被災後の“住居確保”どう進める? 大地震の被災地で運用された「民間賃貸の借り上げ制度」ほか手厚い支援の実際

被災後の“住居確保”どう進める? 大地震の被災地で運用された「民間賃貸の借り上げ制度」ほか手厚い支援の実際

 7月28日に発生した令和8年熊本地震により、多くの家屋や店舗が倒壊・焼失するなどの甚大な被害が発生している。

水道や道路などのインフラも大きなダメージを受け、被災地での生活再建や復興に向けた動きもままならない状況であり、賃貸アパートや借家、あるいは借地に自らの建物を建てて住んでいた人にとって、住まいの損壊は深刻な問題だ。

家屋が住めない状態になった場合、これからの住居は確保されるのか、そして現在の賃貸契約や家賃の支払いはどうなるのか。行政による救済のあり方について、近年の大地震での実例を紹介しつつ解説する。

どんな救済策があるのか
震災時における、賃貸住まいの人の住環境を再建するための救済策は、大きく分けて以下の2つが柱になると考えられる。

  • 新しい民間賃貸住宅に移る際の「初期費用や転居費用の金銭的助成」
  • 行政が民間賃貸住宅を借り上げて被災者に無償提供する「みなし仮設住宅(賃貸型応急住宅)」の供与

平成28年熊本地震の例 
2016年(平成28年)に発生した熊本地震の際は、どのような対応がとられたのか。

当時、最初のマグニチュード6.5の地震の後に、さらに規模の大きいマグニチュード7.3の地震が発生し、住宅被害は19万8000棟以上に上った。

この未曾有の事態に対し、熊本県は被災者の住まいの再建に注力。ピーク時の仮設住宅入居者は2万225世帯に達した。

賃貸住まいの住民への具体的な救済策として、熊本県は手厚い資金助成を実施。

民間賃貸住宅へ入居する際の礼金や仲介手数料などの初期費用として一律20万円が助成されたほか、仮設住宅などから民間賃貸住宅や公営住宅等へ移る際の転居費用としても一律10万円が助成された。

さらに、保証人がいないために民間賃貸住宅に入居できない被災者に対しては、支援機関による見守り料として一律10万円を助成するなど、被災者がスムーズに次の住まいへ移れるよう、きめ細かい経済的支援が行われた。

能登半島地震の事例 
また、2024年に発生した能登半島地震においては「みなし仮設住宅(賃貸型応急住宅)」の柔軟な運用が行われた。

住宅が全壊したり、余震やライフラインの途絶により長期にわたり居住できなかったりする被災者に対し、県内の民間賃貸住宅が供与された。この制度では、家賃(世帯人数や地域に応じて月額6万円〜12万円が上限)だけでなく、退去時の修繕負担金や損害保険料も行政が負担。

さらに特筆すべきは入居期間の延長だ。原則として入居期間は2年以内とされているが、やむを得ない理由により退去できない場合は、引き続き1年を超えない範囲での延長(2年から3年へ、さらに3年から4年へ)が可能となる措置がとられ、被災者の再建ペースに合わせた息の長い支援が展開された。

このように、近年の大地震の際にいずれも手厚い救済措置がとられていることからすれば、令和8年熊本地震においても、同等の措置が講じられる可能性が考えられる。

被災借地借家法とは 
法律による救済の制度として重要なのが「被災借地借家法(大規模な災害の被災地における借地借家に関する特別措置法)」だ。現時点では令和8年熊本地震に適用されるかどうか不明ではあるが、制度の概要を紹介する。

同法は、大地震などの大きな災害で建物が壊れたとき、土地を借りる人や家を借りる人を守るための法律である。

東日本大震災後の2013年6月に制定・同年9月に施行されたが、法律上の要件に基づき、対象となる災害や措置、適用地域を「政令」で個別に指定する必要があり、これまでに過去には、同震災の福島県双葉郡大熊町で1度適用されたのみであるだけとなっている。

大熊町は東京電力福島第一原子力発電所の事故等に伴う避難指示により、仮設店舗や仮設事務所、資材置場など「復興事業や生活再建に必要な短期間の土地利用ニーズ」が急増。

通常の借地借家法では借地権の存続期間は「最低30年」と定められているが、この政令指定により、大熊町内において存続期間を「5年以下(更新なし)」とする「被災地短期借地権」を設定できるようになり、土地所有者も安心して事業者に土地を一時貸与できる環境が整えられた。

被災借地借家法が適用された場合の借地人を守る3つの特例措置

地震などの大規模災害によって借地上の建物が全壊・滅失した場合、借地人保護のために被災借地借家法で認められるのは以下の3つの特例だ。

(1) 借地契約の解約が可能に

通常の借地借家法では、契約更新前の期間に建物が滅失しても、借地人は契約を途中解約できず、建物がないのに地代だけを払い続けなければならない事態が生じる。被災借地借家法では、地主(借地権設定者)の意向や承諾の有無にかかわらず、借地権者の意思表示のみで中途解約(解約申し入れから3か月で終了)できる。

(2)掲示がなくても借地権が維持される(対抗力の特例)

通常、建物が滅失した後に土地が第三者に売却された場合、借地人が引き続き権利を主張(対抗)するには、更地に「新たに建物を築造する旨」などを記載した立て札の掲示を速やかに行う必要がある。しかし、被災直後の混乱の中でこれを行うことは極めて困難だ。

そこで、政令施行後から6か月間は掲示が一切なくても借地権を主張でき、掲示をした場合の有効期間も3年間とする特例が設けられた。これにより「地震売買」と呼ばれる不当な土地取引を防ぎつつ、取引の安全にも配慮している。

(3)建物のない更地でも、借地権の譲渡が可能に

通常、借地権を第三者に譲渡する際、地主が承諾しない場合は「地主の承諾に代わる裁判所の許可」を得ることができるが、これは借地上に建物が存在する場合にしか申し立てができない。被災借地借家法の特例では、建物が滅失していてもこの申立てが可能になる。これにより、元の借地人が自ら建てる余裕がなくても、再築能力のある第三者に借地権を譲渡して早期の復興につなげることができる。

・被災借地借家法Q&A:https://www.moj.go.jp/content/001137659.pdf(法務省)

配信元: 弁護士JP

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