個人事業主(フリーランス)の方10人の話を聞く
2つ目は少しハードルが上がるかもしれませんが、年齢にかかわらず、個人事業主(フリーランス)として活躍している方々の話を10人以上聞いてみてください。自分がリスキリングをしていきたい方向性の分野で活躍している方々のお話が伺えると、理想的です。
しかし、直接知っている方の中にはいない可能性もあるので、人を介して知らない方のお話を聞くことにもぜひチャレンジしていただきたいと思います。提供するサービスの内容、業界、職種によって、個人事業主(フリーランス)の働き方、契約形態、収入レベルの実態は本当に大きく異なります。そのため、将来の選択肢を増やすために、できるだけさまざまな分野で活躍されている方々のお話を伺い、自分の現在の専門性からどのような生活スタイルや働き方になるのかを思い描けるとよいかと思います。
具体的に定年後に個人事業主(フリーランス)になってみようという気持ちを持った方は、ぜひ支援の仕組みも活用していただきたいと思います。例えば、一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会(通称:フリーランス協会)ではさまざまなサービスや優待などの紹介があります。
師匠・理解者・仲間を見つける
そして、たくさんの人のお話を聞きながら、心がけていただきたいのが、師匠・理解者・仲間を見つけるということです。
1.師匠
ここでお伝えしたいのは、定年後のリスキリングを進めていくためのメンターとなる「師匠」を見つけていただきたい、ということです。私にも、リスキリングの定着に向けたプロジェクトをご一緒させていただいている、齋藤和紀さんという師匠がいます。リスキリングに本格的に取り組み始めた頃に、シンギュラリティ・ユニバーシティという教育機関がサンフランシスコで開催していた国際会議でお目にかかり、それ以来、さまざまなアドバイスをいただいています。
師匠となるのは、自分が将来就きたい分野の仕事をされている方、リスキリングを実践されて新しい仕事に就いた方など、いろいろ考えられます。自らのリスキリング経験に基づくアドバイスを継続的にいただけるような方との出会いがあると、心が折れそうになったときにリスキリングを継続するための支えになります。
理解者
理解者とは、リスキリングに取り組んでいる価値を理解して、サポートをしてくれるような存在を指しています。例えば、現在の日本の転職活動においては、身につけたスキルが初心者レベルだと、なかなか評価をしてもらえない場合があります。「転職=即戦力」という側面があるからです。ところが、まだ数は少ないものの、リスキリングに取り組んでいることを評価してくれる方も確実に存在しています。
採用の意思決定権限がある経営者や人事部の方の中にいることもあれば、人材紹介会社のコンサル担当者や、前述のインフォーマル・ネットワーク内で出会う方々が理解者になってくれる場合もあるでしょう。そういった出会いが、新たなキャリアの扉を開ける手助けをしてくれるのです。
仲間
そして最後に、一緒にリスキリングに取り組む仲間を見つけることができると、大きな心の支えになります。現在、日本全国さまざまな地域でリスキリングについての講演や勉強会をさせていただいていますが、その際に必ずと言っていいほど、真剣にリスキリングに取り組んでいる個人の方にお目にかかる機会があります。ご自身でリスキリングに取り組み、自社内で実施しようとリスキリングを制度化したり、予算化したりする努力をされているのです。
ただ、なかなか経営者や人事部の方に関心を持ってもらえず、やむなく就業時間外に自分一人で取り組んでいる状態だというお話もよく耳にします。日本においては「個人が取り組む自主的な学び直し=リスキリング」と勘違いをされてしまった経緯もあり、個人の自主性とやる気任せの状態になってしまっていることが一因ではないかと考えています。孤軍奮闘して挫折してしまわないように、一緒にリスキリングに取り組む仲間を見つけていただきたいと思います。
自分の所属している部署だけに留まらず、全社という単位で捉え直してみると、会社の将来に対する問題意識を持っている方の中には、リスキリングに関心のある方がきっといるのではないかと思います。また、外部のオンライン勉強会などでも、同じような共通の課題を抱えてリスキリングに取り組んでいる仲間を見つけることができる可能性があります。リスキリングは自身が成長し続けるために永遠に終わらない旅ですので、ぜひ一緒に歩む仲間を見つけてください。
後藤 宗明
一般社団法人ジャパン・リスキリング・イニシアチブ
代表理事
