技能実習生、門限破って「ごめんなさい」…反省文“強要”した監理団体に賠償命令 「過度に自由を制約」裁判所が認定

技能実習生、門限破って「ごめんなさい」…反省文“強要”した監理団体に賠償命令 「過度に自由を制約」裁判所が認定

「部屋が狭すぎる」
「ルールを破ると反省文の作成を命じられる」
「転職を妨害された」

技能実習生として来日した女性4名が、劣悪な住環境や過度な行動制限、さらには転職に関する虚偽説明に直面した。彼女たちは監理団体と実習先を相手取り、慰謝料などを求めて提訴。裁判所は、監理団体らの行為を不法行為と認定し、賠償を命じた。

以下、事件の詳細について、実際の裁判例をもとに紹介する。(弁護士・林 孝匡)

事件の経緯

Aさんら4名(※いずれも外国籍の女性、20代後半〜30代)は、技能実習法に基づき来日し、水産物の製造を営む実習先で水産加工の実習を行っていた。彼女たちの受け入れや調整は監理団体が担っていた。裁判所の事実認定によれば、Aさんらは、極めて過酷な環境での生活を余儀なくされていたようだ。

■劣悪な住環境
Aさんらの主張によれば、Aさんらは、下記のような環境で寝泊まりをしていた。いわば「すし詰め状態」といったところであろうか。

  • 1部屋に最大で16人を居住させることが想定されており、感染症等の拡大が懸念される状態であった
  • 1人当たりの寝室の面積が、非常に狭小であった(技能実習制度運用要領の定める4.5平方メートルを下回る時期があった)
  • 2段ベッドにはカーテンが掛けられているに過ぎず、プライバシーが十分に確保された空間とは言い難い

さらに、下記のとおり、安眠を妨害されるような状況であった。

  • 始業時刻が異なる実習生を同室させていた
  • 同室者が夜間、携帯電話を使用していた
  • 1階の共用スペースで先輩の技能実習生らが飲酒をして大声で騒いでいた

■反省文の強要
監理団体は、Aさんらの行動を厳しく制限した。門限を5分過ぎた際や、申請なしで他市へ外出した際などに、反省文の作成を命じたのである。文面には謝罪や「二度とこのような行為をしない」との文言が記載されていた。

エピソードをひとつ挙げると、実習生のうちの1名は、業務で手が痛いにもかかわらず4枚もの反省文作成を指示された。彼女は小さな文字で「ごめんなさい」「ゆるしてください」と繰り返し書かざるを得ない状況にまで追い込まれていた。

■虚偽説明による転職妨害
ある実習生が、現在の在留資格から「特定技能第1号」へ変更して転職したいと申し出た際、監理団体の職員は「在留資格と勤務先を変更するためには、一時帰国が必要だ」と虚偽の説明を行った。実際には帰国は不要であった。

■訴訟の提起
Aさんらは、こうした待遇に耐えかね、監理団体と実習先に対して慰謝料等の支払いを求めて提訴した。主な争点は、住環境の不備、反省文の強要による行動制限、そして転職妨害における注意義務違反の有無である。

裁判所の判断

Aさんらの勝訴である。個別に裁判所の判断を見ていこう。

■「劣悪な住環境」に対する評価
宿舎の環境について、裁判所は以下のように認定した。

「本件宿舎は、社会通念に照らして、睡眠による十分な休養を取るのに適切ではなく、かつプライバシーの確保も不十分なものと言わざるを得ず、このような施設に実習開始後の短期間にとどまらず、1年もの長期間にわたって居住させることはおよそ相当とは言い難く(中略)適切な住環境を確保すべき義務を怠った」

そして、監理団体と実習先に5万円の慰謝料支払いを命じた。

■「反省文の強要」に対する評価
反省文の強制については、外出の自由を過度に制約する不法行為であると断じた。

「一定の注意指導を行うこと自体は直ちに行動の自由を過度に制約するものとまではいえないものの、反省文の作成及び提出は、ルール違反に対する懲罰としての側面があることは否定できず、これにより、自らが届け出た内容を遵守しなければ、反省文の作成を余儀なくされるとして、外出先での行動を控えたり、ひいては、外出すること自体を控えたりするなどの萎縮的効果を生じさせたことは否定できないから、外出の自由を過度に制約するものと言わざるを得ない」

「その文量や作成時の状況、Aさんらが有する日本語能力から推認される作成の困難度に照らし、ルールを遵守させる方法としては明らかに行き過ぎであって、Aさんらの行動の自由を尊重する観点から許容することは困難であり不法行為を構成する」

上記を踏まえて、裁判所は監理団体に対して、5万〜10万円の慰謝料支払いを命じた。

■「虚偽説明」に対する評価
監理団体が、実習生の1人に対して「一時帰国する必要がある」と虚偽の説明をした点について、裁判所は監理団体の注意義務を強調した。

「勤務先等の選択に要する具体的な要件や手続に関する情報を提供するに際しては、可能な範囲で関係法令等を調査する義務を負い、自らが行い得る範囲の調査によって十分な根拠を得ることができない場合には、出入国在留管理局やOTIT等我が国の公的機関に正式に問い合わせるなどして適切に調査を行い、その結果を踏まえ、できる限り正確な情報を提供すべき注意義務を負っているというべきである」

「監理団体にはその義務を怠った過失がある」として、逸失利益約77万円の支払いを命じた(当該技能実習生が4か月間、就労できなかったため)。

最後に

外国人の技能実習生に対して、生活上のルールを設けたり、違反時に注意したりすることが、すべて違法になるわけではない。共同生活の秩序や安全を守るため、一定の指導が必要となる場面もある。

しかし、本件のように指導が過剰となり、実習生が監理団体らに依存せざるを得ない立場を利用して私生活や進路を支配するに至れば、それは指導の域を超えた違法行為となる。技能実習生は、言葉の壁や制度の制約から、受け入れ側に頼らざるを得ない立場にある。

その力関係を利用し、私生活や進路を過度に支配すれば、不法行為として損害賠償責任を問われる可能性がある。受け入れ側は、「適切な管理・指導」と「支配」の境界線を踏み越えないよう、彼らの人権を尊重する視点が不可欠と言えるだろう。本事例が参考になれば幸いだ。

配信元: 弁護士JP

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