から「8万5800円+(医療費-28万6000円)×1%」へ引き上げられる。また年収約770万円以上の高所得層では、引き上げ幅がさらに大きくなる。

さらに、70歳以上の人の外来診療の自己負担を抑える「外来特例」についても見直しが実施される。

なお、高額療養費制度の見直しは2段階で行われており、2027年8月1日からは所得区分の細分化が行われる予定だ。 

2027年からは所得区分がさらに細分化されて、70歳未満で年収約510万円〜650万円の人の月ごとの自己負担上限額は9万8100円に、約650万円〜770万円の人は11万400円になる。

8月からの月額上限・年間上限(厚労省の資料から)

批判の声が多数

この引き上げには批判が寄せられている。

たとえば全国保険医団体連合会は、受診控えにつながるおそれがあるとして撤回を求めている。

また、がん患者の団体などからも「自己負担が増えれば、治療を断念せざるを得ない」といった声が出ている。

さらに、政府側が負担増による受診行動の変化(受診控え)を医療費抑制効果として織り込んでいる点についても「患者の命や健康を犠牲にする」との批判がある。

受診控えの問題は、病気の重症化や治療の遅れにつながるリスクがあることだ。

また、とくにがんや難病の患者については治療が長期化しやすく、制度の負担増が生活や受診に直結しやすいという点も指摘されている。

マイナ保険証なら手続き不要

見直しが実施されても、高額療養費の利用方法自体は大きく変わらない。

ただし、有効期限が切れた従来の健康保険証を使える特例措置は7月で終了したため、医療機関や薬局を利用する際には、マイナ保険証または資格確認書を窓口で提示する必要がある点に注意が必要だ。

また、マイナ保険証を利用している人は原則として窓口での事前手続きが不要で、マイナ保険証を使わない場合は、限度額適用認定証などの事前準備が必要になる。

高額療養費制度は、重い病気や長期の治療を受ける人にとって家計を支える重要な制度だ。今回の見直しでは、所得によって自己負担が増える人もいる一方、年間を通じて高額な医療を受ける人は負担が軽減される場合もある。

自分がどの所得区分に当てはまり、自己負担上限額がいくらになるのか、あらかじめ確認しておきたい。また、高額な医療を受ける予定がある場合は、マイナ保険証の利用や限度額適用認定証の手続きが必要かどうかも確認しておくと安心だ。 

配信元: 弁護士JP

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